ベトナム

ベトナム事業報告

AMDAベトナム 川崎 美保

AMDA Journal 2005年 8月号より掲載

まだ暗いうちから起き、朝ごはん用の野菜を畑に取りに行く。新鮮な野菜を洗い、 朝ごはんの支度に取り掛かる。調理には薪を使う。ごはんを炊いている間、家の掃 除をする。朝食後は畑に野良仕事に出かける。家から遠い場所に畑がある家庭は、 お弁当を持って行き、夕方まで家には帰らない。野良仕事が終わるのは夕暮れ頃。 野良仕事が早く終わったら、近くの川か水タンクに行き、洗濯をする。同じ場所で 体を洗う。帰宅後、また釜戸で料理し、一家団欒で食事。夜は内職をしたり、子ど もや孫の世話をしたりしながら過ごし、早めに就寝。
 AMDAの事業対象地の一つ、ホアビン省タンザンコミューンに住む女性の一般的な 生活である。早寝早起きで規則正しい生活をしている。食事は野菜中心で、月に数 回鶏や豚を食べる。病気になった時には高地に生えている薬草を処方する。空気も きれいで、自然も美しい。首都ハノイよりも、この地の生活がよほど健康的に感じ る。
 しかし、ひと月の半分をこの地で過ごす生活を続けていく中で、彼等が直面して いる問題点が見えてきた。平野部と違い山岳地にあるこの地では、肥沃な土地が少 なく、水資源が限られている。二耗作はおろか、稲作そのものが不可能である。キ ャッサバやとうもろこしを栽培し、米を買って生活している世帯が多い。収入源が 限られており、生活は厳しい。ハノイの子どもと比べ、この地の子どもの体格は小 さく、細い。道路は未整備のため、移動は徒歩か牛か馬を使う。一次医療施設であ るヘルスセンターまでは、徒歩1 時間〜3時間。住民にとって決して「身近な」存 在ではない。電話等の通信手段は無く、ヘルスセンターから郡立病院へのリファー ラルシステムが上手く機能していない。病気が悪化して郡立病院に行かざるを得な い場合には、大型ボートを借り、片道5時間以上かけて行かなければならない。
 先述は、ホアビン省の事業地の様子だが、もう一つの事業地ソンラ省の状況とて 、同じようなもしくは似たような問題を抱えている。以下に、各事業地が抱えてい た問題点と、それを解決するためにAMDAと地域住民がこの1 年間共に取り組んだ活 動を紹介したい。

ホアビン省事業

ホアビン省の事業地ではコミューン内の保健医療サービスの向上を目的に、2003年 3月から以下4つの活動を行った。

@ヘルスポストの建設

コミューンヘルスセンター(以下、CHC)は、保健行政の末端に位置する医療保健 施設であり、住民に一次保健サービスを提供する役目を持つ。しかしながら、遠隔 地、特に山岳地においては、地理的な理由によりCHCへのアクセスは限られている。 タンザンコミューンもその例外ではなく、住民の約 7割がCHCへのアクセスを困難で あると認識していた。
 そこで、CHCへのアクセスが特に困難な場所に位置するカイ村とディエム 2村にヘ ルスポストを建設し、基礎的な保健医療サービスへのアクセス改善を図った。その 結果、約半数の人口(全人口2,252人中、カイ村及びディエム2 村の人口約1,000人) が保健医療施設に容易にアクセスできるようになった。  建設前から全世帯を対象とした地域住民会合が毎月行われ、ヘルスポストの運営管 理に関し話合いが持たれた。この会合を通じ、ヘルスポスト運営規定が策定され、各 世帯が毎月2,000ドン(約10円)を負担し、負担金をヘルスポスト管理責任者である 村の保健ボランティア(以下、VHW:Village Health Worker)の給与や、将来的に必 要になると思われるヘルスポスト修繕費に充てることが住民自身により決定された。 また、VHWは、地域住民の要望に答え週5日間(うち3日間は半日のみ)ヘルスポスト に駐在し、保健医療サービスの提供に努めている。建設完了後、月に30名〜40名の割 合で患者が来院しており、地域住民の期待も高い。
 さらに、2005年3月からは、保健衛生教育、検診活動が開始された。またヘルスポ ストの一角には、健康や生活に関する新聞、月刊健康生活雑誌、その他の本を置いた 図書コーナーを設置した。今後、情報収集や情報交換などコミュニティーセンターと しての役割も持つことを期待されている。

