防災訓練

2003年度静岡県・菊川町総合防災訓練
参加報告


AMDA職員  柳田 展秀
AMDA Journal 2003年 8月号より掲載


【日 時】 2003年8月31日(日)〜9月1日(月)
【場 所】 静岡空港予定地(広域搬送拠点・補助会場)
【参加者】 岡田 眞人(静岡県・聖隷三方原病院院長補佐)
       上田 明彦(東京都・医師)
       諌山 憲司(京都府・消防士)
       杉山 清美(愛知県・看護師/救急救命士)
       鵜野 明美、塚本 智子(京都府・看護師)
       川上 侑希、影山 小凡里
        (岡山県・吉備国際大学生・調整員補佐)
       柳田 展秀、佐伯 美苗
        (AMDA緊急救援事業部・調整員)

【活動目的】
 大規模災害が発生した場合、広域搬送拠点となる静岡空港におけるトリアージと救護活動、及びヘリを用いた広域搬送訓練の技術向上を目指す。また災害時における行政機関、政府機関、病院等諸機関との連携強化並びに地域防災民間緊急医療ネットワークの強化。

【活動概要】
 2003年度静岡県・菊川町総合防災訓練は、主会場を菊川運動公園、ヘリを用いた搬送訓練会場として静岡空港予定地、そして防災船を用いた海路進出訓練会場に御前崎港と三ヶ所の会場を中心に行なわれた。
 訓練におけるAMDAの活動は、警戒宣言の報を受けた被災地域外の医療チームとして空路静岡県に入り、災害地域からの広域搬送拠点となる静岡空港予定地でのトリアージ及び救護活動を実施するものである。 
 AMDAチームは静岡県、東京災害医療センター、自衛隊と協力しStaging Care Unit(広域搬送の救護基地・以下SCU)での模擬診療訓練を実施。また自衛隊、ドクターヘリと協力し被災地からの模擬患者の搬送、SCUから災害地域外への搬送訓練も同時に行なわれた。

 今回のAMDAチームの活動は大きく分けて4項目である。

1)SCU設営訓練
2)ドクターヘリ機材搬出・搬入訓練・被災病院からの患者の搬送と救護訓練
3)SCU内での各関係機関と共同でのトリアージと救護
4)自衛隊との連携による被災地域外への患者搬送訓練

【SCU(Staging Care Unit)について】
 SCUとは被災地から搬送されてくる患者の第2トリアージを行い、適切な処置を施した後、被災地域外の最善と思われる施設へ再度搬送する為に準備を整える仮設救護拠点である。設営はAMDA医療チームと県職員などで行なわ 国立東京災害医療センターと共同のトリアージ訓練 れた。未経験者には多く戸惑う者もいたが、20分ほどの時間で設営は完了した。SCUには静岡県によりエアーテント 3張、担架10台、コンプレッサー3台、発電機3台、衛星電話数台、テーブル等が設置・配備された。

【トリアージ(Triage)について】
 トリアージとは、災害発生時などに多数の傷病者が発生した場合に、傷病の緊急度や程度に応じ、適切な搬送・治療を行うことである。災害時の医療救護にあたっては、現存する限られた医療スタッフや医薬品等の医療機能を最大限に活用して、可能なかぎり多数の傷病者の治療にあたることが必要である。

【訓練内容】
 午前9時30分地震発生、市内各所で外傷を負った重症患者が、ヘリで静岡空港に設置されたSCUへ運び込まれる設定である。SCUでは他の医療チームと共同でトリアージを実施する計画であったが、事情によりAMDAが先行して開始した。
 岡田医師の指示のもと、杉山看護師/救急救命士、諌山消防士の2名が患者搬送訓練開始。2名はドクターヘリで、掛川市立総合病院からSCUへの患者搬送を行い、SCUに戻り、ドクターヘリからの機材搬出・搬入訓練を実施した。空港に設置されたヘリポートは全部で三ヶ所ありSCUからの距離は約200m、この間の移動は陸上自衛隊の保有する特別車輌を利用する。この車輛は4台の担架を縦2段ずつに並べ搭載する事ができ、患者を担架に乗せた状態で搬送する事ができる。しかし車輛内部は狭く一般車輛のような内張りはない。車内の金属部分が剥き出しになっている為、患者へ外傷を与えないように細心の注意を必要とした。
初期診療にあたるAMDAチーム 左から塚本、杉山、鵜野各看護師
初期診療にあたるAMDAチーム 左から塚本、杉山、鵜野各看護師
トリアージと初期診療にあたる上田医師
トリアージと初期診療にあたる上田医師
 並行してSCUでは患者の第2トリアージが開始された。次々と運び込まれる患者を上田医師、そして今回初めて参加した鵜野看護師、塚本看護師がトリアージを順調にこなしていった。他の医療チーム到着の遅れや発電機の燃料切れによるSCUテントの倒壊事故、機材不足など予期せぬ出来事が救護訓練の緊張感を高めた。初めて訓練に参加した川上さん、影山さんも精力的に救護補助に奔走していた。
 SCUに運び込まれたすべての模擬患者のトリアージも終了し、最後の訓練として上田医師、鵜野看護師、塚本看護師が海上自衛隊ヘリでの被災地域外への患者搬送訓練を行った。離陸準備中の大型輸送ヘリMH53Eの風圧、轟音に圧倒されながら3名の患者をヘリに搬入し、AMDAチームの3名とその他関係者を乗せた大型ヘリは自衛隊浜松基地に向い飛び立ち訓練は幕を閉じた。

【まとめ】
 AMDAの防災訓練に関するコンセプトは、
1) 防災訓練は基本的には地元住民のための防災活動であり、AMDAはその医療救援分野において、外部からネ ットワーク的に協力できる範囲で参加する団体である。
2) 防災態勢が始動している環境において、外部から参入 するAMDAチームが、地元にて活動されている防災 組織各位の活動に対し、どのようにそのシステムに参 加し、補完できるかを自己研鑽する。
3) 可能なかぎり実践的に取組むために、現場での状況判 断を優先していく。災害医療における困難を積極的に 見出し、地域防災民間緊急医療ネットワークとして補 完・協力できるテーマを追求していく。

 AMDAはこのコンセプトをもとに各自治体で開催される防災訓練に参加してきた。今後は行政機関、政府機関、民間団体の三者が災害の現場で協力できるネットワーク作り並びに環境作りを推進して行く。防災訓練を通して、AMDA関係者や参加者の災害医療技術の向上、また実践的な地域防災民間緊急医療ネットワークの構築を進め、災害時に迅速で効果的な医療活動が実施できるよう備えていきたい。



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