ネパール

AMDA神奈川の支援─関東のAMDAの灯火─
AMDA神奈川支部 代表 小林米幸
松本哲雄・篠原真理子・伊藤恵子
AMDA Journal 2002年 1月号より掲載

 なにやら大袈裟なタイトルですが、神奈川支部の生い立ちとその活動について報告いたします。神奈川支部は97年10月25日に参加者20名で設立集会を開催し、その活動をスタートさせました。

 会員資格は原則としてAMDAの会員であり、かつ神奈川県に居住している、または県内に勤務していることです。ちなみに2000年10月現在の県内の会員は90名でした。関東にはほかに支部がないことから東京都や埼玉県に居住する会員が活動に参加を希望する場合もあり、いっしょに活動しています。神奈川支部の会員としての会費はありません。また本部からの活動資金提供も仰いでおりません。現状は事務局も専任の事務局員もおらず、活動の中心メンバーの殆どが仕事の片手間に参加している状態であり、連絡所を医療法人社団小林国際クリニック(電話046- 263-1380、FAX046-263-0919) に置き、インターネットメールによる連絡網を通じて連絡を取り合っています。インターネットメールをお使いになっていない会員にはご不便をかけていますが、お許しいただきたいと思っています。


 これまでの主な活動は医療通訳養成講座、ネパールダマックのAMDA病院への各種援助(教科書を含む図書の寄贈、学生に対する奨学金贈呈、ヒロモリ奨学金の運営など)、横浜国際協力祭りへの参加、神奈川県海外技術研修員への候補者推薦です。以下個別にお話いたします。
AMDA病院付属医療養成学校新入生のオリエンテーション


1) 医療通訳養成講座  小林米幸

 外国人の多い神奈川県においては医療通訳のニーズが高いと推察されます。そこで医療従事者である会員の方に講師をお願いし、会員の勤務する医療機関を会場として一ヶ月に一回、土曜または日曜に年9回を目安に開催しました。マスコミ、さまざまなボランティア機関などにお知らせして受講者を募り、一回おひとり500円の受講料をいただきました。この収入はすべて神奈川支部の活動資金として寄付していただきました。この講座の開催により会員同士が顔を会わす機会が多くなり、会員間の親近感が増したのが副産物でした。98年より3年続けました。一時は朝日新聞に掲載されたこともあり30人を超える受講者がいましたが、同じ講座を3年続けたこともあり、現在は休止中です。たとえば99年の講座内容は次の通りです。


・総論 医療通訳のあり方、外国人をめぐる医療問題
            小林米幸 (小林国際クリニック)
・内科領域   田宮菜奈子先生(さくら保健プラザ)
・耳鼻科領域  早川浩市先生 (耳鼻咽喉科早川医院)
・保健行政、予防接種     中沢由江先生 (横浜市瀬谷保健所 保健婦)
・産婦人科領域  田宮親先生 (田宮クリニック)
・薬剤と服薬指導 篠原真理子 (薬剤師)
・眼科領域  加藤道子先生 (鉢の木眼科)
・外科領域  小林米幸(小林国際クリニック)
・介護保険について   中沢由江先生(横浜市瀬谷保健所保健婦)
・産婦人科領域  横浜地域 原田慶堂先生(伊勢佐木クリニック)


2)ヒロモリ奨学金の紹介   松本 哲雄

 1997年12月1日、支部の設立総会で一つの提案がありました。その主旨は「ネパール・ダマックのAMDA病院周辺にはブータン難民が多く、付属医療学校に入学する子女に奨学金を送ることが出来ないか」と言うものでした。そこで奨学金の原資についてはドナーを募ってこれに充当することにして、次のような内容などを逐次現地に照会しました。

