|
|
AMDAスタディツアー(ケニア)に参加して
北海道教育大学札幌校
橋谷 陽介
AMDA Journal 2000年 11月号より掲載
|
私がこのスタディツアーに参加した理由は、アフリカに行きたいということ、そして、自分が大学で学んでいこうとしている国際協力の現場をみたい
という二つの理由からだった。現地のスタッフの人々の温かい歓迎により、 実りの多い有意義な1週間を過ごさせていただいた。
まず訪れたのはキベラだった。ケニアの首都ナイロビでは人口の多くがキベラのようなスラムに住んでいる。そこには期間中何度か訪れたが、最初に 感じたことは自分が思っていたよりも状態がよいという事だ。
自分はツアーに参加する前から国際協力に関する文献を何冊か読んでいて、スラムとはとんでもない地獄のようなところを想像していた。
実際に見てみると、人々には貧しいながらも活発にスラムの中で 交流が見られ、物も売っているし、笑い声も聞こえる。日本から来た我々を冷やかすような余裕も見られる。一瞬¢どこに問題があるのか?£と考えてしまっ
た。しかしキベラの中に進んでいくと、ある印象的な光景が見られた。
キ ベラの中を通る線路が丘の上にある。その丘からはキベラが広く見渡せるのだが、反対側を見ると、なんとも優雅なゴルフ場がある。「これが貧富の差というものか」と思わず独り言を発しそうになった。もう一つ日がたつにつれて感じたことは、スラムは別にナイロビから孤立していないということだ。スラムに住む人も街中に出て定職を持つ人々がいるという事実に驚いた。実際AMDAの現地スタッフの中にもキベラに限らず、スラムに住んでい
る方がいた。しかし、やはり大勢の人々は毎日日雇いの仕事を求めて町の工 場へ何キロも歩いていくそうだ。
キベラの話をしたらこれだけで感想が終わってしまいそうなので、次の話に移りたい。ツアー期間中に、女性に 対してのマイクロクレジットについて熱心に現地スタッフの方々に説明して
いただいたが、それについてはAMDAジャーナルの10月号に記載されていたので、ここではあえてそれに触れないことにして、我々が実際に参加させ
ていただいた(させられた?)クリーニングキャンペーンの感想を述べたい。
このキャンペーンはスタッフの方々と、マイクロプロジェクトの前段階 としてミシンの訓練などを受けている女性達、それから我々参加者で行なった。内容はキベラに沿ってある道路のわきのごみをかき出して、トラックで
もっと大きなごみ捨て場に運ぶというものであるが、この作業の率直な感想 は「すさまじかった」と言うしかないだろう。
かき出してもかき出しても出てくるごみ、ごみの中を動き回る見たことのない虫、わずかにくすぶったごみから出る煙、また、ごみをトラックに積み上げる際に失敗して上から降ってくるごみ…別にこのキャンペーンを批判するつもりはないが、とにかく最初にこのキャンペーンをはじめた方の勇気をたたえたい。スタッフの方の話によれば、このキャンペーンによる清掃効果はほとんどないという。少しば
かりきれいにしたところで、またそこに捨てればいいと思うからだそうだ。
しかしスタッフの方はそれでそこにごみが集められ、他に広がるのを防げるとおっしゃっていた。あるいは「それでも何人かが、ごみに関して捨て場を決めるなどの意識を持って、取り組んでいってくれれば」ともおっしゃっていた。この辺にNGOが「いつかはいなくなるのが理想」という理由を感じ
ることができた。
彼らの住む場所の問題なのだから、いつかは彼らの力で解 決していかねばならない問題である。とにかくすごい体験であったが、この ときにようやく現地の人々と交流を持てた気がした。ともに汗を流した2時
間、その一部始終を見ていたが、それを通して、学んだことは 大きく、よい経験だったと今思えば言いきれる。
スタッフの方が、100%の援助はなく、ベストを目指せば援助漬けにしてしまうと言っていたことに私は共感した。ベストよりもベターを目指す。AMDAの支援は受け手にとってつらいものだと思う。かなりの努力が
必要だからである。しかも必ず成功する保障はない。しかし必ず成功する保 障のある成長などどこにもないだろう。先進国とて同じ事である。途上国 に住む人々を貧しいからといって甘やかさず、相応の努力を要求するAMDA
の方法は正しいと思う。
もし100%の援助をしてしまったら、彼らは過保護 に育てられた子どものようになってしまうだろう。援助とは頑張ろうとする 人にチャンスを与えることであるともおっしゃっていた。本当に頑張るべき
なのはAMDAではなく、AMDAの力を借りる人である。これはこれから自分の大学での研究に大いに参考になる考え方であった。
最後に、藤井さん、石原さん、林さん、それからジョンさんとムワンギさん、興味深いお話をいろいろとありがとうございました。 |
|
|