スリランカ

スリランカ医療和平プロジェクト

AMDA理事長 菅波 茂
AMDA Journal 2003年 3月号より掲載

スリランカ政府とタミールの虎との間に約20年間続いた内戦に停戦が成立した。ノルウェー政府が仲介の役割を果たしてきた。復興への支援は日本政府が主役である。日本政府代表は明石康氏である。明石康氏は「岡山発国際貢献を考える会」の会長でもある。

1月中旬。明石氏から電話をいただいた。昨日、スリランカから帰国をした。日本がスリランカ和平に大きな役割を果たすことになる。AMDAが北部・東部・南部の3地域に巡回診療を実施して日本の存在をアピールして欲しい。岡山発国際貢献の視点も加味して欲しい」と。 国際社会が米国によるイラク攻撃開始や北朝鮮と米国との核の神経戦に目を見張り耳をそばだてている時に、日本イニシアチブのスリランカ和平が静かに進行している。この意義ある和平プロセスに参加させていただけることはAMDAにとって光栄の至りである。

AMDAのスリランカ医療和平プロジェクト参加の目的は巡回診療プロジェクトによる「国民意識形成」である。日本は1600年の関ヶ原の戦いで内戦に終止符を打った。徳川幕府300年の統治下に「日本人としての国民意識」を形成した。 今こそスリランカのシンハラ、タミルそしてイスラムの3グループの内戦が名実と共に終わりを迎え「国民意識形成」へ真剣に取り組む時期である。この国民意識形成に寄与する智慧が巡回診療プロジェクトに求められている。如何なる巡回診療プロジェクトを創り上げるかが課題である。

2月4日。私、濱田祐子氏そして石沢睦夫氏の3名がスリランカの首都であるコロンボへ出発した。目的は2月から4月の3ヶ月間で北部・東部・南部の3地域における初動体制の確立と北部地区での巡回診療の開始である。5月以降は東部と南部地域でも巡回診療の開始予定である。 まずは日本政府、スリランカ政府そしてタミールの虎との緊密な連携が不可欠であり、巡回診療体制が確立すれば、日本人を主力としたAMDA多国籍医師団の活動開始である。

60〜80万人といわれている国内避難民のみならず医療の恩恵に被れない人達が対象である。呼吸器疾患、消化器疾患、皮膚疾患、眼科疾患そして小外科疾患などが考えられる。治療効果のわかりやすい形成外科チームの派遣は注目されるはずである。

ちなみに、濱田祐子氏は2000年から3年間にわたってコソボ紛争におけるAMDAのプロジェクトを成功に導いてくれた。貴重な経験である。今回は現地統括責任者として初動体制の立ち上げに全力をあげて取り組んでくれる。石沢氏は元陸上自衛隊佐官級の危機管理の専門家である。 1999年のインドネシア・西ティモールにおける東ティモール難民救援プロジェクトにはAMDAのコーディネーターとして、2000年のスマトラ大地震援プロジェクトに国際緊急援助隊のコーディネーターとして貢献している。濱田氏と共に北部地区での巡回診療の開始と3地区における診療拠点の準備を進めてくれる予定である。優れて良きコンビである。

スリランカ保健省での話し合い
スリランカ保健省での話し合い

スリランカ保健省の関係者と話し合って、巡回診療プロジェクトの構成を3つのプログラムで組み上げた。可能な限り多くのスリランカの人達に接するのが目的である。

  1. ヘルスセンターにおける巡回診療と小学校における保健教育の推進
  2. 国内避難民への巡回診療(数千人単位で10ヶ所)
  3. 口蓋破裂や戦争顔面障害の形成外科巡回診療(タミールの虎からの熱望)

ヘルスセンターは7〜10万人に1ヶ所設置、1つの小学校の生徒数は800〜1000人である。月に15日間の実施。国内避難民への診療は月に5日間の実施。形成外科診療は3ヶ月毎に1ヶ月間の実施予定である。裨益人口の大きさに注目していただきたい。

巡回診療に関与する2つのことが「国民意識形成」に大きな貢献をすることができる。

  1. 巡回診療新聞の発行。月1回。北部・東部・南部地区の3地区で5万部。
  2. 巡回診療会議。北部・東部・南部地区でヘルスセンターと学校保健関係者の合同会議を月に1回。そして3地区合同の両者の全国会議を年に2回。
スリランカ医療事情調査のため病院視察をする筆者(右)
スリランカ医療事情調査のため
病院視察をする筆者(右)

上記の新聞および3地区合同全国会議において明石日本政府代表、大塚大使そして杉原JICA所長には「国民意識形成」の重要性について大いに啓蒙活動をしていただければと希望している。健康推進への目標と想いが「国民意識形成」への核心である。

AMDAはこのプロジェクトを「スリランカ医療和平プロジェクト」と位置付けている。「医療和平」とはAMDAが提唱したコンセプト。紛争当事者の双方に中立人道支援の立場で国際医療協力を行い、紛争の緩和を図り和平プロセスに寄与する試み。 過去の例として、コソボ紛争で対立するアルバニア系とセルビア系双方への医療支援、アフガニスタンの北部同盟とタリバンの双方と合意したワクチン停戦がある。今回はAMDAにとって第3番目の医療和平プロジェクトである。

AMDAスリランカ支部は5年前に結成された。中国JICAセンターとAMDAによるNGO/NPO能力形成訓練プログラムがご縁になっている。2月7日。スリランカ支部が私達の歓迎会を開催してくれた。巡回診療に対する全面協力を示してくれた。南部地区での巡回診療への協力をお願いした。AMDA国際ネットワークの存在の有難さを実感した。

「国民参加型国際貢献」とは政府、地方自治体、企業、NGOそして国民の5者連携である。スリランカ医療和平プロジェクトは「岡山発の国際貢献」そして「国民参加型国際貢献」のモデルとしても最適である。「救う命があればどこへでも行く」のスローガンのもとに全力を尽くしたいと思っている。ご支援をお願い申し上げたい。




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