スリランカ

北部巡回診療プロジェクト

−ヴァヴニア地域−
AMDA Journal 2003年 7月号より掲載

ヴァヴニアは、スリランカ北部の内陸部に位置する都市です。コロンボからは車で(手馴れたドライ バーであれば)6時間のところにあり、最古の都アヌラーダプラからは1時間ほどのところに位置して います。人口の大半はタミール系住民で占められていますが、シンハラ系住民の居住地域も混在して おり、スリランカ南部のほとんどがシンハラ系住民であるのに対し、これより以北はタミール系住民が 目立つようになります。この地域では、タミール系反政府組織LTTEと対峙していたこともあり、政府側 の軍隊が常駐している基地も多く、ヴァヴニアでも兵士の姿が目立ちます。農業が盛んで、中継地とし て物流を確保するための商店も建ち並んではいるものの、これまでの内戦の影響は拭えきれていない。 地域に存在していた病院は破壊され、医療関係者もヴァヴニアから遠のいてしまっている。ひとたび ヴァヴニアを離れれば医療システムは破壊されたままであり、巡回診療は不可欠となっています。そこ で、ヴァヴニア事務所では、巡回診療を中心に活動をしており、他方、口唇口蓋裂手術の手配も行って います。

1. 巡回診療
政府による医療サービスの届かない地域の住民を対象に、AMDAの巡回診療チームがヴァヴニア地区内で 医療活動を展開中。地域の選定にあたっては、地元の保健省のアドバイスをもとに視察を行い、今年3月 10日より、タミール人居住区4村(スリランカ政府支配地区─2、LTTE支配地区─2)、シンハラ人居 住区1村において、各村週1回の頻度で巡回診療サービスを行っている。

前記のメンバーが、医薬品、医療器材等を持ち込み、各村に存在するヘルスセンターの建物を利用し、 毎回現地で会場を設置し、診療を行う。AMDA の巡回診療では、医師による診断、処方、怪我の治療、 基礎的健康チェック(体温・血圧・体重等)を行い、詳しい検査、治療等が必要と診断された患者には 、巡回診療医師による紹介状を渡し、最寄の病院へ行く事を勧めている。

一日あたりの患者数は平均して約100名。年齢構成、性別、疾病は、多少の地域差が見られるが、 圧倒的に女性が多く、小児、高齢者の患者が多く訪れる。


*AMDA巡回診療の意義
ヴァヴニア地区でAMDAが巡回診療を開始してから約2ヶ月が経ち、現在ではAMDAの旗をはためかせた 車輌が現場へ到着すると、すでに多くの患者さんたちが建物の前で待っている。特に境界線を越えた 地域では数十分かけて徒歩や自転車で来所する患者さんも多く、AMDAの存在が徐々に浸透し、受け入れ られていることが良く判る。会場設置の為に、毎回掃除、持ち込み器材の運び出し等を行う際に、 積極的に手助けしてくれる患者さんや、診察後わざわざお礼を言いに来て下さる患者さんも多く、 地元の人たちとの言葉を越えた交流に胸が熱くなる思いがすることもある。


*問題点・今後の課題
基本的に医療が無料というスリランカ国内では、習慣からか、地元医師の処方する医薬品の量が非常に 多い。また、複数の症状を訴える患者も多く(医師たちは、Multiple Patient、Multiple Problemと 呼んでいる)一人の患者が5、6袋の薬を持って帰ることが非常に多い。週に一度しか訪問できないこと、 患者側の医薬品に対する期待、等から、地元医師達は殆ど100%の患者に何かしらの処方を行っているが (5日分が標準)、現実に即した無駄のない処方箋を徹底していく必要がある。また、本当に、診療、 診察が必要である患者とそうでない患者をいかにスクリーニングしていくか、も重要な課題である。 更には、巡回診療には時間的制限があり(特にチェックポイントを越えなければならない場合)、 遠路はるばる徒歩で来た患者さんを診察している時間が無いこともある。また、昼食を取る時間も場所 も無く、朝から働きづめの医師の体力的な限界もあり、来所する患者全員を受け入れる事が出来ない事 態も発生することがしばしばある。このような場合、どこで線を引くか、という判断が非常に難しく、 胸の痛む決断になる。スタッフサイドの問題では、現場にトイレ施設がなく、暑くても水分を控えな ければならないという環境も何とか改善したい点である。また、スタッフの安全確保の面から言えば、 (キリノッチと同様)巡回診療地での通信手段の確保が重要である。


*寺垣調整員の感想
巡回診療を通して接する患者さんたちとの交流はとても楽しく、また意義を感じる活動です。 カタコトのタミール語で話しかけると、一生懸命答えて下さったり、体温や血圧を測ると、とても嬉し そうに笑っていたり、どんなに疲れていても、毎日、患者さんたちからパワーを貰っている気分になり ます。また地元のスタッフ達も、AMDAの巡回診療の活動を通じて人々を助けられる仕事に携われる事に 喜びを感じてくれており、様々なトラブル(車酔い、昼食抜き、車の故障、等々)にも柔軟に対応して 毎日頑張ってくれています。



