ケニア

AMDAケニア事務所の活動概要

AMDAケニアプロジェクト事務所
アフリカ地域プログラム・オフィサー 横森 健治
AMDA Journal 2002年 8月号より掲載

1. はじめに

AMDAケニア事務所はルワンダ難民支援のため1995年に設立されました。現在、日本人2名、ケニア人8名のスタッフが働いています。ケニア事務所は地域事務所の機能を持ち、ケニアの他、ルワンダ・ウガンダ・ザンビア・ジブチのプログラムに関しても事業の実施促進を行っています。

以下では、ケニア国内のプロジェクトについて説明します。プログラム実施地域はナイロビ市のキベラスラムです。キベラスラムは、南アフリカのソエトに次いでアフリカ第2位の人口規模のスラムと言われています。 キベラスラムでの生活上の問題は、不衛生な居住環境、少ない就業機会、青少年の非行、医療設備の不足、エイズ等です。これらの問題を少しでも低減すべく AMDAは以下の3つのプログラムを実施しています。

2. AMDAドリームプログラム

AMDAドリームプログラムは、キベラ・スラムに住む若者に夢を与えようというもので、青少年育成をねらいとしています。場所は、キベラ役場内のAMDA訓練センターで、職業訓練と小規模融資、保健衛生教育、AMDAクラブ活動を推進中です。

2.1 職業訓練と小規模融資

職業訓練は、1998年から開始されました。縫製訓練と木工訓練からなり、縫製は女性、木工は男性の訓練生が対象です。はじめは、縫製訓練後に卒業生に小規模融資を行っていたのですが、縫製の新規事業に結びつかなかったことと、資金回収が悪かったため今は、縫製の訓練のみ継続しています。 現在、約30名の訓練生を受け入れています。年齢は18歳〜35歳程度。授業料として月に200シリング(約300円)を徴収します。訓練期間は6〜8ヵ月で訓練時間は10:00〜13:00です。

一方の木工訓練は、作業所が狭まく、機械操作を丁寧に教えるため、小人数を対象にしています。これまで2回の初心者コースを実施し、1回目に5名、2回目に4名が卒業しました。訓練期間は約6ヵ月で訓練時間は前述同様10:00〜13:00です。

この初心者コースとは別に、すでに自ら木工所を持ち事業を運営している大工さんに対し20,000〜27,000シリング(3万〜4万円)の小規模資金を融資しています。彼らの事業が拡大し、少しでも初心者の就業機会が増えることを期待しているからです。

2.2 保健衛生教育

保健衛生教育は、教室での保健教育とキベラスラムでのクリーンアップキャンペーン(集団清掃)とからなります。保健教育は、毎週1回2時間、主に前述職業訓練の生徒を対象にして行います。テーマは、環境の人体への影響、基礎的な予防医学、プライマリーヘルスケア、性感染症とエイズ、家族計画、栄養学などです。 今年度からは、保健教育終了後に試験を実施し、成績優秀者を表彰しています。第1回、最優秀者は、100点満点中、98点と言う優秀な成績でした。

クリーンアップキャンペーンは、キベラスラム内の路地やドブ川の集団清掃です。保健教育受講生と地域住民、AMDAスタッフ、約50名で毎月ゴミ片づけをします。特に、ドブ川には、生ゴミ、ビニール袋、プラスティック、人糞などあらゆる種類のゴミが溜まっています。 これを、スコップや熊手、大きなフォークで路上に上げ、黒ビニールに入れて市役所が指定したゴミ収集所に運びます。本来、市役所はキベラスラムのゴミ搬出に責任があるのですが、ほとんど何もしていません。 AMDAとの交渉の結果、AMDAがキベラ内のゴミを幹線道路まで出したら、そこから市役所がゴミを搬出するとやっと取り決めが成立したのです。残念ながら、クリーンアップの翌日にはもうその場所にゴミが溜まっています。 キベラの一部を月に1度きれいにした程度ではゴミ問題は解決しないことはわかっていますが、AMDAのメンバーが汚いドブ川に入り重いゴミを掬い上げ片付ける姿は、人びとにAMDAの活動を印象づけています。

