スリランカ

AMDA医療和平プロジェクト

     北部 キリノッチ

ニティアン・ヴィーラヴァグ(現地副統括)      
翻訳 藤井倭文子

プロジェクトの実施場所:

キリノッチはスリランカ北部のヴァンニ地方に位置し、ジャフナから南へ 約100キロ、ワウニアから北へ約85キロの所に位置している。キリノッチ地 区には約35,000世帯が暮らしており、国内でも乾燥地帯にあり、多くの水田 や植物の生育には全て雨季の降雨に頼っている。キリノッチは米の二毛作が おこなわれ、果物のごく一部を例にあげるとマンゴ、バナナ、パイナップル、 ジャックフルーツ、ウッドアップル等を生産している。収穫期になるときれ いな青々とした稲田が右に左に風にゆれ、地域全体が緑の天国のようにな る。この地域はフラメンコのような渡り鳥をふくむ多種類の鳥類にも恵まれ ている。
 キリノッチには4人の MOH (Medical Officer of Health:日本では保健所長にあたる)がいる(カライッチ、 カンダヴァライ、パライ、プナカリー)。 この地方は残酷な内戦により深刻な影響を受け、住民は20年近くも必要 最小限の生活環境の中で苦しんだ。歯科治療、適切な医療ケア、栄養のある 食べ物、衣料等もなかった。現在公衆衛生監督官、看護師、医療従事者等が 深刻に不足している。事業地域のような所では私達のプロジェクトは必要と され、地元当局の方達は、私達がここで必要とされているサービスを提供で きる事を非常に歓迎している。AMDAはキリノッチにある地元医療当局と密 接に連絡を取りながら、彼等の必要に応じたプログラムを実施している。

プロジェクトの概要:

キリノッチ医療和平プロジェクトには3つの大きな活動が含まれている。
 1.保健衛生教育
 2.レントゲン検査
 3.巡回診療

1.保健衛生教育

私たちは通常学校やキャンプで週3〜4回保健衛生教育を実施している。 私達が学校を訪れるとその地域の医療行政機関に所属している医療ボランテ ィアが来て積極的に参加している。この教育の一環としてAMDAは日本か ら寄贈された石鹸、歯ブラシ等をその日の話題にあわせて生徒に配布してい る。学校やキャンプでは手を清潔に保つ事、うがいの仕方、一般的な風邪や せきを予防するためにうがいの大切さ、歯の正しい磨き方、栄養と貧血症、 正しいトイレの使い方、その大切さ等基本的な保健と衛生教育を実施してい る。2005年の6月から、医療和平プロジェクトは巡回診療より保健衛生教育 により力を入れている。その理由はキリノッチの各学校で私達が実施した保 健教育プログラムが圧倒的な支持を得たからである。


キリノッチで活動する、健康教育を行う

2.レントゲン検査

キリノッチにある私達の巡回レントゲン検査用トラックを活用し、日本人 のX線技師が活躍している。現場で技師は薬品の調合、フィルムの乾燥およ び患者の撮影用テーブルへの誘導等、二人の運転手が手伝っている。実施場 所は二箇所あり、それぞれ月二回実施されている。このX線技師はこれ以外 にもキリノッチ地区にある病院のレントゲン科で働いている職員の指導も行 っている。地域医療担当官は私達の活動を歓迎し、全面的に協力する事を約 束してくれている。

