ケニア

「世界環境の日」クリーンアップキャンペーン

AMDAケニア事務所 横森 健治
AMDA Journal 2001年 8月号より掲載

 6月5日「世界環境の日」に、AMDAケニア事務所では、クリーンアップキャンペーンをキベラスラムで実施しました。キベラスラムは、ナイロビ市南東に位置する世界有数の密集居住地です。人口は、数万人と言われていますが正確にはわかりません。

キベラスラムにはじめて入る人は、いたるところにあるゴミの山とそのすえた臭いに気づきます。小さな路地を囲んで、土壁とトタン屋根でできた小さな家がびっしりと隙間なく広がっています。キベラは、法的には誰の所有地でもないのですが、さきに家を建てた人たちがそれを貸し家 にしていますその貸し家の多くには、トイレが付いていません。ですから、人びとは、夜、外で用便をするか、家の中でビニール袋に用便をして川などに捨てるのです。このビニール袋のトイレはFlying Toilet(空飛ぶトイレ)と呼ばれています。飲み水は、市役所の水道を使いますが、お金のある人がそれぞれ水道管を個人的に引き、それを住人に売っています。

 数多くの問題を抱えるキベラにあってゴミ処理問題は深刻です。生ゴミやプラスティック、ペットボトル、ビニール袋といった世界のどこでも問題化しているものがここでもゴミの大部分を占めます。そして、キベラの場合、市役所が設置したゴミ捨て場が西部の舗装道路沿いに数ヶ所あるだけで、大部分の人がそこまでゴミを運べないことが、ゴミを片付けられない要因となっています。これらのゴミのなかでビニール袋が特に目につきますが、低温で燃やすとダイオキシンが発生し、リサイクル資源としても回収されません。キベラのゴミは、川に捨てられ、大雨が降ると一気に下流に運ばれ、ナイロビダムに堆積しているのです。

 AMDAは、これまでクリーンアップキャンペーンと銘打って不定期的にキベラの掃除をしてきました。その目的は、住民が協力すれば地域がきれいになることを示すことですが、もう1つのねらいは、住民と協力して地域をきれいにすることで、AMDAの存在を認めてもらい、受け入れてもらうことにあります。AMDA が安全に活動する上で、地域社会から暖かく迎えられることは必要条件といえるでしょう。

137人が作業に登録する様子
飲み物と石けんを求めて人がどんどん増えました

 今年度からは、この「クリーンアップキャンペーン」に「保健衛生教育」・「トイレおよび給水タンクの設置」・「自然セッケン作り」を加えて、新たな<衛生向上プロジェクト>を開始する計画です。このプロジェクトは、総務省郵政事業庁の補助を得ることが決まりましたので、間もなく、活動が本格化します。

 クリーンアップキャンペーンは、これまで2ヶ月に1回か3ヶ月に1回といった頻度で続けてきましたが、これからは、毎月実施する方針を立てました。そんな時にタイミングよく、ナイロビに本部を置くUNEP(国連環境計画)から、「世界環境の日」の通知があり、その日にあわせてクリーンアップキャンペーンを行ったのです。

 私は、4月に赴任したばかりで、ナイロビのこともキベラのこともAMDA事務所のこともよくわからない状況でした。それで今回は、管理者としてではなく1参加者としてゴミ掃除をしました。事務所内では、参加する住民組織にやる気を起こさせるために、ジュースやセッケン、食事を出そうという意見が出たり、埃を防ぐためにマスクを全員に配ろうといった意見が出ました。しかし、毎月この活動を継続するからには、支出をできるだけ抑えねばなりません。どの程度まで何をAMDAが投入しなければならないかを見極める意味で自分が作業してから考えることにしました。

 その日は暑い日でした。AMDA職員は朝8時に県役場敷地内にあるAMDA縫製訓練所に集合し、準備にとりかかりました。その日までに、キベラでクリーンアップキャンペーンを実施している5つの住民組織に対し、5名ずつ人員を出すようお願いしていたのですが、当日、彼らは105名を連れてきたのです。AMDA側参加者は32名で、これはAMDAが続けている縫製訓練と木工訓練の訓練生ならびに AMDA職員です。その結果、合計137人が登録されました。

 場所は、県役場敷地内と幹線道路3本の計4ヶ所です。全体を4グループに分け、AMDA訓練生がリーダーになりました。各グループに清掃用具の箒、草かき、スコップ、大型フォーク、熊手、一輪車、長靴、AMDA帽子などを配るのが大変でした。どのグループにどの道具を渡したかは記録したのですが、誰がどの道具を使ったか個人的な記録はできませんでした。