A医療機材の供与

CHCに勤務する医療従事者らとの協議の結果、CHC及び新ヘルスポストに供給する基礎 医療機器及び基礎医薬品を決定・供給した。供給した医療機器は妊産婦検診、5歳未 満児のグロスモニタリング、患者の診察等に有効活用されている。
 ヘルスポストに供与した薬剤に関しては、ヘルスポスト運営委員会により管理され ている。タンザンコミューンでは、薬代を現金で支払えないため、作物や卵等の物品 で支払う人も少なくない。VHWへの聞き取りによると、このような状況から、最終的 には回転資金が乏しくなり、結果手元には薬が残らない状況になることが多々あった ようだ。そこで、カイ村とディエム2村のヘルスポストに関しては、村長、VHW、女性 組合員からなるヘルスポスト運営委員会が中心となり薬剤管理や会計等が行われるこ とになった。2005年4月1日のヘルスポスト開所と同時に薬剤処方も始まったが、運営 委員会のメンバーにとっては初めての帳簿記入、薬剤管理である。AMDAは簡素な記録 用紙を作成し、その記録や管理方法を指導した。

B保健医療トレーニングの実施  (医療従事者及び住民組織の育成)

保健医療トレーニングを毎月実施し、保健教育活動推進者のキャパシティービルディ ングを図った。2004年7月から2005年5月の間に、計9回のトレーニングを開催し、タ ンザンコミューンの全医療従事者及び各住民組織メンバー計27名が参加した。
 トレーニングには、郡立病院から医師を講師として招聘し、上位医療機関との連携 協力体制の推進も図った。トレーニング内容には、治療・予防の技術的な面だけでな く、コミュニケーションスキルなどもトピックとして扱った。また、2004年9月には トレーニング受講者による地域住民への保健衛生教育を開始し、本事業終了までに12 回、全村にて実施された。同保健衛生教育では、AMDA現地職員によるOJT(On the Jo b Training)がなされ、活動の展開と教育方法について指導と助言を行った。

C伝統薬草園の設置 

ベトナムの地方では民間治療法として、伝統薬草が広く使用されている。インタビュ ー調査の結果でも、病気にかかった場合には、まず家庭で伝統薬草を使って治療し、 それでも治らない場合には市場で購入した薬剤を飲用し、最後の手段として医療機関 に行く住民が多いことが判明している。そこで、ヘルスポスト敷地内に伝統薬草園を 設置した。薬草は、同事業対象地で栽培でき、且つ地域住民になじみがあるものを地 元の女性が山岳部から採取し、ヘルスポストの敷地内に植えた。同園に植えられた薬 草は100種にも及んだ。伝統薬草園の開墾から、囲い作り、水やりなど薬草の維持等 は女性連合とVHWが中心となって行っている。

