ケニア

ケニアでの活動を振り返って
林 信秀
AMDA Journal 2001年 5月号より掲載

 1997年11月から国連ボランティアとして、ケニアの首都ナイロビにあるAMDAのアフリカ地域事務所にて活動を行い、今年の2月をもって任期終了に伴い帰国しました。この間の活動を振り返りご報告したいと思います。

 AMDAナイロビ地域事務所は、アフリカ諸国におけるAMDAの活動のAdministration及びLogisticサポートを行う事務所として1995年に設立されました。ナイロビは東アフリカ随一の大都市で、物資の流通や国際線の頻繁な乗り入れなどさまざまな面で東アフリカの入り口としての役割を果たしています。 AMDAのみならず多くの欧米系の国際NGOはナイロビに事務所を持ち、ここを拠点として近隣諸国での活動を実施しています。 事務所設立以来、AMDAのルワンダ難民支援プロジェクトを実施するための中継点として、派遣スタッフの受け入れや難民キャンプへのフライトの確保、プロジェクト物資購入、情報伝達などプロジェクト実施に欠かせない業務を行ってきました。

 1997年度より、ケニア国内における長期プロジェクトとして、AMDAが提唱する「健康と貧困の問題」に包括的にアプローチするABCコンセプトに基づくプロジェクトが開始されました。ケニアのみならず開発途上国においては、医療や健康の問題というのは単独に存在するものではありません。 保健施設や医療施設、医療スタッフの絶対的な不足というのは大きな問題ですが、そういった施設の設置、また医療提供のシステムを構築するだけでは、問題が解決の方向に向かわないという現状があります。 診察を受ける患者や保健衛生状態改善を主体的に行う地域住民が貧困に苦しんでいるために、保健医療システムにアクセスできなかったり、また生活の中で衛生環境を改善する活動ができなかったりするからです。 医療施設にアクセスできないというのはお金がないから診察や投薬を受けられないというだけでなく、医療施設が患者さんから診察料金を徴収できないため運営経費を確保できず、結果として医療スタッフを常駐させることができない、または医薬品を常備できないという悪循環を起こすことになります。 ケニアの保健省は、できるだけ廉価に医療を提供できるようInitiativeを取っており、初診を40ケニアシリング(70円程度)に設定していますが、それでも診察料を払えない人は多く、またケニア政府の財政も十分ではないため、病院や診療所の運営は資金面で完全にショートしています。 こういった現状に対し、中長期的な改善に向け住民の経済的な自立すなわち貧困対策といったものが不可欠となります。ABCコンセプトはここに焦点を置き、職業訓練を行い、マイクロクレジットを実施することにより、住民の経済的な能力を高めてもらうというものです。 AMDAはナイロビ市内にあるキベラスラム地区に住む女性を対象としてプロジェクトを実施しました。これまで約120名の女性がトレーニングを終了し、内40名強がマイクロクレジットの対象となり、小規模のビジネスを行っています。

 地域事務所の重要な課題としてアフリカにあるAMDA事務所と日本の本部の間における情報伝達の円滑化という点があげられています。 近年のインターネットの普及を受け通信のスピードが格段と速くなったことにより、日本とアフリカという地理的な距離によるコミュニケーションの不便さは軽減されましたが、レポートや事務業務上のより確立したシステムが今後必要になると思います。

 3年に及ぶ活動の中で、ひとつ達成できなかったことはケニアでのAMDA支部の設立です。 AMDAは多国籍のNGOとして世界で活動しておりプロジェクト実施の為、日本だけでなく、ネパールやバングラデッシュ、フィリピンからも医師、看護婦、調整員が派遣されています。その基盤になるのが各国に設立されているAMDA支部です。 現在アフリカではスーダン、ザンビア、ルワンダ、ウガンダの4カ国に支部があり、現地スタッフが活動しています。 

 1997年のソマリア洪水緊急救援時にはAMDAウガンダ事務所からウガンダ人医師が、2000年のモザンビーク洪水緊急救援時にはAMDAザンビア支部からの医師がAMDAの緊急救援活動に参加し、被災者の診療活動にあたりました。

 アフリカは援助を受けるだけの大陸ではなく、自国内の問題だけにとらわれずにグローバルに相互扶助を実施する基盤が既にあると私は考えています。 今後AMDAのネットワークの基盤となる支部がアフリカ各国に設立され、緊急救援プロジェクトだけでなく長期開発型のプロジェクトも含め、AMDAアフリカのメンバーが世界中で活躍する時代がくることを期待しています。

 最後になりますが、AMDA本部事務局での勤務を含め5年にわたりAMDAのプロジェクトに携わってきました。この間、多くのAMDA支援者、支援団体そしてボランティアの方々のご協力やご助言を得て、どうにか業務を遂行してまいりました。心中より感謝申し上げます。 また、今後もますます大きくなるニーズに応えるべく活動を展開するAMDA本部職員、プロジェクト派遣者とAMDA支部メンバーの皆様の更なるご活躍を心より祈念しております。




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