2.3 AMDAクラブ

この活動は、キベラの子供たちに音楽やスポーツの機会を与え、彼らが自己の才能を認識し、自信を持つようになってほしいという願いからはじまりました。子供たちは他人から認められることで自信を持ちます。現在、音楽クラブとサッカークラブを支援中です。

音楽クラブは、マシモニ・フレンズ教会学校の子供たちで組織しています。ケニアや日本の歌の他、スワヒリ語の詩などを学び、半年に1度開催されるAMDA DAYに披露します。AMDAからは縫製訓練生が製作した学校制服をプレゼントします。

スポーツでは、サッカークラブをAMDA DAYに招き、リフティング競技会をしています。2人1組になり、ボールを地面に落とさずに何回突けるかを競います。先日、6月29日のAMDA DAYには18回を記録したエチオピア・ライオンズが賞品の新品ボールを手に入れました。

3. 保健医療プログラム

保健医療プログラムは2001年6月から開始しました。地元住民組織(CBO)であるFREPALSと提携し、AMDA-FREPALS診療所をこのときから運営しています。この診療所における活動は、一般診療、保健衛生改善プロジェクト、エイズ予防プロジェクトです。

3.1 一般診療

この診療所はFREPALSが1995年にはじめたもので、助産院としての機能が充実しています。AMDAとの連携後には、薬品がそろい、助産婦と看護婦が24時間体制で妊婦を受け入れています。また、助産サービスの他、小児科、性感染症、家族計画、予防接種などのサービスを提供しています。

2002年6月の記録を見ると、総来院者は1,044名で、そのうちの初来院者は610名。主な病気はマラリア、下痢、腸チフス、呼吸器疾患、性感染症でした。この月に誕生した赤ちゃんは62人で、妊婦検診には420名、産後検診には180名が訪れました。 予防接種を受けた子供は3,000名で破傷風の予防接種を受けた母親は48名でした。家族計画(避妊教育)のために来院した人は380名でした。

診療所での問題点としては患者が治療費を払わないことがあげられます。患者が来院したときに彼らの経済状態は不明です。治療後の支払のとき、お金がないと言い出すのです。どの患者も後で払うからと身分証明書を置いていきますが、2度と現れません。 現在、日本の有志が、このような不払い医療費を補うために毎月寄付を送ってくださいます。お金がない人にも医療を提供したいのですが、それをしすぎると診療所経営が破綻してしまうのが現実です。

もう1つ困っているのは、捨て子です。この診療所に来る母親で堕胎を希望する人がいます。彼らにどうにかして産むように助産婦が働きかけ、出産となります。しかし、その直後、赤ちゃんを育てられないと言って診療所に置いたまま去っていくのです。 これまでに3人の捨て子がありました。2人は施設が引き取りましたが、3人目は誰も引き取らないため、診療所長のフリーダ助産婦が養子にしました。しかし、ミルクやオムツ等の経費捻出に苦しんでいます。

3.2 保健衛生改善プロジェクト

キベラの川には黒い水が流れています。調理や沐浴の廃水と生ゴミ、そしてフライング・トイレットと呼ばれるビニール袋に入った人糞によってこんな色になってしまうのです。 わたしたちは、クリーンアップキャンペーンで、診療所の周辺と上述のAMDA訓練センターの周辺を清掃しています。2002年6月には、4つの公衆トイレと300メートルの排水溝を建設しました。 4つの公衆トイレは、郡役場のAMDA訓練センター、マシモニ・フレンズ教会、聖マイケル幼稚園、AMDA-FREPALS診療所に住民の参画を得ながら設置しました。排水溝は、マシモニ・フレンズ教会から AMDA-FREPALS診療所の間にコンクリートで丈夫なもの造りました。 これによって、クリーンアップキャンペーンの作業が楽になり、住民の清掃への参加が容易になります。

