ケニア

スラムの子どもたちの教育環境改善事業
AMDAケニア 徳岡 有佳

AMDA Journal 2005年 7月号より掲載

1.はじめに

ケニアの首都ナイロビにあるキベラスラムは600エーカーの広さの土地に、 約70万人が生活しているといわれる世界最大規模のスラムです。かつては 、南アフリカのソウェトスラムが世界一といわれていましたが、経済的な 生活レベルが高くなり、既に低所得者層が集団で生活している「スラム」 ではないともいわれています。
 70万人も生活しているなかで、もちろん子どもたちも沢山生活していま す。しかし、キベラスラムには公立小学校(2003年より無料化)が5校し かなく、私立小学校は授業料が支払えないという理由で、キベラの子ど もたちの60%以上は、初等教育さえ受ける機会が与えられていません。 また、公立小学校が無料化された影響から、相当数の子どもが公立小学校 に押し寄せ、最近は公立での教育の質は落ちたと言われています。例を挙 げると、キベラにあるオリンピック小学校はかつてケニアで成績がトップ レベルだったのですが、無料化後は生徒が集まりすぎて、今では1人の先 生に対し120人の生徒という割合になってしまっています。通常であれば 1教室に40人が収容できるところを、120人ということになってしまった のですから、どれだけ窮屈かご想像いただけると思います。1mの長さの机 に5人の生徒が座れば、ノートも満足には取れません。そのような状態は キベラだけでなく、ケニア国中の問題となっています。
 一方、私立学校は政府からの援助は一切受けず、大抵は生徒から徴収す る授業料で賄われています。そうはいうもののキベラなどのスラムで毎月 授業料を支払う能力のある家庭は少なく、兄弟姉妹の全員分を支払うとな るとなおさら困難です。そこで学校運営側は、簡単なことではありません が、欧米のNGOや国連などの国際機関からの資金援助に頼るか、あるいは経 営母体が教会であれば、その教会の資金が充てられたりします。キベラに も何十もの私立小学校がありますが、生徒の数の割合に比べて教室数が少 なすぎるとか、教室の状態が悪いとか、トイレなどの衛生施設が不充分で あるなどの多くの問題をかかえています。

キベラのマシモニ小学校の現状

キベラのマシモニ小学校もその一つです。マシモニ小学校は1980年代に 有志の牧師たちが集まって、最初は小規模なストリート・チルドレン救済 事業活動から始まり、現在ではマシモニ地区に約900名の生徒を抱える小学 校を建設するまでに成長しました。しかし、1993年に現在の場所で開校し てから一度も改築は行われておらず、土で塗られた壁や床には大きな穴が 開いています。傾斜した土地の下のほうに校舎は建てられており、雨季に は壁が雨水などで削られ、教室内が水浸しになってしまいます。また、乾 季には穴から入り込んでくる土埃で授業に集中できないという状況にあり ます。実際、乾季には半日キベラに居れば、顔は土埃で茶色になり、また 床に開いた穴に足を踏み外して怪我をする生徒もいます。そのように常に 安心して授業が受けられないような状況の中に生徒は置かれているのです。
 また、900名の生徒に対して溜め置き式のトイレが5つあるだけです。泥 塗りの壁は老朽化していつ崩れて来るかもしれないような危険な状態にあ ります。また便所内には蛆虫が湧いていることもあり、トイレの状況は劣 悪です。またそこは教室に隣接しているのです。授業中も悪臭が漂います。
 生徒は用を足した後、手を洗わずにそのまま教室へ戻る、またそのまま の手で給食(2004年末より国連食料計画の支援で、昼食時にとうもろこし の粉の粥が支給されている)を食べています。生徒の何人かに、「トイレ に行った後は手を洗っているの?」と聞くと、「給食室には水があるから 、そこへ行って洗うよ」、という答えが返ってはくるのですが、実際洗い に行っている姿を見たことは一度もありません。当然寄生虫の問題も深刻 ですし、下痢に悩まされている生徒たちも少なくはありません。
 水に関して言えば、故障したままの給水タンクが運動場内に寂しく放置 されているだけで、外部から購入しているのが現状です。50mほど離れた場 所にある市役所が20リットルを5ケニアシリングで販売している水を購入し 、生徒たちが学校まで運んできて利用しています。この水は主に給食用あ るいは、校舎清掃用に使用されているだけです。
 トイレや給水施設などが未整備であることに加え、校舎の裏や溝などは ごみ捨て場と化しています。 生徒だけでなく周辺住民も平気で学校内にご みを廃棄しているからです。また学校の敷地に限らず、スラム全体の衛生 環境は極度に劣悪です。ごみや糞尿が散乱し、マラリアを始めとする感染 症などの主要原因となっています。

日本NGO支援無償資金協力

このたびAMDAは上述のような状況を改善すべく、外務省の日本NGO支援無 償資金協力事業として、
1)マシモニ小学校の増築
2) 先生・生徒を対象とした保健衛生環境教育およびクリー ンアップキャ ンペーンの実施
3) トイレや給水施設の整備
という3つの活動を実施することになりました。
 具体的な活動内容としては、1)今までより広い教室を4 教室増築するこ とにより、キベラのより多くの子どもたちに教育機会が与えられます。2) AMDAが教師と一緒に、手を洗うなどの基本的なことから、HIV/エイズに係る 問題まで、学校内外における保健・衛生・環境に関する問題について話し合 いトピックを選定していきます。そして、AMDAスタッフが教師を研修に招き 、その後、教師が生徒に保健衛生環境教育を実施します。その一環として衛 生状態と健康との関連性などについての授業も実施し、清掃活動の大切さを 頭でも理解した上でクリーンアップキャンペーンを実施します。清掃の重要 性を理解すれば実際の清掃活動が自然と身につき、家に持ち帰りコミュニテ ィにも徐々に広げてほしいというのが狙いです。キャンペーンについては、 生徒のモチベーションを高めるためにスローガンを考えるコンテストなども 開催する予定です。また、3)10 個の大便用トイレ、2個の男子トイレを新 たに建設し、6,000リットルの給水タンクを設置し、生徒たちがいつでも自 由に水を使用することが可能となります。
 これらの3つの活動を実施していくことにより、生徒がより良い環境の中で 教育を受けられるよう活動していく予定です。今後ともご支援のほど、何卒 よろしくお願い申し上げます。




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