防災訓練

2004年静岡県総合防災訓練参加報告
<広域医療搬送実働訓練

緊急救援事業部職員 柳田 展秀
AMDA Journal 2005年 01月号より掲載

患者の搬送では、レスキューカーと呼ばれる搬送器具を用いた訓練も行なわれた
(中央:加藤調整員補佐)
3)地上搬送チーム

広域搬送拠点内で行われる地上搬送は、@域内搬送ヘリ/SCUの区間、ASCU/域外搬送機までの区間、の2つ の搬送区分に分けられた。今回は上記@(ヘリ/SCU区間)を静岡県医療室の搬送チームが担当、AMDAはA (SCU/域外搬送機区間)を担当した。チーム編成は看護師1名、搬送要員4名で、AMDAからは佐伯、川上、影 山、加藤の4名が搬送要員、地上搬送担当看護師として古村が参加した。
 福岡空港、入間基地から参集したC−1輸送機(自衛隊機)の域外搬送準備が整った時点で、患者はSCU/ 搬送機区間を自衛隊の患者搬送車両、浜松市保有の救急車両、そしてレスキューカー4の上記3つのいずれか の運搬手段で搬送される。レスキューカーの利用については、実災害時の救急車両、搬送車両などの不足な どが予想されることから、今年度より試験的に導入されることとなったものである。
 レスキューカーでの搬送訓練では、SCU/域外搬送機間(片道約100m)を2往復し、患者2名を搬送機へ運 び込み、搬送機内に待機している医療職への申し送りと患者の診療データの受け渡しが担当看護師から行わ れた。

【今回の成果】

本年度参加した訓練は、昨年度までの広域搬送訓練と比べ3つの変化があった。1つ目は自衛隊輸送機が実際 に福岡空港、入間空港から浜松基地に飛来し、患者を同乗させ帰投したこと、2つ目はさらに域外の災害拠点 病院まで患者を最終搬送したこと、そして3つ目はAMDAを含む多数の医療機関のチームが参加して行われたこ とにある。特に訓練目的の一つとして、東海地震発災時に域外搬送が必要と推測される重症患者約400人を2 4時間以内に域外搬送することがあげられており、域内災害拠点病院から域外専門病院までの患者搬送の一部 分を切り取り8名の模擬患者の搬送をおこない実際にシミュレートした。これまで行われてきた訓練では、予 め用意されたシナリオをただ消化していくだけであった為、実災害時における訓練の有効性には疑問があっ た。また広域搬送の概念で実施していたにも関わらず、県外の医療関係機関との連携は十分とは言えず、実 質県内からの参加が多くを占めていた。しかし今回の訓練では自衛隊や多数の関係機関が密接に連携し、患 者の発生時から最終的な移送先までの一連の患者搬送過程に沿って訓練を行ったことにより、これまでの個 別の訓練では検証が困難であった「患者搬送にかかる時間」、「必要な人材・機材」など具体的な問題点に ついての掘り起こしが実現した。
 今回の訓練の中でAMDAは、被災地域内の搬送と救護を主に担当したが、実災害時に予定時間内に現場に到 着し、十分な人員確保ができるか、また必要機材の自己調達の可能性など今後さらに検討を要する独自の課 題も浮上した。
 今年度の浜松基地での広域医療搬送実働訓練は、国内での大規模災害に先駆けた災害対策の一つとして期 待されるものであり、災害時の被害の軽減を進める上での重要性と、さらには民間組織と行政機関との連携 強化に繋がる貴重な訓練の場としての要素も含んでいる。

【今後の災害対策について】

2004年は国内災害を考える上で重要な区切りの年となりました。今年7月の新潟・福島県豪雨をはじめ、台風 の上陸による風水害、9月には大規模な海溝型地震を連想させる紀伊半島沖、東海道沖地震、そして10月23日 以来、未だ余震の続く新潟県中越地震と日本各地で自然災害による被害が続いています。AMDA本部のある岡 山県でも、本年9月には台風16号の影響により県内8ヶ所に災害救助法が適用されるほどの甚大な被害を受け ました。この台風被害の支援として、AMDA職員、AMDA高校生会の中から有志を募り、被災地域での復旧活動 に参加、また新潟県中越地震被災者支援のため、岡山県老人保健施設協会と共同でチームを派遣し支援活動 を行っています。
 AMDAでは、頻発する国内での自然災害への対策として、これまで行っている国内での防災訓練を通じた更 なるネットワークの構築と強化、さらには実災害時に活用できる防災システムの形成を目指して行きたいと 考えています。
 最後になりますが、本年の度重なる台風被害に遭われた方々、また新潟県中越地震などの被災者の方々に は心よりお見舞い申し上げます。


1 広域搬送拠点とは、実災害時に発生した大量の重症患者を県外搬送するために一時患者を集結させる施設。今訓練では航空自衛隊浜松基地で実施。
2  ステージング・ケア・ユニットとは、安全な病院に搬送すべき重症患者を、自衛隊域外搬送機の到着から搬送準備が整うまでの間、収容し治療を行う施設で、主に患者の治療や状態維持を目的とし広域搬送拠点内に設けられる。
3  自衛隊航空機は、主に往路:被災地外拠点(福岡空港、入間基地、立川駐屯地)から被災地内拠点(航空自衛隊浜松基地)に緊急物資や派遣医師等の輸送・運搬を行い、復路では重傷患者の県外搬送を行う輸送機並びに輸送ヘリを指す。(例:C1中型輸送機など)
4  レスキューカーとは、災害時の患者搬送用に開発された担架兼リアカーで、患者1名の搬送が可能。レスキューカーは担架部分と車両部分との脱着が可能で、さらに担架の設置面にはスプリングが装備されており、振動が減殺される仕組みになっている。
     (文中敬称略)




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