ザンビア

ザンビア共和国でのJICA-NGO連携
プライマリー・ヘルスケア・プロジェクトの調査報告

調査派遣者 近藤 麻理
AMDA Journal 2001年 5月号より掲載

 私は、2000年12月25日から2001年2月4日まで、アフリカ大陸の南部ザンビア共和国の首都ルサカ市でプライマリー・ヘルスケア(PHC)プロジェクトの調査を行ってきました。そこでは、JICAとNGOとの連携事業としてプライマリー・ヘルスケア(PHC)プロジェクトを1997年より5年間の予定で実施しています。現在は、AMDAから4名の人間味あふれる優秀な専門家が活動しており、AMDA会員として非常に誇らしく思いました。このプロジェクトは、ルサカ市地域保健管理チーム(LDHMT)をカウンターパートとし、急増する都市人口とコンパウンド(貧困地区)の健康問題改善に取り組んでいます。プロジェクト期間終了を2002年3月に控え、現在では、@パイロット地区でのコミュニティーベースのプライマリー・ヘルスケア(PHC)の推進、Aルサカ地区におけるヘルスセンター(HC)機能向上とレファレル体制の確立、Bルサカ地区における学校保健モデルの構築、この3領域を軸にして活動が行われています。

 今回の調査では、このPHCプロジェクト実施中に形成された3つの住民組織の自立発展性と継続可能性について調査し、帰国後の報告書にはその結果と提言を取り纏めました。@コミュニティー・ヘルスワーカー(CHW)、AKOSHU有料トイレ委員会、Bジョージ地区環境保健衛生委員会(GEHC)、この3つの住民組織が今回の対象です。現地での調査は、住民組織リーダーやPHCプロジェクト専門家からのインタビュー、そしてAMDAザンビアが中心となって実施した住民参加型のワークショップ「住民組織の自立発展性について」などから行いました。私がまず驚いたのは、住民参加型のワークショップを実施するに当たり現地のヘルスセンター職員である看護婦、管理栄養士、環境衛生士の方々が、非常にすばらしいファシリテーターとしてのスキルを既に持っていることでした。彼らは、PHCプロジェクトのカウンターパートでもあり、今後の地域における住民組織自立発展の支援者・指導者として重要な役割を果たします。4年間のプロジェクト実施中に確実にリーダーが育ったことは、大きな次への希望につながります。

コミュニティ・ヘルスワーカー(CHW)がジョージ地区で子どもの体重測定をしている

 外国からの支援は無限に続くのではなく、必ず実施期間と言うものがあります。ですからプロジェクトが終了後も、現地の人たちがどのように運営・実施していくことができるかを考えなくてはなりません。その考えが無ければ、プロジェクトが全く消えて無くなることも有りますし、害を及ぼすこともあるのです。外国への支援で最も考慮されるべき点は、プロジェクトの継続性であり、結局はプロジェクトが住民やその国にとって本当に必要性の高いものなのかが問われることになります。

 次に驚いたのは、住民組織が行っている勉強会やワークショップに参加した時の住民の積極的な意見や自分の役割に対する意識の高さでした。アジア、特にタイの住民活動を多く見てきた私にとって、自らの意見を堂々と述べると言うことは新しい発見でした。アジアは上からの力が強すぎて、住民代表はやや良い生徒ぶったところが抜けないため、どの意見を聞いていても画一的でつまらないのが普通でした(これはあくまでも私見ですが)。ですから、そのとき直感で「ザンビアはやれるかもしれない」と思ったのでした。

 さて調査の結果、次のようなことが明らかになりました。

@コミュニティー・ヘルスワーカー(CHW)は、ジョージ地区に暮らす人々のコレラなど感染症の予防、乳児の継続的な体重測定などをヘルスセンターの指導のもと実施し、住民組織の中心的な役割を果たしています。そして、3ヶ月に一度のヘルスプロモーションキャンペーン実施などを通して300名以上の住民が参加し、健康教育に大きな影響力を持っているのです。6週間の養成コース終了により健康教育の知識があり、そのリーダー達が成長している現状を考えると、今後短期的に経済的支援を他の住民組織やNGOから求めるとしても、CHWの存続は必須であると言えるでしょう。経済的自立運営にあたり大きな課題を残すものの、将来的にはリーダーのもとで自立の道を考え実行することが期待できると思うのです。

A1999年12月31日、リランダ・マーケットとバス乗り場がある中心部にKOSHU と名前の付けられた有料トイレが開設しました。住民への環境教育を含めて、住民組織の経済的自立運営を目指して作られたものです。トイレ正面には小学校の子供達が描いた絵をもとに鮮やかに描かれた目を引く壁画があります。有料ですから200クワチャという町の公衆トイレと同じ料金が設定されています。現地の人たちは、このトイレはザンビア中で一番清潔で美しいトイレだと教えてくれました。1年後の2000年12月のトイレ利用者数は、経済的自立運営可能な一日平均利用者数が100名を越えました。ですから今後は、他住民組織の自立のモデルとしても、発展が大いに期待できる組織であると言えるでしょう。

Bジョージ地区環境保健衛生委員会(GEHC)はワークショップで計画した活動内容を自立運営を念頭に置き実施しているため、住民組織メンバー一人一人の経済的自立への意欲は非常に高いと言えます。ジョージ地区での重要な環境問題の課題として、ゴミ収集、家庭用トイレの設置、排水路、健康教育などに重点を置いた活動を実施しています。今後、ゴミ収集時に少額なお金を集めることになりますが、これにより住民の参加が減少しないことを期待したいものです。

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