ソンラ省事業

ソンラ省の事業地では、トゥーナンコミューンとチェンハックコミューンにて、公衆 衛生状況の改善を目的に、2003年3月から以下4つの活動を行った。

@水供給システムの設置

トゥーナンコミューンではホイトイ村、チェンハックコミューンにおいてはタランカ オ村の水源を利用した水供給システムを設置した。水源で堰き止めた水がメインタン クにたまり、浄化タンクを経て、コミューン内対象村落に設置されたサブタンクへ流 れる仕組みである。これにより、チェンハックコミューンでは4村85世帯(378名)の 住民と、小中学校の教師生徒991名が、トゥーナンコミューンでは2村98世帯(444名) が新たに安全な水へのアクセスが可能となった。
 水供給システム調査段階から建設作業、建設監督など各プロセスにおいて、受益対 象村の住民が参加した。また設置前から受益対象世帯を対象とした住民会合が毎月行 われ、水供給システムの運営管理に関し話合いが持たれた。
 受益者らは、各自様々な工夫を凝らして水供給システムを利用していた。例えば、 チェンハックコミューンのホイトイ村では、住民が自己資金を出し合い、水タンクか らさらに各家庭の台所までパイプをつなげ、水を利用しやすいように工夫し活用して いた。また、簡易シャワー室を作り、沐浴や洗濯等にも水システムの水を利用する世 帯も増加していた。

Aトイレ建設

両コミューンでは、直径1m、深さ1m程の穴を掘り、その上に木の板を渡しているもの をトイレとして利用していた。この一般的なトイレの利用に関し、各種感染症の蔓延 につながるとして、雨季には排泄物が土壌に流れる、井戸や河川など水源の近くに作 られている、排泄物を食べた犬、猫、鶏、豚等の動物が、民家の中にも出入りするな どの問題点があった。
 そこで、住民に対して衛生的なトイレの必要性に関する衛生教育を実施し、その過 程において、トイレ設置の強い関心を持つ村においてトイレ設置を支援するアプロー チをまず取った。結果、両コミューンのうち5村が本活動を行い、対象338世帯の内28 1世帯(約83%)において衛生的なトイレが設置された。
 設置したトイレは、深さ約1.2メートルの穴の上に、中央に丸い穴を開けた 2メー トル平方のセメントの蓋を設置し、その周りを竹製もしくは木製の小屋で囲んだ簡易 式のものである。感染症発生と河川水汚染を防ぐため、 AMDAスタッフはトイレの位 置を家、水源(井戸・河川)からある一定の距離を置くように指導した。AMDAからは セメントの蓋部分を提供し、穴の掘削や小屋の作成などは、各設置世帯の住民自身に より行われた。設置過程には、各村の村長と住民組織が参加し、設置状況のモニタリ ング作業を行った。

B植林

チェンハックコミューンの水供給システムの水源地周辺に、森林保護と水資源確保を 目的として3haの土地に植林を行った。植林の土地の選択、苗木や肥料の購入等はイ エンチョウ郡農業部が主体となり、植林はホイトイ村の住民達によって行われた。20 05年1月に植林は完了したが、春にベトナム全土で発生した水不足により、3分の1の 木は枯れてしまった。イエンチョウ郡農業部の話によると毎年植林された木の4割〜5 割は枯れてしまうため、植林には通常3年〜5年の期間で取り掛かる必要があるとのこ とであった。今後は、イエンチョウ郡農業部が中心となり、木の植え替えなどの作業 を継続実施することになっている。

C公衆衛生トレーニングの実施  (医療従事者及び住民組織の育成)

2004年7月から11月まで毎月、医療従事者及び各住民組織(計52名)に対する公衆衛 生トレーニングを実施した。ToT(Training of Trainer)方式を組み込み、継続的且つ 効果的なトレーニングの実施を目指した。ToTのトピックは、ワークショップの結果 、CHC調査結果、またイエンチョウ郡立病院の医師からの助言をもとに7つ(救命措置 、急性呼吸器疾患、母子保健、子供の下痢症、清潔と疾患予防、コミュニケーション 技術:住民への保健衛生啓発活動の方法、栄養改善)に決定した。
 2004年11月からは、ToT受講者が講師となり、住民への保健衛生教育を15 回に渡り 実施した。保健衛生教育のテーマには3つのトピック(水供給システムとトイレ設置 、栄養と家族計画、栄養と水と清潔)が選ばれた。

 外務省「日本NGO支援無償資金協力」、「フェリシモ地球村の基金」からのご支援、 また皆様から寄せられたご寄付により、両地での保健医療サービスや公衆衛生改善を 支援することが出来ました(一部継続中)。最後になりましたが、心より御礼申し上 げます。




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