3.巡回診療/医療キャンプ

医療和平プロジェクトの巡回診療は私達のチームにいる海外から派遣され た医師の支援を得て、通常隔週毎に実施している。隔週毎に3村、月一回6村 を訪れている。2005年6月からは地元の医師のみで実施する予定で、巡回診 療は今迄とは異なったスタイルや方法で継続されている。
 この地方は深刻な医師不足に直面しているため、医療当局と話し合い、医 療キャンプを月に一回又は二回実施する事を決めた。
 この医療キャンプに中心的な医師として県保健行政局長(Deputy Provincial Director of Health Services:DPDHS) か、MOH又はTEHS (タミル·イーラム医療行政機関)から、ことによると二人目の医師、歯科医、 AMDAのX線技師、AMDA看護師、及び医療関係者を含む予定もある。一村 または一実施場所の選択は県保健行政局長(DPDHS)やMOHに委ね、私達 は事前に地域と連絡を取り、医療キャンプを設営する。AMDAは医薬品の一 部を提供する予定である。
キリノッチ地区には150人以上の医療ボランティアがいる。上記の如くこ の地区には4つの医療行政機関があり、各MOHには独自のボランティアチー ムがある。そして殆んどのメンバーはほぼ無償に近い待遇で活動している。 彼等を養成し、保健衛生教育の実施や医療キャンプの運営も考えられる。同 時に彼等はAMDAから習得した事をそれぞれの地域で伝える事ができる。
 その他にもMOHが企画している医療評価キャンプも毎月実施され、これ までの実績によりAMDAも同行を依頼されている。AMDAは訓練を受けた ボランティアの協力を得て、センターにおいて保健教育セミナーを実施する 予定である。これらキャンプの主な目的は村の各家庭を訪問し、健康に関す る情報を集め、個人個人の健康に関する認識を高めるプログラムを実施する 事である。各MOHは一ヶ月当たり一村家庭訪問を行なう。AMDAは一ヶ月 当たり一MOH地域の一キャンプに参加する。
 最後に、AMDAは学校の生徒や彼等の親を通じて個人の衛生意識を高め健 康に関する習慣を改善し、それぞれの地域で広められる事を期待している。 国中の様々な地域で生徒間のコミュニケーション能力を高め、この様にして 医療和平プロジェクトの目的を達成する事ができると確信する。

     北東部 トリンコマリ

長谷川 あすか(現地副統括・医療調整員)

プロジェクトの概要:

「4月に、また海に戻ってきたんだ。運良く、船は道端で見つかったし、漁 業を再開できる私は、幸せ者だよ。」網の解れを縫い直していた手元を一端休 め、遠くを見つめながら、漁師はそう呟きました。スマトラ沖地震の大津波 から半年。漁業の町トリンコマリでは、海で働く漁民の姿が徐々に増え、 以前のような賑わいを取り戻しつつあります。
 しかしながら、シンハラ、タミル、ムスリムの3民族が共存するこの県で は、復興支援活動運営に関する、政府、野党、LTTE(タミル・イーラム・解放 の虎)間での意見の食い違いが、その都度、地域住民の生活に大きな影響を 及ぼし、しばしば彼らの生活をより困難なものにしてしまいます。とはい え、この漁師の言葉に、私の記憶の奥に眠っていた津波以前の活気に満ち溢 れたトリンコマリの情景が蘇ってきました。
 私は最近、トリンコマリ復興への道のりに、日々着実な足跡が刻みつけら れていることを実感させられています。「政治の混乱どこ吹く風」とばかり に、この町で見かけるどの人々も、底知れぬ活力と地道な努力で、以前のよ うな活気あふれる生活を取り戻そうと日々懸命に生きているのです。

今年の5月で、トリンコマリでの活動は1年半を迎えました。最初の活動 は、市内から北西に車で2時間半のところに位置するゴマランカダウェラ地 区で行った、月に1度の巡回診療です。
 初の医療チーム到来を祝し、村の守り神である僧侶を始め、コミュニティ の代表、そして多くの患者さんから温かい歓迎の言葉を頂きました。娘さん に支えられ、30分以上もの道のりを歩いて診療サイトへやって来ていたおば あちゃん。足腰が痛いって嘆いていたな。当時妊娠7ヶ月だった19歳のお母 さん。生まれたのは男の子、それとも女の子だったのかしら。胸の痛みを訴 え、地元の病院を紹介されたおじいちゃん。あの後、しっかり病院に行った のかな?
 診療サイトでのそれぞれの出会いはどれも色褪せることなく不思議なくら い鮮明に私の脳裏に蘇ってきます。

その当時、この地区保健省は、「治療」を重視した医療システムの構築か ら、「予防」を重視した保健衛生教育の導入に力を入れ始めていました。従っ て、私たちAMDAの活動も地元のニーズに合わせ、巡回診療から健康教育へ と移行していきました。
 新活動である健康教育セミナー開催の場として、ムスリム民族が多く存在 するキニヤ地区が活動候補地として上がり、キニヤ地区保健省・教育委員会 と相談した結果、5つの地元小学校が、AMDA健康教育セミナー開催校として 選ばれました。
 雲一つない青空の下で大きな掛け声と一緒に手を洗ったこと、うがいの練 習で上を見すぎて水を飲み込んでしまったこと、歯磨きテスターで口の中が 真っ赤になったこと、生まれて初めて歯ブラシを握ったこと、初めて消毒と ガーゼを使用して友達の傷の処置をしたこと、これら全ての経験は、子供達 の記憶の中にしっかりと刻み込まれたことでしょう。

