ネパール

ネパール子供病院での臨時産婦人科医

倉敷成人病センター名誉院長 吉岡 保
AMDA Journal 2004年 1月号より掲載

2003年1月4日から11日間、AMDAネパールスタディツアーに参加しました。 その時に子ども病院も勿論訪問したのですが、訪問時間が短期間であったために、院長のビーマルさんと「 出来たら1年以内に再び訪問して、院長の希望している膣式の手術と超音波診断の手伝いをしましょう」と 約束しました。その時は厳寒の冬で、手術室はヒーターが壊れて暖房が効かず、患者さんに毛布を掛けて 開腹手術をしたのを手伝いましたが、寒すぎて風邪をひいてしまいました。

3月末日で倉敷成人病センターを退職したので、時間がとれた6月に暑いの は承知のうえで子ども病院行きを決心しました。出発にあたり、AMDA菅波代表と共に現地で何が出来るのか を討論して、現地の人に役立つことをしっかりと植付けて来ようと思いました。そのため約2週間かけて手術 をマスターしてもらうことにしました。長い間病院勤務をすることが出来るように、ネパール政府から 医師免許をもらう必要があり、それにあわせて6月8 日、関西国際空港を出発しました。カトマンズに一泊 して、翌9日(月曜日)午後1時より厚生省の役員6名による面接を受けました。病院で働く目的とか、手術 の経験など約20分間程度の面接で,ネパール医師免許をもらいました。

11日にネパール子ども病院に着き、ビーマル院長らの歓迎を受けました。 産婦人科の医師は院長以下、ベニータ、アキレス、ラキシムさんの4名でした。病院の産科関係の器具は1台 の分娩台、バキューム、酸素吸入器くらいのものです。胎児心音を聴くためのドプラーや分娩監視装置など はありませんでした。1月の訪問のときに持参したトーイツの中古のドプラーは活躍しておりました。今回は トーイツの社長にお願いして、真新しい分娩監視装置2台とアトム社の中古ドプラーを持参しました。現在 ネパールの病院で分娩監視装置をもった所はありません。唯一古いものがカトマンズのTeaching  Hospital にありましたが、動いておりませんでした。この器具は子ども病院のスタッフは見たこともないものでした。 ですからこの器具の使用法は丁度私と一緒に神戸から来られていた助産婦の紺谷さんと看護師の水谷さんが 指導してくれました。

妊娠中毒症とくに子癇発作で入院している妊婦さんのコントロールには大 きな力を発揮してくれています。日本では子癇など診たこともない産婦人科医や助産師が多いのですが、 ここネパールでは2日に1人位の割合で入院してきています。ここは産婦人科関係の病気はみんな揃う病気の デパートと言っても過言ではないでしょう。ネパール全土の90%が自宅分娩です。危険を感じたら病院に搬 送されます。

この産婦人科で一番高価なものは日本製の超音波エコーですが、20年位前 のもので、「取扱いマニュアル」がないために、これを使用出来るのは他の病院に勤めているレントゲン科 の一人の医師だけで、ここの産婦人科医は使用できないといった有様でした。ビーマル院長は自分達でこの エコーを使いこなすことを強く希望されました。私は見たことのない機械だったので、日本に電話やFAXで 会社から取扱いマニュアルを送ってもらうと共に、それを使用している医師と一緒に読影法を勉強しました。 彼は腹部からの検査しかしたことがなく、膣の中に入れてみる方法の方が婦人科の病気の検査に役立つとい うことが解ってくれるのに2週間掛かりました。何も出来なかったビーマル院長も膣の方から診察する方法 をマスターしてくれました。

手術に関しては、手術器具の大部分は開院当時に用意したものばかりでした。 その間ハサミなども研いだこともなく、修理することも出来ずに使用しており、切れないものが多くありま した。コッヘルも歯が擦り切れて、充分に掴めないものもかなりありました。ビーマル院長がマスターした い膣式手術をするためには、これらのものでは恐ろしくて手術が出来ないということは出発前から知ってお りましたので、絶対にはずれないコッヘルや特別に設計された器具やハサミなどはこちらから持参しました。 縫う糸も丈夫な糸を持参しました。

最初にビーマル院長と一緒に手術したのは子宮脱の患者さんでした。彼の手 術の腕は確かで上手だと直ぐに感じられましたので、助手として一緒に手術をしてゆけば、彼も直ぐに私が 教えたい膣の方から子宮をとる方法(開腹することなく子宮筋腫をとり除く手術、膣式子宮単純全摘術: V.T.)をマスター出来ると思いました。

3名の子宮脱の手術を終えた後、彼の希望するV.T.を14日(土曜日)にする ことを決めました。ビーマル院長や近隣の医師達はまだこのV.T.を見たことのない手術だと説明してくれました。 本当にネパールで初めての手術を我々がするのだと興奮気味に話して、多くの医師が集まってくれました。 メディア関係も来ていました。午後2時より手術を開始し、約1時間で終了しました。思ったとおりの出来ば えだったと思いました。V.T.は2名だけでしたが、子宮脱の患者も含めて15名の手術を行いましたが、何一 つトラブルもなく、手術を受けた方々は経過順調に退院されたことを非常に嬉しく思っております。

ブトワールで過ごした2週間は毎日のように停電があり、ホテルに帰っても 扇風機しかないために停電すると蒸し風呂のようになって団扇で風をおこす有様でした。せめて病院では自 家発電機を備え付けて、手術場や分娩室、 ICUルームなどに停電が無いようにして頂きたいなあというのが 私の唯一の希望です。

私は倉敷東ロータリークラブの会員でしたので、院長の属するブトワール ダウンタウンの例会に出席できたのも楽しい思い出となりました。今後も子ども病院に役立つことを続けて ゆきたいと思っております。




緊急救援活動

アメリカ

アンゴラ

イラク

インドネシア

ウガンダ

カンボジア

グアテマラ

ケニア

コソボ

ザンビア

ジブチ

スーダン

スリランカ

ネパール

パキスタン

バングラデシュ

フイリピン

ベトナム

ペルー

ボリビア

ホンジュラス

ミャンマー

ルワンダ

ASMP 特集

防災訓練

スタディツアー

国際協力ひろば