スリランカ

巡回診療で行なわれた健康教育の効果

看護士 北川 佳子
AMDA Journal 2004年 8月号より掲載

はじめに

キリノッチで巡回診療が開始されて1年が過ぎた。
 多くの住民がこの巡回診療を利用されたが、私が利用者と接する中で気付いたことは、多くの子どもが発 熱や下痢を訴えて来ており、そのほとんどが脱水と思われる症状を呈していることだった。発熱や下痢の原 因は様々で、中にはこの熱帯の地域特有のマラリヤなどの感染があり、これらは薬で治療が必要だが、小児 の場合、一時的な軽い発熱や下痢は良く見られることで水分を補給するとすぐ回復することもまたよくある ことである。
 また、巡回診療は沢山の人々が利用されるため、気温40℃近くの炎天下待ち時間は1時間、時に3時間も待 つことがあり、しかも水筒など水を持参して来る人はほとんどおらず、それだけでも脱水により体温が上昇 していることが考えらる。そして発熱を訴える人々は医師より解熱剤が処方されるため、補水を試みず、薬 を使用しているものと思われる。もし、発熱や下痢を起こしている子どもに水分を補給するなら、重症な感 染症でないならば、それだけで回復する場合もあるだろうし、長い時間をかけてクリニックに薬をもらいに 来る必要もなくなり、また薬に依存する傾向も防ぐことができるのではないかと考え、上記のような理由か ら巡回診療と並行して健康教育を行うことを企画した。

内容


1. 子どもが発熱した時,まず何をするか。
・軽装にすること
・頭部や腋かなどを冷やすこと
・水分補給をすること
・ORS(経口補水溶液)の作り方
*ORS…ボイルドウォーター 1L  塩 1/2ティースプーン 砂糖 8  ティースプーン、少量のライム
・脱水について
2. 子どもが下痢をした時の対処法 ・水分補給(ORS)
・下痢をしている時に避けた方がよい食べ物、どんな食べ物がよいか。
・脱水について
3.どのような症状の時に病院へ行く必要があるか
4. 薬の正しい使用法

方法

巡回診療の診察待ちの利用者へポスターを使用し、ローカルスタッフが現地語で教育を行う。

評価

これらの教育を約6ヵ月続けてきた。その後、クリニックを訪れる際に水筒を持参する利用者が増えてきたと 言う以外、目に見えて発熱者が減ったというような結果は得られてはいないが、どの程度の理解が得られて いるか、実際試みているのかを調べるために、アンケート調査を行った。

アンケート調査結果


調査期間:6月1日〜10日
対象:巡回診療に訪れた再診利用者
   47人
方法:通訳を通して以下の質問を行う
1.巡回診療で健康教育を受けた事がありますか?   
  はい  36人 77%       いいえ 11人 23%
2.これらの教育内容は難しいですか?簡単ですか?
  難しい  0人
  簡単  36人 100%
3.熱した場合どうしますか?
  軽装にする、冷やす、水分補給    28人 78%
  解熱剤を使用             3人  8%
  無回答               5人  14%
4.下痢した場合どうしますか?
 水分補給  21人 58%
 ORSを試す 5人 14%
 無回答   10人 28%
5.その結果回復しましたか?
 回復した  34人 94%
 無回答   2人  6%
6.これらの教育は役に立ちますか? 役に立つ  31人 86%
 無回答    5人 14%
*無回答は診察順番が回ってきて解答 できなかったか、解答がはっきりしなかった人          
 調査期間が短かったことと調査人数が少なかったため、正確な結果とは言い切れないが、少なくともこの健康教育内容を試みている様子が伺える。また、もしこれらの処置の効果で発熱や下痢が回復した実感を持つならば、健康管理を自分で行うことができることを知るきっかけになるのではないかと思う。アンケートの最後に「今後 どのようなトピックを望みますか」と尋ねたところ、下痢、発熱、風邪、貧血などがあげられた。
 私達は巡回診療地域近隣の学校で、保健教育としてこれらのテーマで予防対策の教育を行っているため、これらのトピックを今後は巡回診療でも健康教育として継続して行っていくと良いのではないかと思う。

おわりに

キリノッチで活動を行って1年、初めはこの地域特有の疾患や住民のニーズがよく分らず、あるがまま、訴え られるままに対処する日々だったが、キリノッチに住み、住民と共にここの生活を実感する中で、人々の生 活習慣を知り、人々が必要としているものが少しずつ見えてくるようになった。それと同時に看護師として 何を提供してよいか、気付かされてきたのだと思う。
 最初のころは日本人看護師の目で問題点ばかりをあげていたように思う。日本と同じ医療をこの地で行う のは不可能に近く、それに挑戦しようとすれば挫折するだけだが、看護師として人々の健康上の問題にいか に対処すべきかは、方法を変えてどの国・どの状況の人々にも同じ援助ができることを知った。まずは看護 の基本に戻る事である。
 たくさんの出来事が私の中で思い出として刻まれているにも関わらず、あっという間に過ぎた1年である ことを今実感している。このプロジェクトは次の看護師が引き継いで新しい風を吹き込みつつ、さらに成長 して行くことであろう。




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