ネパール

AMDAネパール子ども病院
─4年目に入って─

AMDAネパール調整員 岸田 典子
AMDA Journal 2002年 1月号より掲載

1.子ども病院の現状

 子ども病院は、1998年11月に日本人3名を含む9人の医師・看護婦らのもと、外来のサービスを始めました。その後、1999年に分娩サービス、24時間急患対応を始め、2001年の9月には8名の医師、16名の看護婦を含む、約80名のスタッフのもと、4,758名の外来患者、1,089名の急患患者、274名の入院患者を受け入れ、167人の赤ちゃん誕生をサポートしました。


 開院当初の目的、「ネパール中西部において、小児及び周産期医療の専門病院として、貧富の差やカーストに関係なく、必要とする人に、必要な医療サービスを提供する。」から逸れる事なく、3年間試行錯誤を続けながら努力をした結果が、この急速な成長であると考えられます。遠方のダンやロルパ等から来られる患者さんが少なくなく、ネパールの中西部における子ども病院の知名度が上がってきた事がうかがわれます。

 喜ばしい反面、予想以上の成長に現状のマンパワーや医療設備がついていけない事もあります。例えば、外来では、1998年12月の患者が1,434名だった事と比べると、現在、毎月3倍以上の外来患者が子ども病院を訪れています。分娩のペースは、当初、14ヶ月で1,000件だったものが、現在は7ヶ月で1,000件、2倍のスピードです。そして、小児病棟における平均入院日数は、4.44日(今年上半期6ヶ月)から、5.04日(下半期6ヶ月)へと増加しており、これは、子ども病院がリファーラルセンターとして、地域に認識され、患者がヘルスポスト等から転送されてくるようになったため、完治に時間が掛かる重症のケースが増えた結果だと考えられます。

 これらの結果は子ども病院の成長の成果でありますが、また同時に、新しい課題でもあります。

2.現状の課題に対する取り組み

 増加する患者さんに対応する為、また、求められる医療サービスを提供する為、子ども病院ではA)医療施設拡張、B)スタッフ増員、教育、C)三次医療設備充実の3つの事が必要となりました。

A) 医療施設の拡張

 既存の産科病棟には12床のベットがあります。しかしこれでは、出産日と出産後1日、合計2日間患者さんが入院されると考えると、1日6名以上の出産が2日間続いてなされる場合には、いつもベットが足りない状況です。患者さんに対応する為、廊下にもベットを1床置き、それでも足りない場合は、ベットが空くまで患者さんに床に敷いたマットで待ってもらう事もしばしばです。スペースがない事、及び、文化的な事から、産科患者さんは平均1.8日で退院していきますが、将来的には、スペース・スタッフを充実し、後1日長く病院に留まっていただき、赤ちゃんケア(例えば、お風呂の入れ方とか、母乳の与え方とか、定期検診の重要性とか)の仕方をお母さんに教える事が出来ればさらに地域の為になるのではないかとの希望もあります。

 小児病棟ではベット稼動率が90%以上で、いつも満床状態ですが、患者さんの中には、長期入院する子どもや隔離の必要な子どももいます。満床のため、ベットが空くまで急患室で2-3日過ごす子どももいます。この状況下、現在の仕切のない大部屋(14床)でなく、仕切もあり、もう少し広い大部屋が必要となっていました。

 そのため、故篠原医師ご家族、外務省、その他多くの方々のご支援を受け、2001年に篠原記念小児病棟の建設を行いました。この結果、2002年からは産婦人科に24床、小児科に24床のベットを備える事が可能となる予定です。

B) スタッフ増員、教育

 ネパールにおいて、首都カトマンズと地方の医療格差は非常に大きいです。人口の10%の暮らすカトマンズに、全ての重要な医療機関、及び、半数以上の医療従事者が集中しているのが現状です。政府は地方の病院に医師を送り、ヘルスポストに保健士/婦(ヘルスアシスタント)を送る努力をしているものの、小児科医や麻酔医のいない地方病院、保健士/婦のいないヘルスポストは珍しくありません。政府より辞令がでても、情報やお金の集中するカトマンズでの便利な生活を捨て、医療過疎地で数年、貢献しようという医療従事者は非常に少ないのです。また、ネパールの医師人口比率は日本の10分の1と言われ、総人口に対し医師は非常に少ない為、たとえ政府の仕事を辞めたとしても、医師の働き口は沢山あります。このような中、カトマンズより200km離れたブトワールに医療従事者を呼び寄せることは難しい時もあります。幸い、開設以来3年間、多くの困難はあったものの、子ども病院は、良い医療従事者に恵まれてきたといえます。医療従事者に限らず、全てのスタッフが患者さんの為に、子ども病院の為にと時にはオーバーワークといえる状況を我慢し、努力してきたからこそ、子ども病院の今の姿があるといえます。2002年、子ども病院では、新病棟の完成により、ベット数が現在の倍に増え、また、重症の患者さんを助ける為の集中治療室が備わる予定です。それに対応する為、スタッフの増員はもちろんですが、高度医療サービスの為のスキルアップも必要となり、質量共にレベルアップが望まれます。また、ネパール全体としていえることかもしれませんが、看護に対して、現状では、注射を打つ、薬を与えるなど、医師の補助という認識しかなく、患者さんをお世話するという看護ケアの部分で、まだまだ未熟な面があり、そういった部分も将来的に改善出来ればと思います。しかし、これらを実行するには、子ども病院がスタッフにとって、やりがいのある、魅力的な仕事場である必要があります。そのために、公平で明確なシステムを作ると共に、毎日新聞社会事業団や関西エグゼクティブウーマンの会のサポートを受け建設され、12月末に2階が完成するボランティアハウスの一室に図書館を設けるなど、カトマンズに居なくとも、ある程度の新しい医療情報が得られる環境をつくりたいと考えています。また、今後も継続して、日本人医療従事者を派遣し、スタッフへの医療技術移転、看護指導等を行っていく予定です。人と人による、あるいは、物資の支援による交流から、医療サービスの向上のみならず、子ども病院が日本とネパールの友好の象徴であること、子ども病院が大切な使命を持っていることをスタッフが理解することもやりがいにつながっていけばと希望します。


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