ミャンマー

乾燥地帯の村に井戸が完成!
ミャンマー浄水供給プロジェクト報告


AMDAインターナショナル ミャンマープロジェクト事務所
駐在代表 小林 哲也
AMDA Journal 2001年 11月号より掲載

 「蛇口をひねると水が出る」

 日本では、普段誰も気にも止めない、ごく当たり前のことです。でも毎日数 時間、遠くの池まで水を汲みに歩いていた子供達がそれを見たらどう思うで しょう?

 乾燥地帯に暮らすパコックの子供達にも、ついにその日がやってきました。 今回は今年の6月号でお伝えした、パコック市でのミャンマー浄水供給プロジェクトのその後をお伝えします。

 ミャンマーの中部地方に位置するパコック市は人口約27万人。ミャンマー随一 の大河、イラワジ川の西岸沿いにある港町です。全国的に有名なお寺があること、 世界遺産としても知られている古都バガンに近いことなどから、古くから巡礼地 や農産物の集積地として栄えてきました。しかし同時に、乾燥地帯ゆえにこの町は、 昔から水不足に悩んできました。

 これ程の乾燥地帯でないミャンマーの他地域では、通常は30mも掘ればすぐに 水が出ます。しかし同市の内陸部では、最低でも200m近くは掘らなければ十分な 水が出ません。また地中に固い岩が多いなど、地質の面からも、井戸を掘るのが 非常に難しい地域なのです。実際、我々が事前の現地調査をした際も、過去に様 々な団体が挑戦し、残念ながら失敗してしまった井戸掘削の跡、一旦は水が出た けれどもすぐに枯れてしまった井戸跡などを幾つも見かけました。そのため AMDAは、今回のプロジェクトを始める前に調査を慎重に行い、地形や必要な井 戸の深さや地質について十分な情報を集め、準備を進めて来ました。


 その事前の地質調査をしていて気が付いたのは、この国では記録というものが 非常に大切にされているという事です。30年近く前に掘った井戸の詳細なデー タ、例えば掘削した際に判明した地層内の土砂の種類や厚さ、帯水層の深さなど の貴重な記録が、手書きできちんと残されているのです。しかも地層の種類を色 鉛筆で塗り分けているという丁寧さ。コピーも何も無い時代に、地道にこうした 記録を取り続けることはさぞかし大変だったことでしょう。地元の人々の話では、 特に僧院のご住職などが、こうした記録の保管に非常に熱心だということです。 「途上国に20年も前の記録などある訳が無い」とたかをくくっていた私は、びっ くりすると同時に、つまらぬ先入観を反省し、既に黄色く変色した書類を長い間、大切に保管し続けてきた方々に、心から 尊敬の念を抱きました。


 こうして昨年12月末から掘削が始まったのですが、予想通り、工事は困難の 連続でした。折角150m近くも掘ったところで堅い岩盤にぶつかり、それ以上掘 り進めなくなったり、途中で掘削ドリルが泥にはまって抜けたりと、厳しい試練 が続きました。貴重な寄付金を頂いて事業を行っている以上、AMDAとしては何 とか結果を出さなければなりませんが、自然を相手にするプロジェクトは決して こちらの思い通りには進んでくれません。工期が予定より大幅に遅れ、何本もの井 戸が失敗に終わるにつれて、正直、途中で何度も「こんなことなら、井戸建設など 手掛けなければよかった」と思いました。

 

だから3本目の井戸が無事成功し、水が出たという知らせを聞いた時は、勿論 喜びも大きかったですが、それ以上に「ほっとした」というのが正直な感想でした。 その後も掘削チームは困難にぶつかりながらも何とか工事を進め、8月までに、予 定していた3ヶ所で水を得る事に成功しました。3つの井戸を成功させるまでに8 回掘ったので、成功率は3割7部5厘とイチローの打率よりちょっと良い程度。 これが高いのか低いのかは私にはまだ分かりません。しかしプロジェクト管理に ついて色々な工夫をしたので、予算は何とか予定内に収まりました。自然を相手 にする事業だけに、井戸建設はやはり一筋縄には行きません。「あせらず、慌てず、 慎重に」計画を進めていったことが、結果的には良かったのだと思います。


 こうして完成した3本の井戸とパイプラインシステムの引渡しの記念式典が、 去る8月21日に現地で開催されました。

 式典は、今回完成した3つの井戸の1つがあるカイン村の地域病院 (Station Hospital) で行われました。まず、AMDAを代表して私が「地域住民の健 康増進を目指し、AMDAはこれまで主に医療サービスの提供や保健教育を行 ってきた。しかし浄水使用の重要性を知っても、身の回りにきれいな水が無 ければどうしようもない。保健教育で得た知識を実践するために、安全で衛 生的な水を供給することがこのプロジェクトの目標であり、これらの井戸が 村人達の健康維持に役立つことを願 っている」と挨拶し、井戸と給水タンクの目録を3つの村の村長さん達に手渡しま した。その後、村々を代表してカイン村地域病院の院長先生が「村には安全な水 が不足しており、これまで村人達はとても苦労してきた。今回、井戸が出来て人 々は非常に喜んでいる。これで下痢などの患者も減ると思う。AMDAの支援に心 から感謝したい」とお礼の言葉を述べました。

 式典が終了した後は、カイン村に掘った井戸に移動してテープカットです。こ のプロジェクトを全面的にご支援頂いたJ.S.Foundation.の代表として今回、現地 視察に来られたスタッフの佐藤さんが、院長先生らとテープカットを行い、井戸 は無事オープンしました。

 テープカットの後、早速パイプラインの元栓が開かれ、蛇口をひねってバケツ に水を汲んでいる子供達の笑顔を見たとき、このプロジェクトを実施して本当に 良かったと心から思いました。そしてこうした国際協力の仕事に自分が携わって いることに感謝しました。自分達の仕事を心から喜んでくれる人々が目の前にい る。仕事をしていてこれ以上の喜びはありません。

 「目の前の水道から水が出て来る」そんな日本では当たり前のことが、実は世界 の大部分の地域では当たり前でないことを、私達はついつい忘れてしまいがちで はないでしょうか。ミャンマーにもまだまだ、きれいで安全な水が手に入りにく い地域がたくさん残されています。困難な仕事ですが、我々の命の源である水に かかわる仕事は、非常に遣り甲斐のある仕事でもあり、今後も是非、積極的に取 り組んでいきたいと考えています。





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