ザンビア

「ザンビアで私たちができること」

AMDAザンビアプロジェクト事務所
駐在代表 高瀬 かおり
AMDA Journal 2002年 8月号より掲載

「なんて緑豊かで美しい国だろうか。」ザンビア共和国のルサカ国際空港着陸前に、ゆるやかに波打つ緑の丘を飛行機の窓から眺めてこう思った。今年の2月下旬のことである。

それまでAMDAザンビアのプロジェクトを監督してきたビカンディ・マンボ氏の後任としてザンビアプロジェクト事務所の駐在代表という役目をいただき、1年7ヶ月勤務してきたAMDA岡山本部から赴任した。

空港で出迎えてくれた現地スタッフとともに宿泊先に向かう途中でも、赤い大きな花をつけた木、深緑の木々、そして風に揺れる草原を目にした時、着任先がザンビアで良かったと心底思った。 名古屋空港から出発し、香港、ドバイ、さらにAMDAアフリカ統括事務所で研修を受けたケニアを経由し、永遠に終わらないかと思われた長い長い飛行機の旅の最後に辿り着いたルサカ市は、私の目には楽園かと思われた。

しかし、ザンビアという美しい国は様々な問題を抱えている。個人の平均年間所得はわずか320ドル(約4万円)、貧困者は国民の73%を占め、5歳以下の子供の27%は栄養不良である。平均寿命43歳、乳児死亡率114(1,000 人のうち114人が死亡する)、HIV/AIDS感染者は5人に1人である。

そんなザンビアで実施されているのがJICA(国際協力事業団)によるプライマリーヘルスケア(PHC)プロジェクトである。1997年から5年間に亘ってジョージ・コンパウンド(低所得者層居住地域)の保健医療を改善したこのプロジェクトでは保健衛生活動を行う現地住民のボランティアたちが養成された。 こうしたボランティアたちを社会開発という側面からサポートしているのがAMDAザンビア事務所の主なプロジェクトである。

私たちのジョージ・コンパウンドでの活動は、以下の4つに分けられる。

  1. コミュニティー農園
  2. 栄養改善
  3. 縫製訓練
  4. 成人識字訓練

これらの活動を以下に詳しく説明する。

1. コミュニティー農園

コミュニティー農園プロジェクト
コミュニティー農園プロジェクト

AMDAザンビアはジョージ・コンパウンドのはずれにある2.8ヘクタールの土地をルサカ市保健管理局から貸与されている。この土地を利用して主に大豆を生産しているが、農作業に携るのは上記のボランティア達である。

農園で収穫された大豆の一部はジョージ・ヘルスセンターに供給され、同センターを訪れる栄養失調児に配給されている。残りの大豆は販売されたり、次に述べる栄養改善のデモンストレーションに活用されている。

ザンビアの気候は大きく乾季(4月〜11月)と雨季(12月〜3月)に分けられる。乾季には灌漑設備なしでは耕作は不可能である。しかし、平成13年度に郵政事業庁の国際ボランティア貯金からいただいた資金で灌漑設備を農園に設置することができた。

これまでの農園での作業は、雨季の始まりとともに大豆を植えて乾季に入る頃に大豆を収穫するというものであった。しかし、灌漑設備ができたことにより今後は乾季にも作物を作ることが可能となる。 また、水を安定して供給できるようになったので、トマトなどの商業作物を栽培・販売して収入を増やして農園の持続性を高めていくことも検討されている。

2002年6月には住民で成り立っている農園運営委員会の役員選挙が行われた。新たな役員が住民により選出され、今後の農園運営には深く関わってもらうようにしていかねばならない。 AMDAのサポートで今から委員会の組織力や住民のキャパシティーを高めるようにして、将来的には農園事業を住民に移譲することを目指している。

2. 栄養改善

コミュニティー農園で収穫された大豆は、地域住民の栄養状態を改善するために使われている。この活動にはJICAのPHCプロジェクトにより養成されたボランティアの栄養普及員が深く関わっており、AMDAに配属されている青年海外協力隊員の岸明子氏が共に活動をして様々な側面からサポートを行っている。

ジョージ・コンパウンドの各地区では、コミュニティーヘルスワーカーとクリニックの職員が協働で5歳未満の子供達の健康診断を行っている。この健康診断には地区内の母子たちが1日につき150組から200組ぐらい集まってくる。 この機会を利用して栄養に関する知識を広め、さらに栄養に富んだ大豆食を普及させようというのが栄養普及員の活動である。

健康診断の行われている場所で大豆料理を調理して、それを栄養不良と診断された子供達に食べさせて、母親達には栄養指導を行う。その場で大豆を販売しているので、母親たちが大豆を購入して習った調理方法で大豆を食べることもできるようになっている。 今後の課題は、食べ物に保守的なザンビア人でも喜んで食べるような大豆料理のレシピ作りである。

