ミャンマー

ミャンマー伝統医に対する
鍼灸指導についての報告


アスカ国際クリニック医師(内科・小児科・漢方・鍼灸) 三宅 和久
AMDA Journal 2002年 12月号より掲載

1. ミャンマーでの伝統医療について

ミャンマーには伝統的な医療が存在する。今回の訪問では時間が無かった為、直接見る事はできなかったが、伝統医から聞いたところによると、マッサージや、自然の植物などを煎じたり散剤として服用、外用するものであり、マッサージには油を使う事もあるという。 インドのアユルヴェーダ医学が伝搬したものが、ミャンマーの国情に合わせて変化したものと推察される。この伝統医学に関しては、国内に3年制の伝統医学専門大学が2つある。大学では現代医学の解剖など基本的な知識はある程度教えているようであった。 国家試験は無いが、卒業試験に合格すると、伝統医としてのライセンスが与えられる。各地方には現代医学の病院の他に、ミャンマー伝統医学の病院が建てられ、地域の医療に貢献している。

またこの他、華僑に伝わる民間医療として、アッサイ(アッ:針、サイ:刺すの意)と呼ばれる針治療が存在する。その知識、技術の伝搬は大学などの学校で伝えられるのではなく、昔ながらの親子、弟子関係によって伝搬されるらしい。 しかしこの華僑による針治療の効果は一般的にも知られており、肝硬変が治ったなどとなかなかの評判であった。治療は個人の小さな診療所で行われるようである。

更に地方の民間医療として、中国に近いシャン州では、灸に似た治療が行われている。"もぐさ"はヨモギArtemisia princeps Pampaniniの葉の裏の毛を集めて乾燥させたものであるが、シャン州で使用されているものも、Artemisiaであるものの、この後に続く学名は異なるらしい。 ヨモギと比較した効果についてはわからなかった。

2. 鍼灸指導の場所

ミャンマーの首都ヤンゴンの郊外にあるAMDAトレーニングセンター(ACT)

3. 研修生の内容

ミャンマーの保健省が集めた男女の伝統医で、計20人。ミャンマー各地から参加していた。年齢は20代後半から50代前半まで。伝統医学専門大学の講師や、各地の病院で臨床医、講師として働いている者たちで、皆臨床経験がある。

4. 鍼灸指導の期間とスケジュール

2002年9月18日(水)より9月28日(土)まで。日曜日は休日とし、最後の日は午前のみだったので、実質9日半。毎日の研修は9時〜17時または18時。途中1時間の昼食時間と10分程度の小休止を挟む。

日程主な研修内容
9月18日(水) 開講式

伝統医学と現代医学の比較、鍼灸治療の基本的概念について講義、皮内鍼による肩痛治療のデモンストレーション
9月19日(木) 皮内鍼、毫針による肩、腰痛治療のデモンストレーション

皮内鍼、吸玉、灸の実習
9月20日(金) 経路理論、太陽膀胱経について講義

毫針の刺法、補瀉手技の実習

毫針、温灸を用いて膀胱経を中心に腰痛治療の実習
9月21日(土) 少陽胆経、陽明大腸経、少陽三焦経、太陽小腸経について講義

教えた経路を使い、肩、腰、膝痛治療の実習
9月23日(月) 陽明胃経、太陰牌経、厥陰肝経、少陰腎経について講義

肩、腰、膝痛治療の実習
9月24日(火) 太陰肺経、厥陰心包経、少陰心経、奇経八脈、経外奇穴、陰陽二元論について講義

肩、腰、膝痛治療の実習
9月25日(水) 五行説、臓腑理論について講義

肩、腰、膝痛治療の実習
9月26日(木) 六淫七情、八綱弁証について講義

肩、腰、膝痛治療の診断、治療実習
9月27日(金) 中医学的診断法、五輪穴、補母瀉子法、絡穴、原穴、ゲキ穴、背輪穴、募穴、八脈交会穴、八会穴、下合穴、華佗経について講義

肩、腰、膝痛、脊柱管狭窄症の診断、治療実習
9月28日(土) 診断、治療の実習

修了式

講義のスケジュールは、短期間での技術習得を目指すため、標治に適した陽経から行った。

実習の患者は近くの伝統医学病院から搬送されたが、治療費は無料。初め7人ほどであったが、日を追うにつれ患者数が増し、最後の方は35人に達したため、8つのベッドを同時に使用して研修生の実習兼患者の治療を行った。

5. 研修の効果について

研修生はもともと臨床経験を積んだ伝統医師たちであるため、研修に非常に熱心であり、その習得速度も当初の予想をはるかに超えて早かった。研修終了時には、肩、腰、膝に関しては一通りの診断と治療ができるようになっており、彼らの治療を受けた患者たちも8割方治っていた。 治らなかった患者に関しては、講師が直接鍼灸を行い、治癒率を上げた。

今回の研修生たちは、伝統医学専門大学の講師や各地方の病院の講師、臨床医師であるため、今後彼らによって更に他の医師へ鍼灸の知識と技術が伝搬していく可能性が高い。 保険などの医療のインフラが整っていないミャンマーにおいては、安価で効果のある鍼灸治療は極めて有用であり、今後も同様の研修を行う事が望まれる。

今後の課題としては、鍼灸用の針やもぐさを、いかにして安く効果的に入手できるようにするかである。初めは日本や隣国の中国からの輸入を試み、最終的にはミャンマー国内において全て自給する事が望ましく、実際それは可能であると思われる。




緊急救援活動

アメリカ

アンゴラ

イラク

インドネシア

ウガンダ

カンボジア

グアテマラ

ケニア

コソボ

ザンビア

ジブチ

スーダン

スリランカ

ネパール

パキスタン

バングラデシュ

フイリピン

ベトナム

ペルー

ボリビア

ホンジュラス

ミャンマー

ルワンダ

ASMP 特集

防災訓練

スタディツアー

国際協力ひろば