ミャンマー

溢れる太陽の恵みを活かして
パコック市の小児病棟支援プロジェクト


AMDAミャンマープロジェクト 駐在代表 小林 哲也
AMDA Journal 2002年 7月号より掲載

「暑い…」

有名な仏教遺跡があるバガンの町から車ででこぼこ道を1時間走り、イラワジ川をフェリーで1時間かけて渡ってパコック市に着くと、最初の言葉はいつも同じである。それもその筈で、同市は東南アジアの熱帯地方に位置するミャンマーで、最も年間平均気温が高い都市の一つなのだ。

手作りのフォトセラピーマシーン
手作りのフォトセラピーマシーン
パコック市はAMDAがこれまで活動を行ってきたメッティーラ市と同じく、ミャンマー中部の乾燥地帯に位置する町である。イラワジ川のほとりにあるこの港町は、マグウェイ州第2の都市であり人口は25万強。王朝があったバガンにミャンマー西部からの荷物を運ぶための集積地として古代から栄えてきた。 しかしミャンマーでは、イラワジ川から西の地域は歴史的に開発が遅れており、(ヤンゴンやマンダレー、バガンなど、古来から首都は全て川より東に置かれ、今でも大都市は殆ど全てミャンマーの東半分に位置している)このパコック市も社会インフラの整備がまだまだ十分ではない。 AMDAはこれまで同市の農村地域において、井戸建設プロジェクトなどを実施してきた。

このパコック市には総合病院があり、その中には小児病棟もあるが、このような背景から施設の整備が遅れており、病気の子ども達に対して十分な医療サービスを提供出来ていない。小児病棟は清潔だが、ベットがずらっと並んでいるだけで、治療用の医療機器は殆どない。 例えば、ミャンマーの子供に多い黄疸の治療には、「フォトセラピーマシン」という青い光を照射する器械を用いるのが普通だが、それもここにはない。それを見かねた小児科の医師が、蛍光灯に青いセロファンを巻いただけという原始的な手作りの器械を作って使用しているのが現状である。 彼女は事ある毎に、「ちゃんとした器械があれば、もっと沢山のことが出来る」と私に訴えていた。

パコック総合病院小児病棟
パコック総合病院小児病棟
そこでAMDAは、メッティーラ市総合病院小児病棟に続き、このパコック市総合病院小児病棟を支援し、医療機器を設置して子供達が十分な医療サービスを受けられるようにしたいと考えた。

しかし、パコック市はメッティーラよりも更に電力事情が悪く、優先的に供給される病院でも日中は電気が来ないことが多いため、単に医療機器だけを設置しても、そのままでは事実上使えない。 当初は発電機(ジェネレーター)の導入を考えたが、経済的な混乱から燃料代が高騰しているため、財政的に厳しい病院側が、燃料を常に供給することは極めて難しいと思われる。かといってAMDAがずっと燃料を供給することも非現実的であるし、それが良いことだとも思われない。

そこで色々検討した結果、医療機器と同時に太陽光発電のソーラーパネルを設置し、電源を自前で確保するという小児病棟支援プロジェクトを実施することになった。乾燥地帯に位置し、降水量が少ないパコック市は、逆に言えば太陽の光が常に降り注いでいる街でもある。 実際、過去の気象データを調べたところ、パコック市の晴天率は全国でもトップクラスであった。こうした太陽光発電に絶好の条件を使わない手はない。

このプロジェクトについては、日本大使館を通じて外務省草の根無償資金の提供を受けることが出来た。既に医療機器が日本から、ソーラーパネルがドイツからそれぞれ到着しており、現在は通関手続きを進めているところである。

ミャンマーでは現在、電力が大幅に不足しているが、自然破壊や環境汚染の問題から、先進国が途上国における大規模ダムや火力発電プラントの建設を支援する事は年々、難しくなっている。従って自然エネルギーは電力不足を補う有効なエネルギー源だと思われる。 太陽光の他にも山岳地帯は風力発電が期待出来るし、沿岸部では、大規模な農地から発生する大量の藁などがバイオマスの原料として既に注目を集めている。自然エネルギー発電は、一つ一つの規模は小さいが、その地域の特徴を活かした、持続可能なエネルギーを地域レベルで供給することが可能である。 AMDAが掲げる「地域コミュニティの自立の支援」という目的にも非常に合致しており、今後更に注目されるべき分野だと思う。

その意味で今回、こうした自然エネルギーと保健医療の分野を組み合わせたプロジェクトを実施にこぎつけたことは、大変嬉しく思っている。この原稿が皆様に読まれる頃には、実際にこのシステムが稼動しているだろう。 このプロジェクトが地域のエネルギー供給と保健医療の新しい形を示すことにより、今後、同じようなシステムをミャンマー各地に普及させていきたい。

豊かな自然の恵みと、それを活かせるテクノロジーに感謝。




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