ベトナム

みんなのヘルスポスト

AMDAベトナム 川崎 美保

AMDA Journal 2005年 1月号より掲載

「昨日は飲みすぎた〜。疲れた〜。」タンザンコミューンのディエム2村で AMDA現地スタッフと再会した時 の彼の第一声だった。昨日は、2つのチームに分かれ、私達のチームはディエム1村で住民達に対する保健衛 生教育(ヘルスプロモーション)を行ったが、もう一つのチームはカイ村で住民との会合を開いたのだ。カ イ村では、全世帯に声をかけ、各世帯の責任者に村長の家に集まってもらい、ヘルスポスト建設に関し、住 民の協力を要請したのだ。協力とは、1ヶ月かけて140トンの建設材料を運搬することであった。通常は、建 設材料の運搬は建設会社が行う。しかし、タンザンコミューンでは、村落間の山道は舗装されていないため 、材料は河岸までボートで運び、河岸からは人力もしくは馬力に頼らざるを得ない。仮に建設会社がコミュ ーンの外部者を雇用したとしたら、勾配の厳しい道に慣れていないため、材料の運搬に時間がかかるであろ うし、人件費も高くつく。運搬を効率よく、また費用を抑えて実施するためには、どうしても、村の住民達 に手伝ってもらう必要があるのだ。さらに、住民達がヘルスポストを大切にしようとする意識を持ち、運営 に関する責任を保つためには、経済的に負担したり、労働力を提供したりして、ヘルスポスト建設に貢献し てもらうことは重要なことだ。そこで、予算案作成の段階から住民の負担も組み込まれていた。
 しかし、かなりの重労働だ。土地に慣れている健康な村人が歩いて河岸からカイ村まで約3時間もかかり、 私が初めて村に登った時には4時間もかかった。道中、勾配がきつい箇所も何箇所かある。そのため、人が1 度に運べる重量は20キロが限度で、馬なら50キロが限度、往復4〜5時間程かかる。材料の運搬は、1日 2往復 が限度であろう。また、住民の貧困問題もある。タンザンコミューンはベトナム政府により分けられた貧困 地区、1.2.3ランクのうち、最も貧しい3ランクに当たり、山間部に位置するカイ村はタンザンコミューン 内でも貧しい。5歳未満児の栄養失調率が30%以上にも上るのも、貧困を示している。住民のほとんどは農業 に従事し、家で取れた作物を市場で売る生活をしているため、現金収入が限られているのだ。

カイ村まで建築素材を運ぶ。
車も道もないこの地区では馬が頼りだ。

 カイ村住民に協力を要請したところ、労働と比較し、賃金が安すぎるとの不満の声がかなり出たとのこと であった。多くの住民が、村にヘルスポストができることを心待ちにしているということは、村に行く度に 様々な住民から「いつヘルスポストができるのか」と声をかけられることから想像できる。しかし、貧しさ という問題を抱えている住民が、少しでも現金収入を増やしたいと考えるのも自然なことかもしれない。ま た、話を聞いてみると、タンザンコミューンでは、国際機関が公共施設の建設を行っており、建設に協力し た住民には、高額の給料を支払っていたことを知った。そこで、地元住民は海外からの支援で建てられる建 物の建設に協力した場合、同等の給料が支給されるはずだと考えていたのだ。
 毎日朝早くから畑に出て働き、充分栄養の取れた食事もできていない住民に対して、労働力を提供するよ うにと要請することは残酷なことかもしれないと私は思った。しかし、AMDAのカウンターパートであるダバ ック郡人民委員会の役人が、賃金値上げを訴えるカイ村の住民に次のような話をしたらしい。「ヘルスポス トは、タンザンコミューンの中で最も医療施設へのアクセスが困難であるカイ村に建てる必要があるという 地元政府からの要望があり、日本人がカイ村にわざわざやって来て、現地のニーズ調査を行い、立案したも のである。ヘルスポストは他でも無い皆さんのために建てられるものだ。また、ヘルスポストの建設費はど こから出ているのか知っているだろうか?日本人の税金である。カイ村の住民のために、日本人が協力して くれているのに、カイ村住民自らが協力をせず、自らの利益のみを考えているのは恥ずかしいことでは無い のか?私は同じベトナム人として恥ずかしい。」彼の言葉には、住民も納得し、カイ村の住民の同意を得た ようだ。AMDA現地職員と建設会社は、ヘルスポストの建設過程を説明し、建設費の内訳や図面も見せ、住民 からの協力がいかに大切かを伝えた。最終的には、住民も協力の必要性を感じ、材料の運搬や簡単な建設作 業を協力することになり、夜がふけるまで酒盛りとなったらしい。
 次の日、もう1つのヘルスポスト建設予定地であるディエム2村でも、同様の会合を開いたが、カイ村同様 、住民の同意を得るのは難しいだろうかと不安であった。しかし、村長さんからの説明に、不満の声もほと んど無く、各世帯から同意を得ることができた。明朝には、早速住民が手に鍬やスコップを持ち、建設予定 地で地面の地ならしを始めていた。ヘルスポストの建設予定地が傾斜しているため、材料の運搬を始める前 に、地面を平らにする必要があり、全世帯に協力を呼びかけていたのだ。ちょうどAMDAの事業の見学に来て いた天田大輔・かよこご夫妻と一緒に私達も鍬とシャベルを手に持ち、地ならしを手伝った。日頃畑仕事を しない私達はどうも要領が悪いらしく、何度も地元の人達から鍬やシャベルの持ち方から指導を受け、また 、よく笑われた。地ならしが終わった後には、地元の人の家ではっさくを御馳走になったが、手にできたま めにしみて痛かった。しかし、その時のはっさくの味を、私は一生忘れないだろう。
カイ村のヘルスポスト建設が進む
ヘルスポスト建設地の地ならしをする村民たち




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