スリランカ

スリランカ東部トリンコマリーで医療サービス開始


調査員(現地統括)山根 達郎  医療調査員・看護師長谷川あすか
      AMDA Journal 2004年2月号より掲載

調査員(現地統括)山根 達郎

12月15日、スリランカ東部の海岸部における港町トリンコマリー市外から車両で2時間ほど離れた Bamburugaswewaにおいて、AMDAスリランカ医療和平チームはヘルス・キャンプを行い、東部 での医療サービスを開始した。その結果、127名の患者を診察し、また今後の東部地区での定期的な巡 回診療の展開に向けた調査のための有益な機会ともなった。スリランカ医療和平チームは、3月に開催 された箱根会議にて明石政府代表(スリランカ平和構築・開発復興)からの要請を受け、スリランカ北 部、東部、南部におけるバランスのとれた医療サービスの提供を目指してきた。主に北部キリノッチ、 バブニア(8月に活動終了)、および南部ハンバントタの各県において活動を展開してきた同チームは、 東部トリンコマリー県での活動をこの度開始し、2003年中に明石氏との約束を果たすとともに、北部、南 部、そして東部での活動を同時に行うという機会を得た。

すでに9月、12月と事前調査を同県の担当行政と協調して行ってきたいくつか のサイト先のうち、今回のヘルスキャンプにはBamburugaswewaを選定した。

Bamburugaswewaは、Gomarankadawela 地方病院(医師2名、Midwife2名、マタニティ施設あり、 1日平均150名の患者)より車両で30分ほど離れたところであるが、公共バスが通じていないため、 医療サービスの提供が困難な場所である。2004年から定期的な巡回診療を予定している同サイトでは 、サイト内にある仏教寺院内の施設を貸していただく予定であるが、今回のヘルスキャンプは同寺院 に近い小学校が休暇中であることからその小学校施設を利用することができた。

裨益人口は500名であるが、実際にヘルスキャンプに訪れた住民のほかに、同サイトを担当するスリランカ 陸軍の隊員や仏教寺院の僧侶も受診するなど、多様であった。他方、サービスの提供側には、同地方病院に 勤務する医療スタッフ(ドクター・ラジャパクサの他、ミッドワイフ2名、ヘルスボランティア1名)による AMDAとのパートナーシップに基づいた参加のほか、AMDAスタッフからは、筆者(山根現地統括)の他、二テ ィ調整員、長谷川医療調整員(看護師)に加え、ドライバーのニハール氏が参加した。また、AMDA PBPの コロンボ事務所に対しセキュリティー会社から配属されているシバランジャン氏(トリンコマリー県出身) も、自身の休暇をとらえて同ヘルスキャンプにボランティアとして参加をしてくれた。

同サイトはシンハラ系住民を中心としており、シンハラ語が通じる地域であった。ニハール職員はシンハラ系 であり、ヘルスキャンプでの受付で患者から聴取した患者情報をカルテに記載していった。また、ボランティ アで参加をしてくれたシバランジャンはタミル系であり、タミル語が母語であるが、シンハラ語も得意であり 、身長・体重測定を担当してくれた。

AMDA PBPは、2004年より、東部での定期的な巡回診療を開始し、同県に属するシンハラ系、タミル系、 そしてムスリム系住民地区での活動をすすめていく。

医療調査員・看護師 長谷川あすか

「先生はもうすぐ今日の診察が終わりますから、少々お待ちください。」時計の針は、朝の8時半を少 し回ったところ。今日の診察が終わる? まだ始まっていないのに…と首をかしげていると、Rajapaksa 医師が姿を現した。

「巡回診療へ行く前に、病院で担当している患者さんの診察を終わらせてきました。150人はいた でしょうか。」

今回、巡回診療という表舞台で大活躍を遂げることとなる医療スタッフは、Gomaragadawelaにある 地元病院で働く現役医師・助産婦・ボランティアの方々である。Gomaragadawelaは26の村を有する 人口約6100人程の地域。Bumbrugaswewaはそれら村の一つであり、そこから車で約30分ほどのところ に位置する。

筆者によるスクリーニング
筆者によるスクリーニング

150人の患者を診終えた疲れなどつゆとも感じさせないRajapaksa先生、病院からの医療器具をぎゅっ と胸に抱え込んだChandra助産婦と、Bumbrugaswewa出身の医療ボランティアを乗せ、私たちAMDAス タッフは、いざ、Bumbrugaswewaへと向かった。

