ミャンマー

ミャンマー国コーカン特別地区
での活動について

AMDAミャンマー 岡崎 裕之

    
シャオカイ村の小学校で出席率の調査

コーカン地区はミャンマーの首都ヤンゴンからマンダレーまで飛行機で1 時間半、そこから東北東に車で12時間ほど走った所に位置する特 別行政区である。ミャンマー国内でありながら、住民使用言語、通貨、時間はほとんど中国のそれに則っており、ミャンマー語を母国語と する者はごく少数である。AMDAの現地スタッフの半数ほどは中国語を話すが、そうでない現地スタッフにとっては「異国の地」と感じ、遠 方に家族を残して「単身赴任」している者も多い。その点では私達日本人と状況はそう変わらない。また「特別区」という名前が示すとお り政治的に微妙な地域であり、旅行者は言うにおよばず、我々プロジェクトを実施する者でも滞在許可証を申請・取得しないと容易に訪れ る事ができない地域でもある。
 このようなコーカン地区で、AMDAは2004年7月より各種事業を実施している。まずは、各事業内容について簡単に述べてみたい。

<貧困農村復興支援事業>

ケシ栽培禁止に伴う現金収入の激減・深刻な食糧不足を懸念し、2004年 7月より事業を実施している。事業運営費の大半は日本国外務省の ご支援を、現地住民に配布する米や一部事業運営費に関してはWFP(World Food Program 世界食糧計画)のご支援をいただいている。また学 校建設・修復については神戸甲南ライオンズクラブから、水施設建設に関してはオーストラリア大使館からも一部ご支援をいただいている。
 事業の基本は「困窮している住民に米を配給すること」だが、ただ米を配るだけではない。学校生徒への配給、通称School Feedingでは 就学率・出席率の向上を目的としており、事実、昨年から今年にかけて出席率は随分向上している。今年度からは保健衛生教育も実施する 予定である。フードフォーワークは村のインフラ整備を基本的に彼ら自身の手によって実施してもらい、その労働対価として米を支払うも のである。農閑期の貴重な収入源となっている上に、橋を建設したり水施設を整備したり、と村全体の利便性・機能向上にも貢献している。
 今年度は「フードフォートレーニング」なるものを新たに実施する。これは、住民にとって今後有益であると思われるトレーニングを実 施し、出席者に対して米を支払うものであり、上記の各種インフラ整備の技術指導や基礎保健衛生教育を実施予定である。「米を配る」と いう活動を恒久的に続けるわけにはいかないので、村の基礎体力の向上というテーマを常に考慮しなければならない。
 貧困家庭への食糧配給も行っているが、これは配給することのみならず、貧困家庭の選定および村での話し合いを通じて、村との良好な 関係を築くことも狙いとしている。

<ラオカイ病院医療器材支援事業>

コーカンの住民の中には、ミャンマー中央部に移動する許可証を持たない者も多く、彼らにとっては、コーカン地区内の病院の存在という のは大きな意味を持つ。AMDAは当病院に外科用器材を中心にした医療機材を搬入した。今後は器材の搬入によって病院機能がどのように変 わったのか、患者の数・患者の感想なども併せて調査していくことになる。
 ラオカイ病院はミャンマー政府の直轄であり、医師や看護師は基本的にミャンマー語しか話せない者が多く、中国語しか話せない多くの コーカン地区住民にとってそれが病院を敬遠しがちな理由になっているところもある。ただ単に器材を供与するだけでなく、病院側と密接 な連絡を取り、地域住民に病院の機能が強化された事を積極的にアピールして病院の利用をサポートする必要がある。

<プライマリーヘルスケア事業>

JICA支援のもと、昨年の10月より実施中。コーカン地区には7箇所の国境地域診療所があり、医療器材やバイクの供与、医療スタッフへの トレーニング等を実施して国境地域診療所の機能を強化することが目的のうちの一つである。基本的に、この7箇所の診療所は不便な地域 に居住する住民の健康をサポートすることになっている。ところが、ラオカイ病院同様にミャンマー政府の直轄であり、スタッフの多くが 現地語を話すことができず、住民と円滑に意思疎通を図ることが出来ないでいるため、患者の足も遠のきがちである。
 また、ミャンマー中央から遠く離れた地域であるため、好んでこの地に赴任する者は稀であり、再び中央に異動になる日を待ち望んでい る。
 国境地域診療所に供与した医療器材によって、機能自体は充実した。今後は、いかに診療所を現地住民にもっと利用してもらうか、それ によって診療所スタッフの勤労意欲がどのように変化していくか、が焦点となってくる。
 また、病院まで足を運ぶのも一苦労という住民のために、供与したモーターバイクで各村を定期的に巡回してもらい、住民の健康状態を 把握する「健康管理員」としての役目を果たして欲しいと考えているが、現状ではそこに到達するまではかなりの時間がかかるだろうと思 われる。そこで、まずは住民自身にもっと健康管理について知識を持ってもらうことから始めることにし、村からヘルスボランティアを選 んでもらい、彼らに基礎保健教育トレーニングをこれまで二度ほど実施した。今後は、彼らが村で中心となって、学んできた知識を他の住 民に伝授する役割を負ってもらうことになる。また、衛生問題についても取り組み、水施設の整備や衛生知識の普及などについてもあわせ て実施する。

事業内容について簡単に述べたが、これだけではイメージがまったく掴めない方も多いに違いない。以下、コーカン地区の特徴についても う少し詳しく説明したい。

    
水タンクの設置
<民族の壁・言葉の壁>

ミャンマーは多民族国家であり、私達日本人から見ると「ミャンマー人」という一括りの認識であっても、彼らにとっては当然そうではな い。ましてや、ミャンマー語が通じないコーカンの人々に対する通常一般のミャンマー人の感覚は私達の隣国人に対する感覚とそう大差な いのではないだろうか。コーカンの人々にとっても、中国の通貨と中国の言葉を使用していながら、自分達の地域がミャンマーに属する、 ということへの違和感は相当なものであろう。しかも、現状では中国の方がミャンマーより発展しているのである。        
 このような地域で活動する以上、現地語を理解するスタッフを雇用することは非常に重要である。しかし、私達とも意思の疎通を図らな ければならず、そうなるとミャンマー語・中国語・英語の3言語が必要になってくる。なおかつNGO等での業務経験がある人材、となると探 すのが難しい。建設技師や医師など、専門的知識を要する職種などは尚更である。
 そういうこともあって、村人との話し合いでは、ミャンマー人スタッフの話を中国語を話す別のスタッフが通訳する、といった光景はし ばしば普通に見られる。「伝言ゲーム」というものは、間を介せば介すほど意味がずれてくるものであるが、それと同じことがコーカン事 業でも時々発生している。ただ、この1年間スタッフはずっと村と関わり続けてきている。言葉がきちんと通じなくても、長い付き合いによ ってお互いを理解しあうということも当然あるだろうし、民族の壁・言語の壁があることを不便と感じるか、それとも、それらを乗り越え た先には新しい相互理解が待っている、と感じ取れるかどうかは、ひとえに個々人の力量にかかってくるのではないだろうか。多忙な業務 の間を縫って中国語の習得に勤しむスタッフもいる。
 不便さゆえに、PLAワークショップなどテクニカルなツールをつい頼りにしてしまうが、本来的には「誠意」とか「シンパシー」とか、 そういうあやふやなものが重要であったりするのは古今東西不変であり、「仏作って魂入れず」といった形式だけに頼る姿勢だけは避けた い、と思う。

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