 最初に私達は、ネパールの教育制度(修業年限など)や医療学校には看護課程以外にどのようなコースがあるのかを知る必要がありました。次に奨学金の対象を入試の最優秀者にするのか、期末試験で選ぶのか(難民には様々な奨学金制度があることが分かり、最終的には対象者を限定しないことにしました)。家庭の経済状態はどうか。奨学金はいくらが適当か、何人に贈るのか。授与式を行うのか。その式に神奈川支部のスタッフが列席すべきか等など、話し合うたびに次々と新しい問題が出てきました。これらの最終回答を得て、結論が出たのは新学期の8月半ば。そこで9月 24日の授与式に向け、列席する2人を中心にして準備を開始しました。(式の詳細については、ジャーナル・98年12 月号をご覧下さい)このような経緯で第1回目の奨学金を贈呈しましたが、その反省から『かながわライブラリー』(原資は国際協力まつりの売上)が生まれ、そして後続『ヒロモリ奨学金』の下地になりました。

3) ヒロモリ奨学金       小林米幸

 本奨学金は群馬県T市在住の森ヒロ様からの寄付金によるものです。昨年医療通訳養成講座が朝日新聞に掲載された後に、女性の声で「お金をお送りしたら発展途上国の女性の地位向上のために使っていただけますか?」という電話がありました。この方が森ヒロ様です。その後、ご自身のお病気で半年ばかりあいてしまいましたが再びお電話があり、二回に分けて150万という大金が神奈川支部の口座に振り込まれてきました。森様は長く高校の教員をなさっていて、そのことが今回の行動につながっているのではないかと推察しています。森様の意思を最大生かすにはどのようにしたらよいのか、いろいろと考えた末にダマックの AMDA病院付属の看護コース、検査技師コースの学生への奨学金制度を設立することにしました。ネパールでは カースト制度のために人物、成績が優秀であっても進学をあきらめる人が後を断ちません。カーストが低いということは貧困を意味するからです。ネパールでは看護学校、検査技師学校の入学試験は全国統一試験です。たとえばダマックの看護コースに入学を希望する人がこの統一試験を受けるとします。定員が30人で統一試験の合格者が40人いたとすると上位の成績から30人が入学を許可されます。ところが入学を許可されても授業料およそ年間3万6千円から4万(コースによって異なるので)が払えるめどが立たずに入学をあきらめる人がいます。多くはカーストの低い人たちです。これらの人の中から年間2名に奨学金として授業料を全額援助しようというものです。


 彼女たちが手に職をつけることにより現在の生活から抜け出せることができるならば目的は達せられます。本奨学金はネパールの銀行に資金を預けその利子で運用、日本人の現地駐在員を含めた複数で管理し、奨学金対象者の選定にあたっても公平さをとことん追求するつもりでおります。本年はまだ準備不足の中、あわただしくスタートしましたが来年以降は広く地域の中に本奨学金の存在を知らしめ、学校の先生方にもお話をして「優秀なのに貧困のために試験を受けることさえあきらめている女性」を掘り起こしていきたいと思っています。森ヒロ様のご意志に感謝いたすとともにお病気のご回復を願うものです。


4)神奈川ライブラリー      伊藤 恵子

 ダマック病院は、1996年に日本からの援助により、ネパールの准看護婦・保健婦&士・臨床検査助手など、医療従事者の人材育成を目的とした「AMDA病院付属医療養成学校」を開校しました。(AMDA Journal 1997年12月号、2000年9月号参照)しかし、学校に不可欠な学生の教科書や医学専門書が不足している状況でした。そこで、神奈川支部が行ってきた“医療養成通訳講座”の参加費、 “横浜国際協力まつり”のバザー売上金や一般寄付金の中から40万円で、学校側の希望を参考にした70書籍850冊と本棚を現地で購入して、2000年3月に「神奈川ライブラリー」を開館したのです。(AMDA Journal 2000年6,7月号)


[書籍リストの一部]
  Mental Health(Nepal) 20冊
  Fundamentals of Nursing 40冊
  General Surgery 28冊
  Community Health 60冊
  Clinical Medicine 40冊
  Anatomy & Physiology 22冊
  Textbook of midwifery 20冊


