防災訓練

東京都総合防災訓練"ビッグレスキュー2001"
AMDA調整員として活動報告とトリアージ


消防官・救命士 諌山 憲司
AMDA Journal 2001年11月号より掲載

2001年9月1日に行われた、東京都の総合防災訓練「ビッグレスキュー 2001」は自衛隊2,000人、警察1,000人、消防900人など15,000人が参加し昨年に続き大規模な訓練となった。

昨年と比べると自衛隊の出動は目立ってはいないが、市民や高校生のボランティアや、多様な医療訓練等を加味すると昨年以上の成果があったのではないだろうか。 また、今回米軍基地を訓練とはいえ使用し、石原都知事も「米軍の基地を使用できたというのは意味があり、有益な訓練であったのではないだろうか」と評価していた。 自衛隊の使用について賛否両論あるが、災害時において消防、警察の資機材では実質、手のうちようのない状況もある。 事実、災害時において最大限に発揮されるのは自衛隊のマンパワー、車両、重機等の機動力に他ならない。

訓練の説明を聞くスタッフ(右端 筆者)
机の下や横にも多くの用品が準備されている

私は消防官として、これまで災害現場(火災・救助・救急)に数多く出動してきた。図上訓練や講習で得た知識を、実際に災害現場で役立せることは難しいとの意見があるが、我々は有事に備えて常に訓練を行っている。 常日頃、災害や緊急事態に慣れていない人は訓練を行わないと、災害時や緊急時には慌てるだけになってしまうのではないか。 人間は経験したことには、その経験を情報とし知恵を駆使する中で慌てず対処できる傾向にある。われわれ災害に携わるものですら多くの大規模火災事故、まして大規模地震は、あまり経験するものではない。 だが災害多発国、日本に住んでいる限り、どの地域においても災害は起こりえる。"めったに災害を経験しないから対処できない"では情けない限りである。 災害が起こったときの対処や、集団救急事故が起こったときの選別法(トリアージ)を訓練で擬似的にでも経験、学習することで少しでも有事の際に被害を食い止めることができるのではないか。

日常生活をしている限り、災害など特に大規模火災や大規模な地震といわれても、なかなか緊迫した身近なこととは考えにくい面もある。 そこで防災の日や、救急の日とイベント日を設けコミュニティーの訓練等に参加することが重要である。大規模地震の対応だけでなく、交通事故等を含めた災難はあらゆる人に降りかかるものである。 そんな中、訓練で身に付けた消火器の使い方、バケツリレー、救急法、心肺蘇生術、トリアージ等は、いつか役立つに違いない。

今回訓練に参加されたAMDA関係者の方々は皆すばらしい方々であった。表向きは朗らかで同時に心の中の熱き雄志を感じ取れた。 トリアージ訓練を経験した方にはご理解をいただけると思うが、なにかしら反省点があり、改善すべき点を各人が抱くはずだ。 "選別判定は良かったのか、処置判断は良かったのか、トリアージタッグはミスなく記入できたのか?"。

また、多くの方から「訓練に来てよかった。」、「トリアージ訓練面白かった。」といったコメントをいただいた。皆多かれ少なかれ若干の不安を抱きつつ、仕事等の都合をつけて訓練に参加した。 皆さんのコメントは、そんな中実際に訓練に参加し、これからの自分にとって良い経験になったと感じ取れたことにあるのだろう。

ところで日本の自衛隊、警察、消防と個々の隊は世界に誇れる人材と資機材を潜在能力として保持している。しかしマネージメント能力にはいささか不安がある。 特に災害時といった緊急時での調整は省庁、各機関を連携、統括しなければならない。従来の縦割り行政の強い社会では難しいところもある。 しかし防災訓練を通じて、訓練準備や実訓練を積むことで、有事の際には訓練で培った省庁や各機関を飛び越えた人間関係により効果的なマネージメントができるに違いない。

集団災害におけるトリアージもまた、大規模地震同様めったに発生するものではないと考えられていたが、近年トリアージは身近なところで実際に行われており、使用されている概念であり、選別法だ。 昨今の使用事例として、(カルト集団のサリン事件を代表とし、小学校児童殺害事件、花火大会での将棋倒し事件、航空機事故や船舶事故、バスや列車事故等)事例を挙げればきりがない。 つい先日、東京防災訓練の日、未明に起きた歌舞伎町での火災事故においても、47名の方々を東京消防指令室と現場の救急隊が振り分け、救命救急センター等の病院に搬送している。

実際、災害の規模にもよるが、通常は心肺停止者には心肺蘇生術を行う。 しかしトリアージにおいては心肺停止者を死亡と選別し、トリアージタッグの黒に決定されることもある。 ある面残酷であるが、より多くの中等症、重症患者を救命するには不可欠である。 トリアージの訓練を数多く経験し、前回よりも今回、今回よりも次回と少しでも反省点を改善し、より有効的なトリアージを実施し、また有事において、円滑に活用したい。 そのためには自己研鑽をしていかなくてはならない。 トリアージを集団災害時における傷病者選別にとどまらず、本当の意味での緊急時の取捨選択という概念に基づき、私を含めて多くの方にもっと理解していただき、広く活用を勧めていきたい。

*トリアージ

トリアージとは、災害発生時などに多数の傷病者が発生した場合、傷病者の緊急度や重傷度に応じ、適切な搬送・治療を行うことをいう。 災害発生時において、限られた医療資源を有効に活用し、可能な限り多くの人命を救うためには、トリアージが不可欠である。 医療救護所などでは、医師などによるトリアージの結果に基づき「トリアージタッグ」を付け、必要な搬送や応急措置を行い、傷病者を軽症(緑)・中等症(黄)・重症(赤)・死亡(黒)に色分けして選別する。

※調布会場参加のAMDAチームは、上田明彦医師(東京都)、山田賢治医師(東京都)、岸部智恵美看護婦(岡山市)、諌山憲司救命士(京都府)、前 喜美(AMDA本部)の5名。 玉川会場へは慶泉会町谷原病院より小林直之医師(東京都)がAMDAチームとして参加しました。




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