地元小学校において、このような健康教育活動を進めている中、 昨年12月26日にスマトラ沖で大地震が発生し、大津波がスリランカを襲いました。 スリランカで最も大きな被害を受けた地域の一つであるトリンコマリ県には、 当時世界中からNGOが緊急救援活動のために集まってきました。が、津波直後の混乱の中、 地元政府と連携し効果的な支援を行った団体がいくつあったことでしょう…。
 そのような混乱の中、私たちAMDAは、地元の保健局長から、緊急救援処 置としてのキャンプ内における感染症予防のために、また中長期的な復興支 援としての基本的生活衛生習慣の改善のために、活動範囲を広げて健康教育 セミナーを実施してほしいという依頼を受けました。トリンコマリの人々 に、私たちの健康教育活動の重要性、必要性を強く認識していただけたのだ という達成感を感じ、懸命にやってきた活動が実を結んだ瞬間でした。
 津波直後、私たちの活動地域は、地元のニーズと合致し以前より広がって いきました。

津波後の変化として、トリンコマリでは自分たちの国民を自分たちの手で 守りたいという機運の高まりがありました。その機運の高まりの結果とし て、健康教育に参加する地元住民の数が増えたことに加え、地元医療従事者 を対象とした健康教育セミナーの必要性が大きく叫ばれ始めました。
 そのニーズに応えるため、地元住民に対しての健康教育セミナーだけでは なく、医療従事者への健康教育セミナーの開催が求められ、地元保健局の依頼の下、 私たちは、活動地域の拡大に加え、活動対象者の枠も広げることとなりました。
 現在、AMDAの健康教育セミナーを受けたこれらの地元医療従事者たち は、キャンプ訪問、家庭訪問、母子クリニック、予防接種などの彼らの本業 の傍ら、爪きり、石鹸、歯ブラシなどを使ってAMDAから学んだ健康教育 を行っています。

今後のトリンコマリでの活動に関しては、この保健衛生健康教育活動をよ り一層地元へ普及させるために、地元NGOと連携し、ヘルスボランティアの 人材育成を行っていきたいと考えています。
 また、引き続き毎日の地道な活動の中で、北部及び、南部におけるAMDA の活動の様子、そこに住む人々の生活の様子と、彼らが抱くスリランカへの 思いを紹介しながら、東部トリンコマリの人々が、違う地域・違う民族の人々 への関心を高め、スリランカ国民として平和を願う思いが一層強くなるよう な活動をしていきたいと考えています。
 1人でも多くのスリランカの人々が、健康に感謝し、平和に感謝し、日々希 望に満ちた生活を送れますように…。私をトリンコマリでの活動に邁進させ たこの思いを再び胸に、トリンコマリの人々と一緒にこれからの活動に励ん でいきたい。第2フレーズを迎えるPBPにおいて、津波被害からの復興目 覚しいトリンコマリにおいて、そう再決意している今日この頃です。


トリンコマリのMOHで

     南部 ハンバントータ

島田 尚美 (医療調整員)

 

過去約2年間に渡るハンバントータでの実活動に終止符を打ち、 今後はモニタリングを定期的に行っていく予定である。 それと平行し現在カルタラを新活動地域として選定し、 情報収集、各方面の保健・教育機関との連携作りに力を入れている。 カルタラは去年12月に起こった津波被害地域の一つでもあり、 依然、避難民を抱えた、環境衛生不足、又個人生活習慣に関する衛生保持困難による感染症発生 〜蔓延の可能性、政府からの土地提供遅延によるキャンプ生活長期可能性等の問題が残っている。 これらは、5月に県保健局長許可の下、キャンプ地管理者である保健医療医師の協力を得て、 キャンプ地の視察調査を行った結果である。 その結果と共にカルタラにおける、 学校を土台とする巡回健康教育計画書を提出した。その結果、県保健局長の許可が下り、 今後県保健局長直下の健康教育プログラムに加わりキャンプ地での健康教育を施行していく。 現在は学校を土台とする巡回健康教育を施行する為に、県保健局長と県教育局長の許可を得られるよう、 そして連携を深めるべき計画書提出−交渉に当たっている次第である。 今後、学校での巡回健康教育を中心に、ここ南部シンハラ人と関わる事によって他2地域 (キリノッチ、トリンコマリ)との交流を定期的に保てる様な活動に繋がっていければと考える。 このPBPのゴールであるPEACE-BUILDINGとは、実は同じ問題を抱えているんだと 各民族が感じ合う事ではないかと思う。その為には押し付けではなく、 理解し合おうとする心が一番大切であろう。




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