ケニア

保健・環境教育
「1本切ったら2本植えよう!」

AMDAケニア 横森 佳代
AMDA Journal 2002年 11月号より掲載


 AMDAケニアでは、キベラスラムで実施している青年育成プログラムの一環として、毎週水曜日の1時間、縫製・木工の訓練生を対象に、保健・環境教育を実施しています。本年9月より、私自身がこのクラスを担当することになりました。これまで講師をしていた助産婦・看護婦のフリーダが、9月23日より開始した新事業(自主的カウンセリングとHIV&テスト、詳細は次号で紹介)などで多忙になったのでそちらに精神を集中してもらいたいこと、また私としては昨年から履修している公衆衛生分野のアカデミックコースを終えて修得したことをケニアの人々と共に考えていくのに絶好の機会であること、そしてケニアでのコミュニティーの生の意見をもっと聴いていきたいということから、始めることにしました。元JOCV(青年海外協力隊)としてネパールで公衆衛生隊員だったアシスタントの後藤麻子さんと、生徒の事情をよく知っている縫製インストラクターのフィビーと一緒に、このクラスは始まりました。

 授業は2Way Talkの形式で、こちらから情報を提供するだけでなく、生徒たちに自分の意見を出し合ってもらいます。そうして半年に及ぶカリキュラムの中で、衛生問題、疾病予防、母子保健、家族計画、予防接種、栄養など、毎回決められたテーマを話し合ったり、実際に ORS(経口補液剤:塩と砂糖を一定比率溶かした水で、腸からの吸収がよく、脱水症状の改善に用いられる)を作ったり、応急処置方法の実習をします。また時にはゲストスピーカーを招いて、関連する分野の話をしてもらいます。現在、生徒の中で妊娠している人はいませんが、来年1月に迎える私の出産を共に追いながら、女性の体について考えてもいきます。

 そこで、まずは45人の生徒1人1人の名前を覚えて、状況把握することから始めました。日本で多くみられるような静かな授業とは違って、ケニアの
男性は積極的に自分の意見を出してくれます。女性が積極的に発言する訓練を積むことは、家庭で男性の力が圧倒的に強いケニアでは、女性の地位向上、家族計画などの場での自ら選ぶ権利の主張にもつながります。そして、麻子さんの手作りの視聴覚教材は、生徒の目を引き付けます。新しいポスターで、9月から教室がピカピカになりました。こうして、「健康な生活を営むために、最大限の知識を取り入れ、私たちの行動を変えていくこと」を目的に、保健・環境教育の新クラスがスタートしました。

 第1回目は、今後のカリキュラムの紹介と、このクラスの目的を紹介した後、「環境保全」と題して話し合いました。その授業の流れを紹介したいと思います。

1) 環境破壊が地球や人間に与えている現状

 まずキベラスラムでは何が問題でしょうか。この狭い地域に80〜100万人ともいわれるほどの人口過密、放置されたゴミ処理問題、ビニールの低温燃焼によるダイオキシンの発生、上下水の混合、騒音などが、栄養失調、水や空気による感染症、ぜん息、不妊など生殖機能の低下、目·耳·皮膚の病気など様々な問題を引き起こしています。

 ケニア全土でみると、森林破壊による砂漠化、工業化、車台数の増加などが、森林や農地を奪い洪水の被害が拡大し、大気・土壌・水質汚染を生み出し、コレラ・肝炎・ポリオ・呼吸器疾患・下痢・心臓病・肺がん・ぜん息・頭痛など感染症や慢性病、栄養失調を拡大させています。

 そして、日本の環境破壊の例を1960〜70年代に遡り、紹介しました。水俣病、イタイイタイ病、四日市ぜん息、新潟水俣病の四大公害病の症状とその原因に、ケニアの人たちはとても驚いていました。

 世界規模でみると、砂漠化や農薬汚染が森林や農地などの土地をどんなに傷めているか、川・湖・池・海などの水がどんなになっているか、オゾン層や気候変動が大気をどのように変えているか、工業化と都市化、そして仕事やレクレーション・交通などの人間生活が地球をいかに変えているでしょうか。農業に対するダメージはもちろん、食糧危機、地盤沈下、時には国土が海面下に消失してしまう恐れもあり、マラリア蚊や眠り病の蚊の大量発生を引き起こし、資源が枯渇し、洪水や地震などの自然災害の被害が大きくなってきていることが、危惧されます。