 図書の管理は、書籍の種類により、貸し出しと図書館内での閲覧のみとの2種類に分けて学生写真入り貸し出しカードで利用できるようになっています。(AMDA Journal 2001年6月号)クラスでは、講義を聞く事に集中し、その復習及び補習のために「神奈川ライブラリー」を利用していると学生が話してくれました。また、寄贈した書籍の中には、講師の先生方の参考書としても利用されており、授業内容の向上にも役立っていると大変好評でした。今後も、「神奈川ライブラリー」が、多くの学生達を育て、ネパール各地の人々の健康に貢献していくことを、私達は期待しています。


5)横浜国際協力まつり    篠原真理子

 横浜国際協力まつりは同実行委員会と横浜市国際交流協会の主催で例年10月末から11月初めの間の土日の2日間、横浜山下公園前の産業貿易センタービルにて行われています。去年は90余の国際協力NGOや国際機関、学校での途上国支援サークル等が参加し、シンポジウム、セミナー、各国料理、民芸品販売、舞踊・音楽ステージなどで盛況でした。AMDA神奈川支部では1998年から参加を始め、去年で4回目となりました。毎年バザーを行い、5〜 6万円の売上があり、支部の活動に役立っています。


 AMDAやAMDA神奈川支部の活動を広めることも目的としており、パネル展示を行い興味を持つ方に説明をしたり、来場者や他NGOとの交流も楽しんでいます。また、1998年にはAMDA欧州担当顧問の小川秀樹さんよりコソボ難民支援についてのセミナーをして頂きました。今までの皆様のご協力に感謝すると共に、これからのご協力、ご参加もお願いいたします。


6)神奈川県海外技術研修員へ推薦   小林米幸

 神奈川県は地域からの国際協力の一貫として、昭和47 年より開発途上地域からの研修生を1年の期限で受け入れています。平成11年度からは県内のNGOにも推薦の依頼が来るようになりました。AMDA神奈川支部では平成12 年度はタイ王国バンコックジェネラルホスピタルのパゥイニー・ホーユー看護婦、13年度は同病院のパンカエ看護婦を推薦し、神奈川県立がんセンターやけいゆう病院で受け入れていただいています。昨年は20人の研修生のうち、NGOから推薦されて受け入れられたのはパウィニー看護婦ただひとりでした。


 このように、関東のAMDAの灯火は地道に、弛まなく、灯り続けているのは多くの方々からの温かいご協力とご支援のおかげです。この美しい灯火がいつまでもいつまでも灯りつづけるよう、見守っていただき、またご協力をいただければ幸いです。

ヒロモリ奨学金

 ネパール東部に位置するダマックで、AMDAは1996年よりAMDA病院付属医療養成学校においてANM(准看護婦)、CMA(村落保健員)、Lab Assistant(検査技師アシスタント)の育成を行っています。毎年、ANM40名(コース期間18ヶ月)、CMA40名(15ヶ月)、ラボアシスタント20名(15ヶ月)の計100名の生徒を受け入れ、12名の講師陣か、指導にあたっています。彼らの最終目標はコース終了後の国家試験に合格し、一人前の医療従事者になることです。教育機材の満足に揃っていない教室で、AMDA神奈川支部の協力により作られた図書館の本を使い、多く生徒が毎日勉強に、励んでいます。

 就業機会は少ないのですが、ANMやCMAなどの資格があれば、仕事を持てるチャンスが増えることもあり、こういった資格は人気があります。今年8月の同保健人材育成センターの入学試験にも171名の応募がありました。しかし、賢く熱意のある生徒の中には、家庭の社会的・経済的事情で勉学を続ける事の出来ない子どももいます。
 このような状況のもと、群馬県にお住まいの森ヒロ氏より、発展途上国の女性を含む社会的弱者の地位向上に役立てて欲しいといただいた150万円の寄付金から、「ヒロモリ奨学金」が生まれました。






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