ミャンマー

その後、そしてこれから
─防災と危機管理プロジェクト─


AMDAミャンマープロジェクト事務所 短期調整員 竹久 佳恵
AMDA Journal 2002年 7月号より掲載

はじめに

「プロジェクトの終了」それは、「本当の始まり」でもあります。「防災器具供給」や「防災訓練」が中心となっている「防災と危機管理プロジェクト」では、プロジェクトの終了後いかに継続的・効果的な活動が住民自身によって行われているかがポイントとなってきます。

この紙面上でも何度かお伝えしたマンダレー管区チャパタウン市内10村での「防災と危機管理プロジェクト」が終了して、約1年が経ちました。この間、すべてが住民に任されており、AMDAからの関与は一切ありません。事後調査実施の為、現地を訪問する事になった時、正直不安を隠せませんでした。 「防火用水に水は溜まっているだろうか?」「消火ポンプは壊れたまま放置されていないだろうか?」

さて、調査の結果はどうだったのでしょう? 以下5つのキーワードを基に、調査結果をお知らせ致します。

1. 誕生! 村の消防団

日本の地方では当たり前の地域住民による地元消防団。この様な地元消防団組織は、以前存在しませんでした。しかし、AMDAの防災訓練を受けた村民を中心として、各村とも村の消防団を結成しています。消防団は村の中心的存在として様々な活動においてリーダーシップを発揮しています。

2. 村民達自身で供給物品を維持・管理!

AMDAから10村に供給された物品は、防火用水、消火用ポンプ、バケツ・防災ベル・くわ・なたといった防災・消火用具です。

日本から寄贈された消防車
日本から寄贈された消防車
まず防火用水ですが、殆どの村では水は充分に溜められていました。消防団員・村長を中心としたメンバーで水量の確認、不足している場合の補充が行われています。次に消火ポンプですが、10村共に燃料があり、故障しておらず、いつでも使用できる状態でした。 さてこの消火ポンプ、最も重要な点は村民による燃料費負担が可能か? という事です。みなさんもテレビなどマスメディアを通して、途上国へ供給された物品が使われないまま放置されている、という状況を見聞きされているかもしれません。 供給物品が機械の場合、利用されない原因の1つに利用者が燃料費を負担できない事が挙げられます。が、この10村ではそのような事は全く無く、各村それぞれの特徴・経済状況に合わせた方法で燃料費の負担が行なわれています。では、どのようにして負担しているのでしょうか? 10村中6村では民共同資金から拠出されています。日本でも地域毎に各家庭が負担する部落費がありますが、この村民共同資金も部落費と同じようなものです。残る4村では、村祭りでの寄付・防災自主トレーニング参加費(後述4をご覧下さい)などから拠出されています。

3. 組織的・定期的な夜警システムに改善!

「火の用心!カンカン」日本でも昔は、夕方になるとこの声と音をよく聞いたものです。日本にも昔からある夜警団、実はミャンマーでも多くの地域で存在しています。10村ではこの夜警団・夜警システムをより効果的にする為、消防団を中心に様々な改善策が実施されています。 具体的には、消防団を中心とした夜警団の人数増加、村内巡回回数の増加などです。夜警システムは10村それぞれ異なっていますが、主に以下の3つの活動が中心をなしています。まず、夜警団のメンバーは、主に各家庭が夕食の準備を始める18時ごろから村内を巡回し、火の取り扱い注意を促します。 そして住民が就寝する22時ごろになると、各家庭を訪問し、火の始末を目視によって確認します。その後は、村内にある集会所などで災害に備えて仮眠を取ります。各村とも、自分達が最も効果的だと思う夜警システムを自分達で考え、実施しているのです。

4. AMDA研修生が講師に! 村民自主防災トレーニング実施

AMDAの防災研修を受けた村民、つまり村の消防団員が講師となり、研修を受けていない村民を対象に自主防災トレーニングを実施しています。この1年間でなんと767人もの村民がこのトレーニングを受講しています。トレーニングの内容は多彩です。 各村に供給されている消火ポンプの使い方、様々な火事の消火法(油が燃えていても水で消えるといった間違った認識が、ミャンマーではまだまだ多いのです)、火事を未然に防ぐ方法などなど。この自主防災トレーニングに参加した女性は次のように語りました。 「トレーニングを受けた後、台所での火事を防ぐ為、火を使う料理の際は地面に穴を掘って火を使っています。火事に関する様々な知識を得たので、自信を持って子供達を教育出来るようになりました。」講師から、村民へ、そして子供達へ。村民達自らの手で、知識の輪が広がっています。

5. 自分達で守る! 全村民参加の小さな活動

AMDAのプロジェクトにより、村民の防災に対する意識は確実に向上しています。それを証明するのがこの「小さな活動」です。火事の初期消火の為、水や砂の入ったナイロン袋を庭や家に吊るしておく。火事が大きくならないように、ゴミや枯葉を定期的に掃除する。 こういった活動は全村民の協力無しでは実行できません。研修を受け、知識を得る。防災用品が供給され、自信がつく。村人達は「自分達で村と村民を守る」為に行動しているのです。

おわりに

これらすべての活動は、村民が自主的に実施した事です。NGOの活動に携わる者として、これ以上嬉しい事はありません。しかしいくつかの改善・改良点も見つかりました。例えば各村の状況に合わせた防火用水の大きさを検討する。 防火用水で消火ポンプを利用した際、村の全世帯に水が放水されるよう、防火用水の設置場所・設置数量を検討する。などが挙げられます。

AMDAミャンマーでは今後、この「防災と危機管理プロジェクト」をミャンマーでの火事発生率第1位の町、ミンジャン市で実施する予定です。ミャンマー政府管轄消防団組織との協力体制をより強め、防災に関する国策モデルを目指す。そして、ミャンマーにおける火事発生率を減少させる。 私達と住民の挑戦は始まったばかりです!




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