2) 環境保全のための今後の方策

 それでは、これから私たちはどのように自然を保持していけばいいのでしょうか。現在の私たちの生活には、薪や建築用の木材が不可欠です。フランスの哲学者ルソーは「人間よ、自然に帰れ」と言いましたが、どうやって自然に帰るのでしょうか?「ニームツリー·灰·ニコチンなどを使った有機農業も1つの方法です。しかし、作物のローテーションをしようと思っても、土地がない種や季節の選択を考えてもお金がない。ゴミ処理問題は行政がやってくれないと、自分たちの手には負えない。首都への人口集中化を防ごうにも、地方では暮らしていけない現実もある。代替エネルギーは簡単にみつかりそうにないし、工業への法規制は政府に任せるしかない。予防接種やワクチンで感染症は防げても、人間個人のためになっても、地球にはどうすることもできない。自分たちはスーパーなどで売っている野菜が危険なことを知っているが、それしかないから選択肢がない。最近できた木材を伐採してはいけない法律は、生活に必要な木材の価格が急騰し、私たちの生活を苦しめている」…様々な意見が出ました。

 その中で「問題を知ることが大事なんだ」ということになりました。何も知らずに日々の生活を送るのと、知って生活を送るのでは、将来の世代へ与える影響が違ってくるはずです。昨今、ザンビアでは食糧危機にあたり、アメリカや国連からの援助食糧の数パーセントが遺伝子組み換え食物であることを知り、拒否しました。ジンバブエやモザンビーク、マラウイは様々な議論の後、受け入れを表明しました。そして大半の生徒たちは、アフリカが自ら選択していくという勇気に、拍手
を送りたいとのことでした。いずれにしろ、アフリカに事実が知らされ、自分たちで選んでいく姿勢を持つことが大事です。

3) 行政が実施していること

 ケニアでは1997年にENSO(エルニーニョと南風)の影響によって、深刻な洪水に直面しました。その後1999年に、環境マネージメントとコーディネーションに関する法が制定され、何かのプロジェクトを始める前に「環境インパクトアセスメント」、そしてプロジェクト実施中から終了まではモニタリング業務として「環境監査」を実施することになりました。これは、環境オフィサーや公衆衛生オフィサーが実施し、違反した場合には罰金などが科せられます。ケニアでは日本よりも早く、環境省ができました。法的な視点から環境に取り組む姿勢は、決して遅れていません。しかし、政府の腐敗などにより、実施の段階になると難しいのが現状です。ナイロビにはUNEP(国連環境計画)の本部がありますが、UNEPやWHO(世界保健機関)と政府との提携も、なかなかスムーズにいかないのが現状です。

 まず知ること。これが将来の世代へつながると期待して。そして私たちは結論付けました「Cut One, and Plant Two(1本切ったら2本植えよう)!」というスローガンができました。これから半年のカリキュラムの中で、みんなと一緒に頭をひねりながら、ケニアのことをもっともっと知りながら、私たちの健康・環境問題について考えていきたいと思います。そしてこのクラスが、AMDA音楽クラブと共に踊ったりして体を動かし、ときにはAMDA保健クラブと提携してHIV/ AIDSなど難しい問題も考え、AMDAケニアのプログラム全体が深まっていくことを願っています。

 最後に、AMDA音楽クラブの小学生たちが暗誦している、「環境」をテーマにした詩を紹介します。

Environment
Brothers and Sisters before you we stand
The truth we want to tell you
We have destructed our environment
With our own hands, God forgive us.

All our natural resources are gone
Water is gone, now left fight for no reason
All our urban centers have water shortage
Our beautiful land turned into deserts.

Kenyans lets stand firm, lets join hands in environment conservation
Let us reject the land grabbing
Let us preserve the water catchments areas
Let us respect God and his creations
Let us join hands and fight against environmental ills.




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