車を10分ほど走らせたころ、2人の孫娘に支えられながら、一歩一歩足を引きづるように巡回診療所へ向 かうおばあちゃんに出会った。そのおばあちゃんを横目に通り過ぎようとした運転手に、いち早く車を止 めるように指示を出したのは、Rajapaksa医師であった。扉を開けた途端、車から飛び降りた2人の助産婦 は、両脇からしっかりと支えておばあちゃんを車に乗せた。おばあちゃんを心配そうに眺めていた2人の子 供たちの顔に笑みがこぼれたのも、この瞬間であった。Chandra助産婦は右手を差し出し、2人の子供たち をも車に乗せた。「おばあちゃんはもう大丈夫。そんな顔しないの。さあ行くよ。」というChandra助産婦 の言葉に、子供たちは恥ずかしそうに笑っていた。そして、このおばあちゃんが、何を隠そう、今回の巡回 診療患者さん第一号になったのだった。

地元助産婦による手際のよい指示
地元助産婦による手際のよい指示

Panbullugaswellaへ到着し、巡回診療の会場となる小学校で準備をしていると、あちらこちらからともなく、 地元の人々が集まってきた。会場設置が完了する頃には、総勢120人もの人々がずらりと学校の敷地を埋め尽 くした。これらの地元住民を前に、村唯一のお寺の僧侶より祈祷のお言葉をいただくとともに、Rajapaksa医 師から巡回診療開催のあいさつをもしていただ後、地元医療スタッフ、地元住民、そしてAMDAスタッフ一同 が、首を長くして待ち望んだ巡回診療が、堂々と幕を開けた。

普段から同じ病院で一緒に医療活動を行っているということもあり、地元医療スタッフのチームワークのよ さが巡回診療の運びをスムーズにした。AMDAドライバーに身長・体重を計ってもらった患者は、受付担当の 医療ボランティア・Chandraさんのところに行き、そこで改めて名前・性別などをカルテに記入される。そし て、患者は待合室にて列を作り自分の番を待つことになる。待合室での患者の整理、対応、そして医師の診 察のアシスタントにあたるのは、Chandra助産婦。病院での経験をフルに活用し、巧みに患者と対応する姿は とても力強い。Chandora助産婦の指示で、患者が一人一人、Rajapaksa医師の前に座る。100人以上もの患者 を目の前に、疲れた表情をいっさい見せないRajapaksa医師。患者の訴えにじっくり耳を傾け問診、聴診、 触診により診断する。もちろん、適切なアドバイスもかかさない。そして、診察が終わった患者は薬局へ足 を運び、Siyawaine助産婦より薬を受け取る。Siyawaine助産婦による薬の説明を聞く患者の表情は真剣その もの。患者が薬の用途を理解したのを確認し、Siyawaine助産婦は薬の処方量を表へ記録する。このような 診療手順が、自然と成立した。また、順番待ちの患者を相手に、発熱の有無を確認するため、AMDAスタッフ により体温チェックが行われた。体温計を使用したことのない人々が多く、「私も計って」、「この子も計 って」と、あちらこちらから声が上がった。

疾患の傾向としては、ウィルス性発熱、喘息、筋肉痛・関節痛、そして胸焼けが上位を占めた。北部キリノッ チ巡回診療との大きな違いは、創傷処置がほとんどないということと、巡回診療を訪れる人々の靴・サンダル 使用率が100%に近いということ。子供の手足に損傷がなく、一見きれいに見える皮膚だが、その反面、アレル ギー性の湿疹、汗疹が目立った。

午後2時を回った頃、巡回診療は無事終了した。最後の患者を薬局で見送った時、地元の女性クラブの代表が スタッフ全員をお昼の食事へ招待してくれた。テーブルいっぱいに並べられた民族料理。地元住民の方々か らの感謝の気持ちが、口にすればするほど、体中に行き渡る思いだった。 

Gomaragadawelaへ戻る途中、 Rajapaksa医師からは、すでに来年の巡回診療について問合せを受けた。 Trincomaleeにおける巡回診療が、地元住民・医療スタッフの要望により近い形の活動となるよう、来年 度へ向けて調整を行っていきたい。         




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