 結局、清掃開始は朝10時。女性は主に道路の掃き掃除で、男性はゴミ運搬とドブさらいです。もっとも汚い場所は川に捨てられたゴミの山です。小さな川にビニール袋に入った様々なゴミが浮かび、水はいつも濁っています。わたしは最もゴミの多い橋下のゴミの川を片付けました。橋下にゴミが多いのはゴミを捨てやすいためです。


   川底では大型フォークとスコップを使い、ゴミの詰まった袋を川岸に放り投げます。すえたスッパイ臭いが鼻をつきますが、5分ほどで気にならなくなります。川が小さいので3、4人の男性で作業をします。30分ほどで腰が痛くなりましたが、なかなかゴミの山は小さくなりません。川底の濁った水が顔に跳ね返る時は目に入らぬよう気をつけました。

    自分でやってみて、ゴミの袋を運び上げるのには、大型フォークが便利だとわかりました。スコップだとうまく袋をすくいとれないのです。大型フォークで1つ1つ袋を刺してそのまま川岸に放り投げていきます。ビニール袋がなくなると、その下の生ゴミを水の中からかき出し、スコップで川岸に上げました。腰と足がクタクタに疲れます。約3時間後、川はその本当の姿を あらわしました。こんなに川幅があったのかと驚きです。作業前にマスクが 必要だと言った AMDA職員は、スカーフで鼻を覆いながら作業を開始しましたが、5分後にはそれをとりました。マスクにより埃を防ぐことはできても、臭いは通過してしまいます。そしてなによりマスクをしていては、こんな激しい運動は息苦しくてできないのです。

 もう1つ気づいたことは、住民組織以外から自主的参加者が現れたことです。わたしたちが橋下のゴミを片付けているのを見た近所の男性が、川底に下りて作業に加わりました。彼はその川の反対側で、テレビ観賞用のバッテリーを充電する商売をしている人でした。こんな人がもっともっと増えてほしいものです。

男たちが川底のゴミをスコップとフォークで川岸に運びます

 今回、わたしたちは要所要所に集めたゴミを、一輪車と自動車で市役所が指定するゴミ集積所まで運びましたので、大量のゴミを運ぶことができましたが、ゴミ集積所から離れている地域では、どこにゴミを捨てたらいいのか困ることでしょう。もっとも、そのゴミ集積場所でさえ、ゴミを入れる容器からゴミがあふれ、その周り一帯がゴミに埋もれています。もう何ヶ月も市役所はゴミを収集に来ていないようです。舗装道路沿いのトラックの入りやすい場所ですらそんな状態ですから、とても未舗装の小さな路地にまで公的なサービスは及ばないのです。


  このクリーンアップキャンペーンでは以下のような問題が浮かび上がりま した。


1)当初、参加予定者を90人と想定したが、作業前に137人が登録した。作業終了後のジュースを求め、途中から参加する人がおり、実際の参加者は150人以上に膨れ上がった。このため、リーダーが統率できず、汗だくで働く人と自分の仕事が終わって談笑している人との差が現れた。

2)作業内容と人員・用具の配置にズレが生じた。箒で道路を掃く女性が長靴を履いていたり、ドブや川に入るべき人に長靴がなかったりした。また、力仕事が多い割に男性が少なかった。

3)ジュース、ビスケット、セッケンが最後に配られたが、全員にいきわたらず、不平の声があがった。

4)清掃用具の紛失と破損が生じた。紛失物は長靴3組、草刈スラシャー2 本、草かき1本、AMDA帽子11個、ダストコート2着、たらい3個。破損物は手袋2組と箒1本であった。


 作業後、事務所での反省会で、次回からの方針が以下のように決まりました。

  @次回はAMDA自前の人員でどれだけできるかやってみる。まずAMDA訓練生と AMDA職員で組織的な作業をする。そして徐々に小数の外部者を迎え入れる。

A作業の種類とその作業に必要な人員数をある程度計算しておき、それに対応した用具を各個人に渡し、作業前にそれを記録する。作業後には当人に用具を確認させ返却させる。

Bこれまではゴミ集積所の近くでのみクリーンアップキャンペーンを実施したが、同様の活動をしている既存の住民組織と相談しながらキベラの奥深くまで入り込む方法を考える。

 キベラのゴミ処理問題は解決策の見えない難しい問題です。しかしAMDAケニア事務所では住民を巻き込み、彼らと汗を流しながら、毎月、ゴミの清掃を続けます。たとえ小さな範囲であっても、住民とともに路地や川をきれいにし、彼らと一緒にこの問題を考えたいからです。




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