また、川の水を少しでもきれいにしようという目的で、環境にやさしいセッケンづくりをはじめました。材料は、調理廃油、苛性ソーダ、水です。 調理油を最後まで使いきるケニアでは、調理廃油を集めるのに苦心していますが、このセッケンづくりをきっかけにして、セッケンが環境と人体に与える影響など保健衛生の基礎を住民とともに学べたらと考えています。

3.3 エイズ予防プロジェクト

アフリカは世界でエイズ患者が最も多く発生し、もっとも打撃を受けている地域です。ケニアでは政府の対応が遅れた結果、ほとんどの感染者が自らの感染を知らずに他者にウイルスを感染させています。地元日刊紙は毎日700名がエイズで亡くなっていると報道しています。

エイズ拡大を防ぐには、まず、エイズ検査を受けて人びとが感染の有無を認識することが大切です。しかし、これは精神的葛藤を伴います。「もし、感染していたら、家族はどうなるのか、仕事は、そしてどんな差別が待っているのか」

このような葛藤を乗りきるため、診療所内にカウンセリングと検査施設を設置する計画です。そして、感染者が自助組織をつくり、長生きできるよう支援します。

このプロジェクトでは自己の感染を知って目の前が真っ暗になる人が出るでしょう。でも、もし、その人がエイズを発症するまで感染を知らずにいたら、発症後にはわずかしか生きられないのです。 とてもショックなことですが、感染者にとっては感染を早く知って、それを受け入れることが大切です。落ち込まず前向きに生きることで感染期間を長く伸ばし、エイズ発症を遅らせることが可能だからです。前向きに、楽しく生きる陽性者の中には10年以上生きている人がいます。

このような前向きに自信を持って生きる陽性者たちと協力して「HIV感染は絶望ではない」というメッセージを多くの人に伝え、検査に行くことをためらっている人を勇気づけたいのです。

前向きに生きるためには、「安定した精神状態」「免疫力を高める食事と薬」「家族と友人の理解と助力」「清潔な居住環境」が必要です。これらをどのようにしたら得ることができるかについて陽性者自ら模索・探索することを手助けしていきたいと考えます。

現在、地域普及員とカウンセラーを募集にかけたところです。本年9月にプロジェクト開始予定です。

4. 緊急救援プログラム

このプログラムは、1994年のルワンダ内戦難民への緊急救援からはじまりました。その後、1997年のソマリア洪水、2002年のコンゴ火山とこれまで3回実施しています。

アフリカでの緊急救援は日本からの距離のためか、実施件数が少ないのが実情です。しかし、コンゴ避難民が流入したルワンダの難民キャンプでは、日本からきた唯一のNGOとして避難民、地元政府、国連から感謝されました。 また、1994年当時のコンゴ(当時はザイール)におけるAMDAの迅速で適切な援助活動はコンゴ人に今でも記憶されており、コンゴ避難民から当時の援助に対し賞賛の言葉がありました。

今後も、アフリカでの災害に対しては、ケニア事務所が中心になり、迅速に対応していきます。そのためにアフリカ緊急救援基金を設け、災害時に先遣隊2名を派遣できる体制をつくりつつあります。先遣隊ができるだけ早く現地に入り、活動内容を決定し、活動場所を確保し、活動許可を得ることが大切です。 この情報に基づき、ケニア事務所とAMDA本部が緊急救援チームを組織します。

5. おわりに

以上、AMDAが取り組んでいるケニアでの活動を紹介しました。順調なものもあり、不調なものもありますが、「助け合い」が人間の本性であると主張しつつ、お互いに助け合う間柄をつくろうとケニア人に呼びかけています。

活動を進めるにつれ、多くの障害・問題が現れます。ケニア政府役人の賄賂要求といやがらせ、診療所における未払いの診療費、置き去りの子供、そしてナイロビの治安の悪化など、数えきれないほどです。

しかし、なんとかこれまで援助活動が続けられたのはキベラ住民やFREPALSのスタッフ、その他多くのケニア人がAMDAの活動を認め、その活動を助けてくれたからに他なりません。




緊急救援活動

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