ミャンマ−

ミャンマーの農村で思うこと


名門会 代表 片倉 武雄
AMDA Journal 2005年 1月号より掲載

ニャンウー(バガン)のAMDAオフィスで朝礼が終わると、車に医薬品を積みこみ、準備が手際よく始まる。
 今日は農村の巡回診療に同行することになった。オフィスから車で一時間ほどのところに目的の村がある。
 広い道路から脇道に入って行くが、かなりの悪路だ。途中牛車とすれ違う。牛車はゆったりとしたペース で無理なく進んでいる。このようなところには牛車の方が、理にかなっているように思えてくる。

命門会が縁あってAMDAの方々と行動をともにするようになったのは、2003年8月からであった。ミャンマーで は後進の小会をよく引き立てていただき、感謝の念にたえない。
 命門会はもともと日本の国内での活動が主で、その目的は
1. 正しい漢方医学知識の啓蒙。
2. 臨床家および講師の人材育成。
3. 近世までの医学の再評価。現代への適用。
であった。それがひょっとしたことから、ミャンマーで活動の場を得ることになったのである。
 そこでさらに、目的として
4. 世界各地にある伝統医学との交流。
5. 必要とされる人々・国々へのボランティア活動。
を付け加えることにした。今後もしばらくは、AMDAさんにご指導いただく日々が続く。
 今回は母子の健康に関するプロジェクトの一環として参加することになった。この8月から9月にかけては 木村剛裕鍼灸師が、対象地域の医療従事者や伝統医療師、有資格ボランティアを対象に、伝統医療における 様々な治療法を用いて、地域住民の健康理解を促進するための研修を実施した。補助医師、看護師といった 医療従事者には、「伝統医療と健康理解(指圧・灸・吸い玉・刺絡コース)」を、伝統医療師、補助医師ら には、「伝統医療と健康理解(指圧・灸・吸い玉コース)」を開催した。

さて、村へ着くと診療所に併設された集会所に母子が集っていて、ローカルスタッフによる5分ほどの寸劇を やっていた。内容は「下痢をしたら砂糖水を飲もう」と、いったものだ。出演者の方はなりきっていて、観 客の方も喜んでいる。このあと栄養給食を親子で食べる。食材を村人が買い出しに行き、自分たちで作るの だ。大鍋の中をのぞいてみると今日の献立はカレーだ。ちょっとつまんでみると結構うまい。子どもの体重 測定も定期的に行っており、母子で病気に負けない丈夫な体を作るのだ。費用は援助もしているが、原則的 に住民が負担するようになっている。無料というのは、依存心が強くなりその場限りで終わってしまい、ま た周囲の村とのバランスも崩れてしまってよくない。最初のうちは面倒くさがっていたが、指導と理解が実 を結び、段々自発的に行うようになってきた。トイレも作りそこで用便するように指導している。
 中国の古典に黄帝内経という医学書がある。その中に「上工は未病を治す」という言葉がある。一流の医 者は病気になる前に治す、つまりまず病気にならない体や環境をつくる、という意味である。現代流に言え ば、初期治療、環境衛生、栄養指導などにあたる。まさにこの村で行われていることである。 の中をのぞいてみると今日の献立はカレーだ。ちょっとつまんでみると結構うまい。子どもの体重測定も定 期的に行っており、母子で病気に負けない丈夫な体を作るのだ。費用は援助もしているが、原則的に住民が 負担するようになっている。無料というのは、依存心が強くなりその場限りで終わってしまい、また周囲の 村とのバランスも崩れてしまってよくない。最初のうちは面倒くさがっていたが、指導と理解が実を結び、 段々自発的に行うようになってきた。トイレも作りそこで用便するように指導している。
 このようにして住民に衛生教育や食事指導を根付かせようとしている。
 以前よりも住民は健康になったが、少なくなったとはいえ病気はある。そこで診療所が有効に機能する。 診療所の方もすべてローカルスタッフにより運営されている。ドクターが診察し、看護師が処置をして、薬 局で薬を受け取っていた。これも廉価ではあるが薬代は払う。

村へ向かう途中、牛車とすれ違った

お坊さんが住んでいる家があるというので訪ねてみた。我々をこころよく招き入れてくれた。好々爺といっ た感じで、質素な生活をしているがお元気そうである。村人の精神的主柱である。ピーというところでかな り偉いお坊さんに会ったことがあるが、芸能人の写真を飾って「みんな私の信者だ」と自慢していた。全く ありがたくない。こちらのお坊さんの方が御利益がありそうだ。出されたお茶とかき揚げを食べて、お礼を 述べてお別れした。ミャンマーではティータイムは大事なもので、おやつによくかき揚げや甘いものが出る 。日本人は長くいると太ると聞くが、ミャンマー人は太っていないのはなぜだろう。
 お坊さんの家の隣が小学校である。砂地の運動場と校舎がある。外でも授業をしている。
 生徒がチラチラこちらを見るので、手を振ったらみんなが手を振って返して、授業にならなくなってしま った。急いで退散する。校長先生が挨拶に出てきてくれた。女性だ。これが知的で気品があり、なかなかの 美人。こんな先生に教わってみたいものだ。
 村長さんの家にも行ってみた。村長さんは商売熱心で、発電器を買い込んで住民に電気を売っている。こ れはこれで偉い。ミャンマーは電気など届かないところがいくらでもあるからだ。
 短い滞在時間であったが、住民は明るく困窮している様子もない。ひとことで「いい村だ」というのが感 想である。
 医療関係者の望むものは、病気で苦しむ人がいなくなる世界、我々が廃業する世界が理想である。もちろ んそんな世界は永遠に現れない。しかし、それに近づけようとするはかない戦いに挑む。少なくともそこに いる人たちが、良質な人生を送れるような世の中にしたい。それにはどうしたらいいだろうか。開発途上の 地域では最先端の医療も必要であるが、ごく少数にしか行き渡らなかったり使いこなせなかったり、施して いる人間の自己満足に終わったりする。それよりも現地にある物や制度を活用し、その土地にあったやり方 で行く方のが賢明である。また緊急援助ならばともかく、医療単独では成り立たない。様々なものが重なり 合って理想に近づく。
 この村は精神的指導者と医療と食事と教育という、バランスの良いあり方を示している。しかし、まだほ んの小さな点である。この点が確実に根付き、好例として周囲に広がり、やがては面となることを望む。
 我々の理想に対してこの村の例の示すように、ねばり強くそして確実に、まずは現状を見据えて背丈にあ ったやり方で意識を変え広がりを見せることの方が、近道ではないであろうか。
 帰りにまた牛車とすれ違った。自動車は便利だが、この国の人が誰でも持てるわけではない。牛車の歩み が、 NGOのあり方と重なって見えてくる。




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