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症状
肝の包虫症
肝の包虫症は局在性がより多く(50-60%)、しばしば多発性(30%)または併発性(10%)である。潜在性で新しいものは合併症の重篤度が低い。
単純性の肝の包虫症:無症候性の肝腫大が主体であり、集団検診で好運にも発見されたり、腹部腫瘤、右季肋部や心か部痛を訴えることもある。肝はドーム状で表面平滑、均一な固さと張りがあって触知可能であり、打診で鈍な音がする。典型例では、これで肝の包虫の胞虫嚢と診断が付くことがある。腹部単純X線では、時おり病変が上方に局在していると、右横隔膜面に変形を見たり、さらに頻繁には胞虫嚢の周囲を完全または不完全に石灰沈着を認める。腹腔鏡は、胞虫嚢があることが事前に解っていない限り有益でないが、滑らかな光沢のある腫瘤を認める。肝の穿刺と生検は、(播種の危険があるので)常に禁忌である。肝のガンマグラフィーでは、胞虫嚢の位置確定が完全に出来ることが多い。中心部が抜けた、円形または弓型の切り込みの入った像となる。胞虫嚢が小さかったり多発性であると、画像はそれほど鮮明でなくなる。超音波画像では、胞虫嚢の位置と、(後方エコーの増強で)包虫液の性状の大体が確認される。CTとMRIは現時点では高価な検査法で、肝の腫瘤の内容(液と水泡)と小胞虫嚢の大きさを診断するのに用いられる。この方法では他の部位への病変検索が可能である。血管造影(脾-門脈造影、腹腔動脈幹と上腸管膜動脈の選択的造影)で、手術前に必要な情報を得る。ある程度の大きさの胞虫嚢があると、血管影は増強され、逆流性の門脈と肝動脈の樹枝状影を生じ、肝の造影では一般に明瞭な無血管域を認める。動脈を造影すると、胞虫嚢周囲に均等な血管増生を見る。免疫学的検査によって、大半の症例で包虫の性状が確定する。確認された胞虫嚢は手術されねばならない。石灰化があっても、虫が常に死んでいるとは云えない。
鑑別診断は、胆道系の嚢胞、単発性か多発性か、肝内胆管の先天性拡張(Caroli病)といった稀なものを除き、殆どない。
合併症を有する肝の包虫症:合併症は頻度が高く、重篤である。
胆道系への開口は、胞虫嚢が胆道系に瘻を作るため起こるもので、頻度が高く、肝の包虫症の経過中、重大な分岐点となる。肝の部分に一致して痛みが出現し、消化不良や蕁麻疹を認める。胆道系への開口が十分に大きいと、寄生虫を含んだ内容物が流出し、肝の仙痛と胆嚢胆管炎、及び遷延性黄疸を起こす。
感染は、胆道瘻に引き続いて生じる。急性は稀で、肝膿瘍として認め、しばしば亜急性で、胞虫嚢を脆弱化させて破裂させ易くなる。
破裂すると、周囲全体に影響を与える。腹膜への破裂は、外傷性に因ることが多く、たちどころに腹膜症状やアナフィラキシーショックのような劇的状態に陥ったり、時には死亡したりする。腹膜の二次性多発性包虫症や、胆道と腹膜にそれぞれ仕切りされた包虫症を後に認めることもある。胸膜または気管支への破裂は、胸膜と肺への二次性包虫症が原因で、右下肺野が雑菌で化膿したり、時には包虫と胆汁を含んだ液を嘔吐したりする。リピオドールによる気管支造影で、気管-胞虫嚢-胆道瘻が描出される。例外的に、大血管に胞虫嚢が開口することがあるが、突然死することはなく、二次性全身性包虫症の危険がある。
その他の合併症は極めて稀で、肝外胆道の圧迫(遷延性黄疸)、門脈症候群(門脈圧亢進症)、肝前症候群(Budd−Chiari症候群)、胆道結石《傍包虫性》が挙げられる。
肺の包虫症
肺の包虫症も同じくらい多い(30−40%)。ある時には肝の包虫症に合併した二次性のものであり、時には六鈎幼虫が肝の病変から一気に広がった場合のこともある。
多くは潜在性で、集団検診時の胸部X線検査で発見される。肺実質内に《大砲玉》様の円形の透亮像が1つ乃至は幾つか描出される。その他の放射線学的検査、気管支鏡、時には血清学的検査でも、その性状を確定することは不可能で、開胸する以外にない(図1・巨大病変による左気管支の閉塞像)。
図1
長期間、無症候のままで、胞虫嚢が突然気管内に破れ、包虫砂を含んだ透明な液体が吐出されたり、ろうを作ったり、感染を起こして大量に吐血する危険がある。放射線の画像は、多少上方が明るい明瞭な三日月形か、空気層と水層に膜が浮かんでいるような《睡蓮》様に描出される。
その他への病変
胞虫嚢は実際には全ての臓器に発生し得る。脳(図2)には多くの場合小児で、腫瘍性の症状を起こす危険がある。脾臓では石灰化したものは無症状であるが、外傷や不用意な穿刺で破裂することがたまにある。骨の包虫症は骨盤と脊椎が特に多く、非限局性で血管増生があって、切除は困難である。脊椎に病変があると、脊髄圧迫が合併する。心(左室)、腎、膀胱後壁、筋、皮下、甲状腺への病変が知られている。
図2
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