3. 縫製訓練

女性を対象にした縫製の職業訓練はベーシックとアドバンスの2コースに分けられている。1クラスに30名の生徒がおり、参加費としてひと月に10,000クワチャ(約312円)を訓練生から集めている。訓練に使用する布地はAMDAからは提供はせず、生徒が持参するようにしている。 こうすると生徒達は自然と縫製に使用する材料を大切に扱うようになるからである。

訓練を修了した卒業生には、縫製業を営んでいる者や、まれではあるが自ら縫製教室を開く者もいる。7月からはろうけつ染めのコースを実施する予定である。ろうけつ染めはザンビアではまだ珍しくあまりできる人がいないため、この技術を身に付けると収入を得やすくなる。 こうして縫製や染めの技術を得て、より多くの女性が自立していけることを目指している。

4. 成人識字訓練

統計では、ザンビアの成人非識字率は22%、小学校の就学率は89%となっている。しかし、たとえ誰かが「私は小学校6年生まで学校に行った」と言っても、それだけでこの人が識字であると勝手に推測することはできない。というのは、全く授業についていけないまま進級してしまう人が少なくないからである。

AMDAの識字訓練は学校に通えなかったり、上記のように通学していても授業についていけなかった成人を対象にしている。教えられているのは、ザンビアの公用語である英語と現地の言語であるニャンジャ語の読み書き、それに算数である。

ルサカのコミュニティーに入っていくと英語でコミュニケーションをとれる人はぐんと少なくなり、ニャンジャ語がメインとなる。しかし就職や知識取得の機会を増やして生活レベルを向上させるためには、ニャンジャ語は言うまでもなく英語を話せるようになる必要がある。

PHCプロジェクトで養成されたボランティア達が活動に必要なのが読み書きと算数であったためにこの訓練が始まったのであるが、今では一般の住民からの識字訓練へのニーズの方が高い。そのため、7月からはこうした一般住民からも生徒を受け入れてクラスを増やしていく予定である。

ざっとザンビアプロジェクトの内容を紹介してきたが、これらの活動の拠点となっているのがコミュニティー農園内のトレーニングセンターである。在ザンビア日本国大使館から草の根無償資金を頂戴し、今年2月にトレーニングセンターを完成させることができた。この場を借りて改めて御礼申し上げたい。

これまで間借りしていた教会の一室から引越して、農園に隣接したトレーニングセンターを設けたことによってコミュニティー活動の拠点ができたと言えるであろう。同センターは縫製と識字訓練の場であると共に、農園の管理運営に携る住民の農園委員会がミーティング等に利用する場所でもある。 これからはセンターの利用目的をもっと広げていき、真にコミュニティーのための施設となるように住民の方たちと協力していきたい。

ザンビアの抱える問題はあまりにも大きく多様で、一体どこから手をつければいいのかわからず途方に暮れそうになることがある。一例として、ミコノの会がザンビアに送ってくださる古着を挙げよう。6月のある日、チャワマ・コンパウンドのコミュニティー学校へ10箱の古着を寄付するために出かけていった。 学校につくと何百人という生徒達がザンビアの強い日差しの中、私の到着を待っていた。みんな土埃でくすんだぼろぼろの服を着ている。当然10箱の古着では皆に行き渡ることはない。

しかし、このようなコミュニティー学校はルサカ市内にいくつもあり、他にも様々な団体から古着の要請がくる状態である。この学校だけに古着を配れるわけでもなく、無力感に襲われながら学校を後にした。

事務所から自宅への道のりの途中にはショッピングセンターがあり、そのすぐ近くの大きな交差点には夕方になると物乞いをする子供達が集まってくる。仕事を終えて家へと帰る道のり、その交差点の赤信号で車が止まると、「マダム、お願い」と言って子供たちが窓越しに話し掛けてくる。

その時に私が小銭をあげることは簡単である。そうすればその子供はきっと喜んで家にお金を持って帰るなり、自分で食べものを買うなりすることができる。しかし、国際協力に携る者として、それはしてはいけないことであると思う。

もっと根本的なところから貧困を削減し、社会が豊かで健康になり、子供達が物乞いをせずとも生きていけるようになり、彼らが教育を受けて将来に希望を持てるようにするお手伝いをすることが私達の使命であろう。

その場きりの小銭をあげたくなる気持ちを抑えて家路につき、翌朝気持ちを新たにして事務所へ出勤する。また1日、ジョージ・コンパウンドの活動を少しでも改善し、住民の方たちの暮らしが少しでも良くなるようにと仕事に追われる日の始まりである。

私達の力は本当に微力ではあるが、せめて活動を行っているジョージ・コンパウンドの住民の方たちが「ああ、AMDAがジョージにいてくれて良かった」といつか思ってくれる日が来ることを願っている。




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