コソボ

二度目の冬

コソボ・プロジェクト事務所 駐在代表代行  濱田 祐子
AMDA Journal 2001年 2月号より掲載

 コソボ紛争後2度目の冬がやってきました。紛争を終えたばかりの前の冬、国連軍によって地域の安全は保障されたものの、電気や水もなく、人々はマイナス何十度以下にもなる中を真っ暗闇で凍えながら過ごしたそうです。そのような中で、近藤(佐藤)麻里さんを代表とするAMDAは,無料診療所運営,医療施設の再建,医薬品や医療器具の配布等の懸命な活動によって、現地の医療状況の改善に貢献してきました。

 一年経った今冬も、まだ深夜12時以降の外出が禁止されていたり、電気や水等の公共サービスが復旧されていません。しかし、人々は徐々に落ち着いてきています。「この冬はまだいい,前の冬ほど辛い冬はなかった」と言うのをよく耳にします。これは、コソボが緊急事態から復興の段階に移行したということを示す象徴的な意見だといえるでしょう。


ファミリーヘルスセンター

 緊急事態の終結に伴い、MSF(国境なき医師団)、IRC (International Rescue Committee)、CARE、カリタス等大手のNGOが活動規模を縮小したり、コソボを去ってゆく中で、AMDAは長期的に医療システム復興に尽力するNGOとして地域の保健機関や住民から多大な期待をよせられています。

 地域の期待をうけて、今年からAMDAは、UNDP(国連開発計画)の協力を得て、「ファミリーヘルスセンター」といわれる診療所の建設を計画しています。手続きのため未だ準備中ですが、早ければ今年の3月か4月から着工にこぎつけられると思います。

 現在、コソボ自治洲内の殆どの診療所は、設備不足でまともな治療を行える状況ではありません。故に本来は二次的治療を行うはずの病院に、全ての患者が殺到しています。我々の建てるファミリーヘルスセンターは、一次的医療を主な目的とした診療所です。このプロジェクトで州内4つの県(プリズレン・ペア・ジャコバ・イストック)に6ヵ所の診療所を建設しようと計画しています。そのうちプリズレン県に建設を予定している「アルバナファミリーセンター」について説明させていただきます。

 アルバナファミリーセンターは、コソボ南部のアルバニアとの国境に接するプリズレン県郊外にある既存の診療所を再建してつくられます。この地域の住民は、人口の大半を占めるアルバニア系、貧しい世帯の多い少数民族のロマ系の人々や、比較的裕福なボスニア系の人々が暮らしていました。そこに紛争によって700人あまりものアルバニア系難民がなだれ込んだのです。

 ところが、ここにはいつ壊れてもおかしくないような古い小さな診療所しかありません。もちろん水さえなく、十分な医療器具もありません。このため、住民は十分な治療を受けることが出来ず、遠く離れた、混雑しているプリズレンの病院に行くという選択肢しか残されなくなります。

このアルバナに診療所を建設するということは、プリズレンに殺到する患者を分散させる効果が期待できることから、地域の保健関係者からも強い要望が寄せられています。新しくできる「アルバナファミリーセンター」は、アルバナと周辺の5つの村々の住民を含めた、約13,000人を対象にしています。

 このプロジェクトはUNMIK(国連コソボ暫定統治機構)が提案した、「ファミリーメディスン」と呼ばれるガイドラインに忠実に計画されています。このガイドラインは、1)小規模の外科手術をも含めた基本的な治療、2)緊急医療の24時間体制、3)往診、4)予防教育 の4つの骨子からなっています。建物は、高齢者や身体の不自由な人々にも使い易い「バリアフリー」設計にする等、AMDAのこれまでの経験を最大限に生かしたものとなっています。また、診療所が一時的なものになってしまわないように、AMDAの医療スタッフによる現地医療スタッフのトレーニングも行います。

