ケニア

ナイロビスラムにおける
マイクロクレジットプロジェクト


AMDAナイロビ事務所
所長  林 信秀
AMDA Journal 2000年 10月号より掲載

 現在、AMDAナイロビ事務所では、ナイロビ市内キベラスラムに住む住民 を対象とした2件のマイクロクレジット(小規模融資)事業を実施していま す。今回はこの2件のマイクロクレジット事業の紹介をします。

1)職業を持たない女性を対象としたマイクロクレジット

 この事業は1997年度より開始された事業です。スラム地区において、義務教育を終えることができず、また手に職を持たない収入の機会を持たない女性に小規模の貸付を行い、少額ながら定期的な収入を得てもらうことを目標としたプロジェクトです。

 返済方法は従来のマイクロクレジットのシステムですと連帯責任となっており、コミュニティーまたは村の中でのグループプレッシャーがひとつの成功の要因となります。これはビジネスをうまく回転させるためのグループ内での助けあい、また返済に関する責任の分配といったことによりプロジェクトを成り立たせています。

 しかしながら、スラムの現状をみると、収入のチャンスがまったくない貧困に苦しむ人々は個人化しており、地方のコミュニティーにある生活共同体としての連帯感が欠如しているケースがよくみられます。これは住民が何とかチャンスを 得て、困難な現状を脱したいという気持ちとそのチャンスが絶対的に不足していることにより、過当競争になってしまっているからではないかと感じられます。

こういった中でマイクロクレジットのキーワードであるグループ作りというのは非常に難しい状態です。この為AMDAが実施しているプロジェクトでは、グループ作りよりもいっしょに活動する時間の長さというものをキーワードとして実施しています。具体的にはマイクロクレジットを実施する前に行われる6ヶ月間の訓練の成果をもってマイクロクレジットの受益者となる資格を与えられるという形態です。

訓練の中にはミシンの職業訓練、基礎的な保健衛生講座、及び基礎的なビジネスマネージメントの授業が含まれ、月曜日から金曜日まで毎日行われます。この訓練の成果、及び訓練中の出席日数などが、審査の対象となり、マイクロクレジットへと移行していきます。マイクロクレマイクロクレジットの支給を受け、ミシンを購入し、お店を始めた受益者野菜に投資し、店を出して販売し利益を確保ジットの返済期間が1年ですから、訓練を含むと約1年半にわたり、AMDAとともに生活改善及び収入の確保に取り組むことになります。

 現在までに3回の訓練が終了し、第4期生がこの10月に訓練を終了することになります。第1期の訓練生については、13名がマイクロクレジットの支給対象者となりましたが、残念ながら一人も完済者が出ませんでした。

これは、AMDAナイロビ事務所側のマイクロクレジットへの不慣れさと、ビジネスに関する訓練生の認識の甘さからくるものだと考察されました。この為、第2期目以降事業の中に第1期目にはなかったビジネスマネージメントの授業を取り入れ、マイクロクレジットをうけて実施する商売を少しでもスムーズに進められるよう改善をしました。

 第2期目及び第3期目のマイクロクレジットの進捗状況は下表のようになっています。


第2期 1999年3月支給  マイクロクレジット受領者総数   13名
返済完了          
  4名
返済が計画より送れているが完了見込
  8名
完了不可能    
(商売の継続が不可能の為、マイクロクレジットで購入した資材を返納)
   1名

第3期 2000年2月支給  マイクロクレジット受領者総数   15名
計画より早めに返済が進んでいる   
  2名
ほぼ計画に沿って返済が進んでいる  
  11名
計画よりも返済が大幅に遅れている  
  2名


2)既にキベラにて個人で商売を行っている
  家具職人を対象としたマイクロクレジット

 こちらは上記の女性を対象としたマイクロクレジットとは違い、既にスラム内で家具製作の商売を行っている人を対象としたマイクロクレジットの支給を行うプロジェクトです。既に家具の製作販売をしている職人に、さらにレベルの高い技術を移転し、必要となる機材を購入するためのマイクロクレジットを支給するというものです。

 このプロジェクトはトレーニングセンターの建設費及びトレーニング機材の購入費、そしてマイクロクレジットの原資を外務省の草の根無償資金からの協力を受け実施します。今年の3月に草の根無償資金によるプロジェクト実施の調印式を行い、8月現在でトレーニングセンターの建設が完了しました。9月初旬よりいよいよ家具製作の技術訓練が始まります。

 このプロジェクトでは、技術訓練やマイクロクレジットとの支給の前に、 参加希望者たちによるグループ作りがまず行われます。約半年にわたってグ ループ作りを行い、グループとして木材の共同購入や展示会への参加を行い グループ内の結束を高めていきます。こうして出来上がったグループのメン バーが技術訓練とマイクロクレジットの支給を受け、機材を共同購入し商売 を拡大していくというものです。

 既に第1期目のグループ作りは終 わっており、受益者たちはトレーニングに参加する準備ができています。こ のプロジェクトは1ランク上のクオリティーを持つ製品を作ることにより、 キベラ内で販売されている質があまりよくないが安いという製品を買う消費 者だけでなく、スラムの外にでても消費者のニーズに応えられるだけの製品 を作ることでスラム内の家具職人たちに新たな消費者を得てもらい、スラム 地区全体における商業活動活性化を担ってもらうことを目的としたプロ ジェクトです。         

 以上のようなAMDAの専門である国際医療協力の中で特に、保健衛生の 改善という課題と密接に絡み合う貧困対策に視点をおいたABC(AMDA BANK COMPLEX)プロジェクトは少しずつではありますが、その成果が確 実に出始めています。現在アフリカにおいて、AMDAはザンビア、ルワンダ、 ウガンダでも、都市部の貧困層を対象としたABCプロジェクトを実施しています。

ABCプロジェクト
(AMDA バンク コンプレックス プロジェクト)

目的…貧困層への生活向上および自立支援
内容…保健衛生教育・職業訓練・マイクロクレジットを組み合わせた総合的事業




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