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AMDAミャンマープロジェクト 21世紀の新たな挑戦
AMDA Journal 2001年 3月号より掲載
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2.は無医村への巡回診療や栄養給食サービス、保健教育、井戸建設などを組み合わせた僻地医療サービスの向上と保健衛生環境の向上です。
こうした僻地において住民の健康を守っていくためには、単なる診療によって医療サービスを提供するだけでは不十分です。
特に子どもについては、病気にかかりにくい丈夫な体をつくるため、そしてもし病気になった時、治療の効果が充分に発揮されるようにするため、
栄養状態を改善することが必要です。また保健衛生教育は病気の予防、そして初期手当てには欠かせないですし、村での井戸建設や診療所に通うための交通手段の確保などは、
学習して得た知識を実践するためには不可欠です。
また昨年からは、サービスの持続性を確保するため、支払能力のある患者からは、
薬代を3割または5割徴収する受益者負担の制度を導入しました。集められたお金は緊急ファンドとして積み立てられ、
手術費用や病院に通う費用が払えない村人に対して支給されています。こうした制度の導入によって資金的な持続性を高めていくことが、
当面の課題となります。また@と同様に、成果をきちんとした指標で示すなど、モデルケースとして将来、
ミャンマー全土で活用出来るような情報を残すことが重要だと考えています。
3.は今年から始まる予定で、ヤンゴンに建設するAMDA研修センターを中心に行っていく活動です。東南アジアのある国には、
「10年後を思うなら木を育てろ。100年後を思うなら人を育てろ」という諺があります。他の途上国と同様に、ミャンマーで今、
不足しているのもまさに人材に他なりません。「もの」の支援は即効性があり、重要であることは勿論ですが、それだけでは不十分です。
ものはすぐ陳腐化します。しかし育った人は、その後、育成に費やした費用の何倍もの働きをすることが出来ます。まさに「人は財産」なのです。
この考え方に立ち、AMDAミャンマーでは医療専門家を対象とした研修センターを設立し、人材育成の活動にも乗り出していく考えです。
最後のCは、「ABCコンセプト(AMDA Bank Complex)」というAMDA独自の考え方に基づいて進めていこうとしている活動です。
先にも書きましたように、いくら保健衛生の知識を身に付けたところで、それを実践する機会が無ければ、何の意味も為しません。
この場合の機会とは施設であり、またその施設を利用する経済力です。
特にここで重要なのは後者で、貨幣経済の波はミャンマーの農村地帯にも当然浸透しています。その功罪はともかく、これはもはや購えない前提条件です。
残念ながら先立つものが無ければ、保健教育で習った手を洗う石鹸も、栄養をつけるための野菜も買うことは出来ません。
こうした事態を打破するために、AMDAは小規模貸付、いわゆるマイクロ・クレジット事業を行って来ました。これは村の人々、特に女性を対象として、
仕事を始めるための少額の事業資金を融資し、女性たちはその資金を元手に仕事を始め、所得を向上させるというものです。「農村の女性は能力が無いから、
お金を手にしても駄目だ」というのがこれまでの通説でした。しかしそんな考え方が大きな誤りであることはすぐ明らかになりました。機会を得た彼女らは、
そのお金を元手に機織りや売店の経営、家畜の飼育と販売など様々な事業を始め、着実に所得を増やしていったのです。
これまでのAMDAマイクロ・クレジット事業が100%の返済率を誇っていることが、その何よりの証明です。
しかしこの事業はまだ始まったばかりであり、規模も小さいままです。そこで今年からAMDAが活動する地域を拡大していくのに合わせ、ABCコンセプトに基づき、
このマイクロ・クレジット事業も併せて拡大していきたいと考えています。
私は赴任してまだ4ヶ月余りであり、大きな困難などには幸いまだ直面していません。しかしこれまで6年間の活動は、恐らく大変な道のりだったことと思います。
それでもプロジェクトをずっと円滑に実施することが出来たのは、多くの関係者の方々による献身的なご協力、
そして何より地元でボランティアとして働いてくれている地域住民の皆さんの協力が得られたからに他なりません。
「AMDAがこうして我々のために支援してくれるのだから、出来ることは自分達でやろう」と言って、例えば栄養給食の調理や後片付けなど、村の方々が自発的に働いてくれるのです。
これは赴任して最初にびっくりした出来事でした。「援助はもらえるだけ、もらっておけばいい」というような考え方は、ここにはありません。
勿論、そういった関係では決して長続きしないでしょうし、結局は誰のためにもならないでしょう。本当の支援とは、決して一方的にこちらから押し付けるものではなく、
お互いの協力の中から生まれてくるものだということが、現場に来て本当によく分かりました。
AMDAミャンマーは21世紀のスタートに際し、このような目標に基づき、具体的な活動を進めていきたいと考えています。大きな目標ではありませんが、活動の透明性を高め、
支援という言葉に甘えずより厳しい評価基準を定めていくことは、私達NGOにとって今後不可避の課題であり、それ故に「挑戦」という言葉を使わせて頂きました。
まだまだ至らぬ点も多く、関係者の方々には日々様々なご迷惑をお掛けしておりますが、今世紀も引き続き変わらぬご支援の程、何卒よろしくお願い申し上げます。
尚、最後になりましたが、ミャンマーは聞くのと見るのとでは大違いで、大変素晴らしい国です。この国の本当の姿を見に、是非一度お越し下さい。ADMAミャンマースタッフ一同、
読者の皆様のお越しを心よりお待ちしております。
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