ケニア

再びフィールドへ
─ ケニアでの2週間のボランティア


    桑田 絹子(元ミャンマー派遣医師)  
AMDA Journal 2001年 9月号より掲載

 ケニアのナイロビにある人口約100万人が住むというキベラスラム。その一角 にあるAMDA FREPALS CLINIC。もともと助産婦のフリーダさんが軍病院の退職金 でクリニッを建て、少しずつ大きくしていき、普通の診療、お産から母子保健 までさまざまな活動をされていましたが、本年5月31日AMDA と協力関係を結ば れ、いっしょにAIDSプロジェクトなどを行っていこうということで新たにスタ ートしました。滞在中わずか7回の訪問でしたが、その中で出会ったいく人か の患者さんを紹介します。

 その女性はうす暗い部屋のベッドにうずくまっていました。あらい呼吸、激 しい動悸、時折ゴホゴホという咳。長い間熱がいっこうに下がらず、やせ衰え ていました。AIDSでは…。誰もがそう思っているようでした。しかしHIV検査は していません。お金がかかるからというのが理由のようです。とにかく苦しそ うで、なにかの肺炎を患っているのでしょう。とりあえず応急の薬や点滴を行 い、だいぶ楽になったといっていました。

 5月に右腕に大やけどをおった赤ちゃんが、傷の消毒に来ていました。もう 2ヶ月もたっていますが、腕の先の方は完全に皮膚はなく、所々骨がとびだし ています。手術が必要ですが、40,000シリング(約6万円)かかるため、今ま で受けることができませんでした。とりあえず15,000シリング用だてることが できたので、来週手術をうけるといっていました。

 出産直前の妊婦さんがいました。7人目の子供だということでしたが、夫は 妊娠中に結核で亡くなりました。助産婦のフリーダが胎児の心拍が遅いといっ て心配しています。胎児仮死の状態です。その数分後出産できましたが、すで に赤ん坊は冷たく死産でした。蘇生を行いましたが、何の反応もかえってきま せんでした。しばらくして母親の容態がおかしいのにきづきました。冷や汗を びっしょりかいています。血圧が下がり、出血もとまりません。応急処置を行 い、輸血が必要ということで急遽ケニヤッタ病院へ搬送することになりました。 担架にのせ、AMDAのトラックの荷台に乗せて運びました。しかしケニヤッタ病 院の待合い室は他の患者さんであふれかえり、母親は廊下に寝かされたままし ばらく放置されました。しばらくしてやっと入院できるということで、あずけ ることができました。


 15歳の少女が母親とともにやってきました。日曜日に教会で牧師にレイプさ れたというのです。もう警察と病院の検査はすんだということでしたが、母親 がフリーダにどうしたらいいか相談にきたのでした。みんな言葉を失うしかな いという状況でした。

 AIDSで死ぬ人、残される家族、レイプする人、レイプされる人、病気に苦し む人、子供をたくさん産む人、子供をすてる親、すてられる子供、厳しい現実 のほんの一端をかい間見たような気がしました。

 お金がないのに治療をうけにきてお金を払わずに逃げてしまう人、治療を受 けた後に少しずつお金を返していく人、なんとか治療代を払える人、お金がな いため、病院へは行かずに家でじっと我慢している人。いろいろな人がいます が、善も悪もないように思いました。病気で苦しい時は誰もが助けを求めるも のではないでしょうか。お金がなく、治療をうけられず、死ぬしかないといっ た現実が実際にあるのです。スラムはゴミと下水で悪臭を放っていました。し かし、生活する人々には活気がありました。しかしその陰でそんな現実も存在 しているのです。短い滞在でしたが、とにかく何かできることをやらなくては と思わせられました。

 帰国間際、横森ジュニア光君をあやしていて、死産だった子とだぶってみえ て、ここではこんなことは当たり前のことなんだと思っていても、胸にこみあ げてくるものがありました。光君同様 AMDA FREPALS CLINICがすくすく成長し ていくことを願っています。

 今回このような貴重な体験をさせて頂いたAMDAケニアの方々に深く御礼申し あげます。また、AMDAケニアではクリーンナップキャンペーンや職業訓練、健 康教育、青年育成事業などさまざまな活動をされています。困難な状況のなか で活動されておられるAMDAケニアの皆様には本当に頭の下がる思いです。クリ ーンナップキャンペーンでは、横森さん自らゴミだらけのドブの中にはいり、 清掃活動をされておられ、本当にすごいことだと思いました。また、サッカー などのスポーツを通した活動を計画され、「みんな才能があるんだから自信を 持って生きていってほしい」と語っておられました。このほかにも、クリニッ クの整備やAIDSカウンセリングにむけての資金集めや、情報収集など、着々と 前進しておられました。また、産後1週間目にしてすでにAMDAオフィスで忙し く働く佳世さんの姿は、このような活動に対するすさまじい情熱の現れではな いでしょうか。横森ご夫妻を中心としたスタッフのチームワークもよく、今後 ますます発展が期待できそうに思います。治安の悪いナイロビですが、このよ うな活動をされておられる横森さんご家族を、アフリカの方々がどうか守って 頂きたいと思います。

*桑田医師のご寄付により、青年育成事業の一環として、8月25日に「第一回 AMDAカップ(スラムでのサッカートーナメント)」が開催され、9月には「第 一回エッセイコンテスト(職業訓練生によるAMDAの活動に対する意見など)」 が実施されます。また、クリニックの最貧困層の患者さんを救うための「緊急 医療基金」を提案、保健啓蒙カードの導入など、同医師のおかげでクリニック での活動がさらに深化されています。
(アフリカ地域プログラムディレクター 横森佳代)



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