 このプロジェクトを計画するにあたって我々は常に村人と意見を交わし、地域のニーズをくみ取る住民参加型のアプローチを取ってきました。このプロジェクトをより良いかたちで実行するためには、各村のリーダー達との話し合い、少数民族をはじめとする家庭への訪問等、まめに足を運び、地元の人との信頼関係を築くことが不可欠です。村でのミーティングでは、女性、少数民族、教育機関や人権団体等の代表者が集まり、プロジェクトについて活発な意見が飛び交います。コソボでは、女性や少数民族が同じテーブルに座って会合を開くことはめずらしいことです。これらの集会は、自分たちの手で、民主的に、地域を復興させるのだという意欲を高めるのに役立っています。村の人たちは、「今まで私達は抑圧され続けて来たため、自分たちで自分たちのことを決定するということはなかった。プロジェクト実行のために私達の意見を聞きに来て、意志を尊重してくれてありがとう」と口を揃えて言ってくれ ました。



プロジェクトの開始に向けて


 冬のコソボでは、午後3時過ぎには日が落ちてしまいます。加えて1日に何度も停電が起こります。停電が長く続く時には、AMDA事務所の隣にあるレンガづくりの家がにぎわいます。国際警察官達の住むこの家には大きな発電機があって、彼ら警察官の友人や、他のNGOや国連の職員たちが暖をとりに集まってくるからです。ストーブを囲んで雑談をしながら、時にはビールも飲んで寒さを笑いで吹き飛ばします。このような人と人とのつながり合いに大変助けられています。

 今回のプロジェクトはAMDA本部と現地スタッフ、その他これまで支援をして下さったすべての方々の努力の結晶だと思います。多くの人々の気持ちを胸に、このプロジェクトを成功させるために頑張っていこうと思っています。また、長い間新しい診療所を待ち望んでいたアルバナの住民たちからは、感謝の気持ちを日本の皆様に伝えて欲しいと何度も頼まれました。プロジェクトを実行するに当たって地域住民の協力は不可欠です。アルバナの人々はただ単に援助を受けるのではなく、自ら地域のために貢献しようという意欲が高まっています。そんな意欲にあふれたアルバナの村長ホージャ氏の手紙をここにご紹介し、コソボからの報告とします。


アルバナ村長からの手紙

 プリズレン県の郊外に位置する私たちの村は、創立以来40年になります。

 著しい人口増加に対して、村では計画性のない政策のために十分に生活水準を保つことが出来ていません。例えば現在でさえ、水も用水路もありません。学校もとても小さく、基本的な教育さえ与えられないような状況です。診療所はとても小さく、村の人口に見合いません。村の人々はこうした問題になんとか対処しようと努めていますが、とても困難です。しかも、上下水道設備の不足は、多くの村人の健康を蝕んでいます。特に子供への影響は深刻です。現在の診療所はとても規模が小さく、とても診療に十分とはいえません。

 我々の村の人口は7,500人ほどでしたが、 いまは700人あまりの難民を抱えています。またボスニア系が42世帯360人、ロマ系が27世帯260人も暮らしています。この村の民族間の関係は「忍耐」と「理解」のことばで象徴されます。これは難民にとっても同じです。

 我々は、村の病者を救うための新しい診療所を建設するというAMDAの支援を心待ちにしています。また、アルバナ村周辺の人々もこのセンターの設備を享受できるように願っています。

アルバナ村のリーダー
ミラジム・ホージャ


Our village (suburb) called Arbana in Prizren is a dwelling founded these last 40 years. Increasing of this village was very fast and unplanned by the state so that it couldn't answer the conditions and the standards of the population for the normal life.

Even now, we are without water and canalization. There is a very small school that can't fulfill even the elementary conditions for education. An ambulance is too small to answer the number of the population and the standards of the time that we are living.

The population of our village is trying to do the best to make these problems smaller, but it has been difficult to solve. Moreover, the problem such as lack of water and drainage lead to the bad health of our people. Many people especially children are getting infected. The existing ambulance in our village is too small to fulfill the needs of the villagers because its capacity is very small to serve the patients.

There are about 7,500 inhabitants and about 700 refuges in our village; there are also 42 bosnian families with 360 inhabitants and 27 roman's families with 260 inhabitants.

The relationship here is characterized by the tolerance and well understating among our village, and it is the same for refugees.

We are asking with this Request from AMDA for help in building a new ambulance that could help and serve the patients. We also think that some villages that are surrounding our village could use this ambulance.

The leader of ARBANA
 Milazim Hoxha
(英訳:アギムグリ)




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