2.口腔外科手術ミッション
ヴァヴニアのGeneral Hospitalにおいて、4月25日より約3週間、AFOC(アジア対口腔ガン協会─鶴見 大学に拠点を置くNPO)の口腔外科医による手術ミッションが実施された。このミッションは、口腔外科 医の存在しないスリランカ北部において、戦争障害、口腔ガン、口唇口蓋裂などの症状を持つ患者に対 する手術、地元医療スタッフのトレーニング等を目的に、今後数回に渡り実施される予定であり、4月 からのミッションはその第一回目として約60名の患者のスクリーニング、17 例の手術が行われた。 本ミッションの実施にあたり、キャンディにあるペラデニヤ大学の口腔外科の人材、医療器材、難しい 症状を持つ患者の移動などの協力を得、またGeneral Hospitalの担当スタッフの積極的な受け入れ態勢 もあり、3者間(AFOC-AMDA、ヴァヴニアGeneral Hospital、ペラデニヤ大学)の信頼関係、連携体制 が確立され、次回(8月実施予定)ミッションでは更に多くの症例に対応できる見込みである。


*寺垣調整員の感想
ヴァヴニアの病院では驚いたことに、患者さんが自ら手術室へ歩いて入ってきて、手術台に横になり ます。特に小さな子供達は当然、不安な表情だったり、大泣きしたり、手術現場になれていない私には とてもいたたまれない気持ちになる環境です。しかしながら、顔面に障害を持つ患者さんの手術前後の 違いは私の眼にも明らかであり、手術後に病室を訪れると、綺麗な顔になった患者さんたちがにっこり 笑いかけてくれたり、退院後にたまたま私を見かけて走り寄ってきてくれる少女がいたり、思わず涙が 出てしまう事が何度かありました。また、私達の巡回診療先で見つけた少女の母親に、本ミッションの 事を知らせたら、翌日3時間かけてバイクに乗ってヴァヴニアの病院までやって来ました。スクリーニ ングの結果、この少女は眼にも障害があることが判明し、ペラデニヤ大学で治療、手術を受けることに なりました。通信手段を持たないこの少女のような患者さんは、私達が巡回診療で出会わなければ、 もしかしたらずっとそのままの症状で成長していたかもしれません。たった一人でも、私達の活動が 橋渡しになって小さな貢献が出来たと思うと、やはり頑張る甲斐のある仕事だと実感させられます。

右端 井上純子看護士


−キリノッチ地域−
1. キリノッチ概要

スリランカ北部キリノッチ:
  ・国土面積: 1237.11平方km
  ・水面面積: 44.30平方km
  ・位  置: 北部、ジャフナ(Jaffna)
         東南、ムラティブ(Mullativu)
         西南、マンナー(Mannar)
  ・行政機関:
         1)Karachchi 18847家族、75807人、90村
         2)Kandawalai 7479家族、30435人、98村
         3)Poonakary 9728家族、39691人、93村
         4)Pachchilaipallai 2138家族、7788人、43村
         95のGrama Officerで統括されている。
  ・商  業: 96年のSath JeyaというSecurity Operationに伴い多くの国
         内避難民と共に商業は散在してしまったが、出入港禁止の
         解除やA9道路の開通により日に日に活発化している。
  ・農  業: Paddy(籾つきの米)の耕作が主で、人口の80%がこれに
         従事している。
  ・気  候: 雨季(9月〜12月)、乾季(6月〜8月)である。平均気温は25
         度〜30度。
  ・教  育: 96の教育機関があり、35805人の生徒がいる。教員の数は
         670名。
  ・人  口: 2002年末には15万3721名。今後も増加の傾向にある。
         1平方Km当たり124名となる。
  ・土地利用: 75%が森林に覆われ、全体の60%が未開のままである。
         18.55%の土地が耕作可能である。耕作地の70%以上で
         Paddy作が行われており、その他にはココナッツやマンゴ、
         バナナ、ライムの耕作が見られる。
  ・漁  業: 第二の職業が漁業である。東部は28マイル、西部には52
         マイルの海岸に沿い30の漁業村が点在し盛んである。

2.キリノッチにおける人口統計


     Kilinochchi  Karachchi  Kandawalai Poonakary  Pallai
 1997   186,271   89,848    34,836    50,008    11,579
 1998   159,166   73,422    32,717    46,156    6,871
 1999   156,428   68,396    32,587    48,382    7,063
 2000   155,015   70,077    33,561    44,420    6,957
 2001   148,052   69,188    34,620    44,244
 2002   153,721   75,807    30,435    39,691    7,788
  *Konavil:  1,344家族、5,359人 (月曜日の巡回診療地)
  *Malaiyalapuram:   200家族、  822人 (火曜日の巡回診療地)
  *Karuppaddamurippu: 300家族   (木曜日の巡回診療地)




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