ケニア

AMDA フレパルス診療所

看護主任 フリーダ・エナーネ
翻訳 出口純子
AMDA Journal 2002年 2月号より掲載

2001年6月AMDAケニア事務所は、1995年11月15日に発足した地域組織(CBO)のフレパルス地域看護施設と協定を結び、ナイロビのキベラスラムにおいて、医療サービスの提供と保健医療の質の向上をはかることになった。

プロジェクトの対象となるのはナイロビで最大のキベラというスラムである。人口はおよそ百万人。キベラスラムはやたらに広がった地域で、小屋がけの粗末な住居が密集しておりその中には街路もない。 以前道路であったらしき場所も露店などで埋まってしまい道路の体をなさない。

人目にたたない場所には簡単な便所がある。そこにはだれかが置いた水タンクがあるにしても、パイプはしょっちゅう壊れていて水が出るとは限らない。スラムには驚くほど多くの人間が寝起きしている。 住人はナイロビで事務下級職として働くか、職人も多い。しかしほとんどは、野菜や食料品の行商や露店など小さな商売、ジュアカリ(肉体労働)で糊口を凌いでいる。

住民全体が貧しいため、個人、近隣地域、環境のレベルを問わず、人びとの衛生観念はきわめて低い。その結果路上にはごみが散乱し、道端の溝は水路というより、便所から溢れたらしい濁ったどろどろがたまっている。 ごみの山は悪臭をはなち、ハエが群がっている。ハエの大群はスラム中をとびまわって感染症の原因、細菌をまき散らしている。

このような場所で女性たちはさまざまな商売に精を出している。各種のそうざい、生鮮食品、乾物そのほかありとあらゆるものを売っている。 上述のような生活状態では、コレラ、赤痢、腸チフス、再発性下痢といった感染症がたびたび大発生するのもうなずける。

スラムでは日々の食事にも事欠く家族が多いので、ここでは常に犯罪発生率が高い。このように治安が悪いため、住民は恐怖から猜疑心と不信にとらわれやすい。夜遅くなってから出歩くことは非常に危険である。

ケニヤッタ国立病院とバンガティ郡立病院には、医療費軽減措置を受けられる公共保健組織があるが、多くの場合スラムの住民にはこの補助を受けてもまだまだ病院の費用は高すぎて、結局は治療を受けずじまいになっている。 また特に伝染病の知識がないため感染の危険も非常に大きい。キベラ・マシモニ地区スラム(プロジェクトを実施する地区)はナイロビの中心部からおよそ10キロメートル西に位置する。このスラムの人口はゆうに7万人を超える。 ここでは一部屋に一家族平均6人が住んでいるのが普通だ。このような劣悪な住環境では、衛生状態が悪く、伝染病の蔓延が避けられない。結核はじめその他の伝染性の強い病気がスラムをおびやかしている。 マラスマス、クワシオルコル(蛋白失調症)といった栄養不良による子どもの病気もきわめて多い。このほかにも、子どもがよくかかる病気は下痢、マラリア、腸チフス、急性呼吸器障害など。 保健衛生の問題は住民の経済状態の改善と直結している。現状はスラム全体の経済的な将来の展望が厳しいことを反映している。

キベラスラム内の様子
キベラスラム内の様子

目標とする理念

プロジェクトの主な目標は、キベラ住民に一般的な保健衛生観念をつちかい、基本的医療保健サービスを提供することである。

a)目的

  1. 今も根強く残っている健康に害のある因習、民間療法などを改めるよう地域住民全体を対象として意識改革をする
  2. 実効性があり安価な医療サービスを充実させる

b)活動

  1. 保健衛生の向上、病気予防、治療のサービスを提供する
  2. 医療サービス全体の管理と拡充
  3. 保健省はじめその他の行政との横の連携をはかり、全レベルでの住民参加を進める
  4. 意思決定プロセスに地域のリーダーの意見を含める
  5. 地域全体の生活レベルの向上をめざす
  6. キベラ地区とその近隣一帯で、性感染症、HIV/エイズに関する啓発、自発的カウンセリングおよび検査(VCT)によるケアを実施する
  7. 現在きわめて高いスラムの新生児死亡率と妊産婦死亡率を下げる

活動と実績

およそ6年前にプロジェクトが始まって以来、私たちの開設した外来診療所は十分にその機能を果たしている。診療所では週あたり以下のような診察を行なっている。

  1. 家族計画指導 約60〜80人
  2. 妊婦検診 約50人
  3. 産後検診 約20人
  4. 予防接種(児童) 約50人

その他さまざまな相談に来る人びとのために、個人健康相談、地域環境衛生指導などで対応している。栄養教育も行っている。さらにここで教えたことがどの程度実際に行われているか、指導した女性たちの家庭を職員が訪問するなどフォローにも抜かりない。 このプロジェクトがきっかけとなって、女性たちの小さなグループがいくつもでき、その活動は小規模な起業をすすめて収入の道をはかり、生活レベルの改善につながっている。

スタッフ

  1. ケニア正看護婦/助産婦 2名
  2. ケニア正医療主任 1名
  3. 看護助手 1名
  4. 清掃係 1名
  5. メッセンジャー 1名

財務

プロジェクト開始時からすべての財務状況は適切に記録され、会計士による年次報告がなされる。8人からなる理事会がプロジェクト運営にあたる。

課題と問題点

  1. 病院、看護施設用の建物が未完成
  2. 病院用マットレス、シーツ類の不足
  3. 手術室設備の不備
  4. 医療機器全般の不備
  5. 資金難のため看護スタッフや医師の不足
  6. 電力不足(保安用照明やラボの停電)
  7. 貧困、失業のため治療費負担金の未回収
  8. 貧困のため養育できないので生まれた子どもを遺棄する。治療費が払えない



緊急救援活動

アメリカ

アンゴラ

イラク

インドネシア

ウガンダ

カンボジア

グアテマラ

ケニア

コソボ

ザンビア

ジブチ

スーダン

スリランカ

ネパール

パキスタン

バングラデシュ

フイリピン

ベトナム

ペルー

ボリビア

ホンジュラス

ミャンマー

ルワンダ

ASMP 特集

防災訓練

スタディツアー

国際協力ひろば