ミャンマー


“患者へのインタビュー”

AMDAミャンマープロジェクト医師 ティン セン
AMDA Journal 2001年 3月号より掲載

 国連NGOであるAMDAは、ミャンマーでは名の知れたNGOの一つであり、ミャンマー中央乾燥地帯にあるメッティーラ近郊では、基礎的な診療サービスを提供している。 AMDA巡回診療チームは、2人のミャンマー人医師を含むスタッフ数名が1台の車に乗り、各無医村において、出来るだけ一般の生活水準に近い、 よりよい医療サービスを効果的に提供するために一所懸命努力している。今回、プロジェクトへの評価を含めこの地域の反響を知るため、患者へのインタビューを試みた。


 アレイワ村は、メッティーラ市において交通(出入り)の困難な村の一つである。市街から約24キロの所に位置しているが、 村への道はどこにもないほどの悪路で、車で45分、雨季は倍以上の時間がかかる。この巡回診療プロジェクトでは、水曜日毎にこの村を訪れ、毎週百人以上の患者を診察している。

 2001年1月12日、Tha Phan Pin Yoo 村(アレイワ村から約6.5キロ)から来た患者ソーミンッ(9歳)の母親キン アウンさんに巡回診療について感想を求めた。


母親(キン アウンさん): 「私の息子は小さい時から排尿口が針穴程度で、排尿困難を患っていました。一ヶ月位前からよりひどくなり、一滴ずつ位しか出なくなりました。 しかし一家の稼ぎ手である主人は、シャン州で一般労働者として出稼ぎのため村を離れており、私と6人の子供がなんとか生活している状態でした。子供(ソー ミンッ)に手術が必要だと思いましたが、 第一に十分なお金が無かった事、二番目に他の子供達が幼いので、遠くのメッティーラ市民病院へ行く事ができませんでした。 ある時、1年程前にAMDA巡回診療で、主人が右腕の大きな腫瘍の治療を受けた事を思い出したのです。

そして今年1月3日に息子の治療を受けるためにアレイワ村へ行きました。その日は100人以上の患者を診察するためにAMDAスタッフは大変忙しそうでしたが、 息子の診察後、医師は手術を決定。その場で同意を求められ、私はとっても嬉しくて即座に同意しました。手術の間、医師や医療スタッフはとても優しく接し、 私たちを安心させてくれました。

AMDAはメッティーラ市民病院の手術室と同じように適切な手術を行ない、息子はほとんど痛みも無く、傷も化膿していません。その上、治療費は5日間の薬代を入れても僅か40チャット(約160円)でした。 それは、同様な手術費のたった一割程。私の息子は大変運が良かったと思います。

 AMDA巡回診療に対しお礼を言い尽くせません。このAMDAサービスが近隣の全ての村人に提供される事を心から望んでいます。」




 次に、2001年1月18日、AMDA巡回診療で毎週木曜日に訪れるセゴーン村で、ウィン モンさん(35歳の患者)を面接した。


ウィン モンさん:「2000年12月26日夜、近所の家が火事になり、私は多くの村人と一緒に消火に当たっていました。その時、その家の屋根から落ちて(約5.5メートル)、 立ち上がる事もできず、右側の股関節のひどい圧痛に苦しんでいました。12月28日にAMDA巡回診療へ行き、診察を受けたところ、 医師は骨折治療のために提携病院へ紹介する事を決めましたが、入院するには充分なお金を持っていませんでした。

そこで村の医療従事者全員が、私がとても貧しい事を話し合い、その結果、私はメッティーラ市民病院へ6日間入院しましたが、実際の治療費は“AMDA緊急基金”制度から支払われました。 私達がAMDAで治療を受けた時、「薬代を実費の3割のみ支払うこと」、それが“AMDA緊急基金”となっていた事をその時にはっきりと理解しました。 ミャンマーでは益々治療費や薬代が高くなっています。そしておそらくAMDAが、セゴーン村の私達に医療サービスを提供してくれている唯一のチームです。 巡回診療スタッフの活動は非常に効果的で、安全で、大変必要とされています。現状ではAMDAのお陰で、メッティーラ市の遠隔地に住む住民は、 ミャンマーのその他の遠隔地に住む人々と比べ、とても恵まれていると思います。」


 最後に、メッティーラ市街地から32キロ離れたイーウェイ村(毎週金曜日に巡回診療を実施)。2001年1月19日に、生後3ヶ月の患者(ソー ナン モン)の母親タン タン ラさん(27歳)を面接した。

母親(タン タン ラさん):「今日は、風邪をひいていた娘を連れてこのAMDA巡回診療を訪れました。私達の村では病気を患い苦しんでいる人達は皆、金曜日が来るのを待ちわびています。 その理由はイーウェイ村で診療を受けることができるから。この村には、病気の治療をしてくれる資格をもった医師がいません。 緊急の場合にのみ、医療アシスタント(農村などで簡単な医療活動を行える人)の助けを得ていますが、多くの欠点もあります。先ず彼等には資格がないので、適切な治療をする事はできません。

次に必要な医療消耗品が揃っていないことから、非衛生的な注射針を使用するために、エイズやウイルス性の肝炎等の病気に罹ることがあります。なにより治療費がとても高いのです。 しかしAMDAでの診療は、設備も整い経験豊かな医師により運営されています。その上、巡回診療での治療費は大変安く(初診のカルテ代のみ)、薬代も市価の約1/3です。 支払っている薬代が“AMDA緊急基金”としてどのように使われているか、患者の中にははっきり理解していない人もいるでしょう。しかし私はとっても良く知っています。

…2000年9月26日午前 2時、私は胎盤の排出もなく、出産後に出血しました。その時、村の助産婦は私をメッティーラ市民病院へ搬送しようと試みましたが、 深夜の市街までの車の料金は5,000チャット(約1,600円)でした。私の家族は支払い能力が無かったのですが、 助産婦はAMDA緊急基金から搬送代として3,000チャット(約1,000円)補助が出ると言うのです。即座に村の医療アシスタントの許可を得て、 “AMDA緊急基金”からの恩恵を受け、私はメッティーラ市民病院へ搬送されました。なんとか間に合って命拾いをしました。なんとこのシステムは素晴らしいのでしょう! 現在、村の人達はその基金について理解し、治療費を支払っているのではなく、緊急基金として貯められ、自分達に役立てられていることを認識しています。私達は心からAMDA活動に感謝しています。

 限られた時間内では、このプロジェクトから受けている恩恵について十分に表現する事はできません。」
        
(翻訳 藤井倭文子)



緊急救援活動

アメリカ

アンゴラ

イラク

インドネシア

ウガンダ

カンボジア

グアテマラ

ケニア

コソボ

ザンビア

ジブチ

スーダン

スリランカ

ネパール

パキスタン

バングラデシュ

フイリピン

ベトナム

ペルー

ボリビア

ホンジュラス

ミャンマー

ルワンダ

ASMP 特集

防災訓練

スタディツアー

国際協力ひろば