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講習を行う海口専門家 |
1. 事業の概要
ホンジュラスの中東部に位置する農村地域トロヘス市においては、これまで実施されてきている保健衛生活動を通じて、
住民の生活向上を実現するには、彼らの活動の中心である農業、そしてそれを支える自然環境を向上させることが重要で
あることが明らかになった。これをうけ、一昨年度に同市の10村落に対して、森林、農業、栄養状態および生活状況について
調査を実施し、様々な問題が確認されたと共に、生活状況を向上させたいという住民の意欲も明らかになった。この結果を
踏まえ、昨年度は、多種類の野菜栽培および果樹・材木用樹種の植栽を実施し、現地農林業技術者と協力し、その後の活動
のフォローアップを実施した。今年度はさらに対象地域を広げ、活動を継続している。
2.今年度事業
@農業
2004年9月より約2ヶ月間、現地農業普及員と共に昨年度の事業評価、新たな地域での調査、および2村(グアニート、
サンアントニオ)での、栄養・生活改善を目的とした、野菜栽培および既存の栽培技術の向上、省エネかまど作りを行っている。
昨年に続いて、この事業も2年目となったグアニート村では、昨年の経験を生かして、積極的に野菜栽培を行っている人も
少なくない。トマト、ピーマン、キャベツ、キュウリ、二十日大根、ニンジン等、日常食べなれているものから、新しい
ものまで栽培している。日頃村では手に入りにくい野菜を家庭で自給できることは、栄養状態の改善また生活の向上につ
ながるものである。今年はその定着とともに、さらに多種類の野菜を栽培し、基礎知識の向上をはかろうと、農家の方々も
積極的に参加している。
そして、昨年、実験的に設置した省エネかまどは、薪消費の削減と、煙による健康不良の改善、住環境の改善につながると、
現在、村民の注目を浴びる存在であり、今年はより多くのかまどを設置する予定である。
今年からこの事業を開始するサンアントニオ村では、野菜栽培は全くの初心者であるが、グアニート村と同様、彼らが家族の
栄養状況、衛生環境に意識を持ち、既存の栽培技術(雑穀類)の向上へもつながるような活動を行っていきたいと思う。
2村とも、栽培講習会と共に、農家巡回、野菜料理教室を行っていく予定である。そして派遣期間終了後は、現地普及員が
引き続き、事業を継続していく。短い期間ではあるが、農家の方々に貢献できるよう、がんばりたいと思う。
A植林
前年度の2村(農業と同地区)における事業の評価については、いくつかの課題もあったが、みかんやマラカジャなど既に
結実したものもあり、住民も自ら1本1本の木に防護柵を作るなど、インパクトのある結果が得られたと考えられる。
今年度はサンアントニオ村において、事前に植林の技術的指導と現地専門家による森林環境問題に関する講習会を、
学校生徒と男性グループに対して2回行った。その後、2日間に渡り、植林予定地の下地整備と、学校・サッカー場など4ヶ所
に232本の果樹・材木用樹種の植林を実施した。またこの植林体験を踏まえ、各家庭でも植樹できるように193本を配布した。
(1家庭あたり4〜5本)当日、現地では道路舗装事業が重なり、ヘルスボランティアが参加できず、まとまりと参加者数の
減少が懸念されたが、青少年を中心に30名ほどが参加し、迅速に手際よく植林することができた。また女性も数人ではあるが
、苗木配布の手伝いをするなどの参加がみられた。植林活動後すぐに、家畜用防護ロープを設置し鉄線を自ら購入、
またサッカー場に植樹した木々には防護柵を設置、そして蟻駆除対策を行うなど、住民の木を守ろうとする思いと植林活動への
積極的な姿勢を伺うことができたと考えられる。「子ども達のためにフルーツの森を作る」と学校周辺には主に果樹を選定し、
一所懸命植える住民の姿に、目を細める思いであった。
今後は農業事業同様、現地専門家によるフォローアップを続けていく。内容は病害虫対策などの講習会の開催、樹木の生育と
防護柵の設置確認等である。
トロヘスはほぼ全域において森林破壊が進んでいる。現在もなお、数年前の松くい虫被害の爪あとや農地化のための焼畑、
放牧そして薪取得による樹木伐採が続いている。そのような現状を前に、大量生産でき多数の住民が参加しやすい播種から
の苗木の育成と苗畑づくりといったような事業形態が求められるであろう。同時に、確かにこの事業を通じて、住民に周辺
森林環境問題に対する意識の変化が現れ始めたのも事実である。住民自ら樹木用の種を購入し、苗畑づくりを試みる計画も
練られている。今後も彼らとともに長期的視点に立って、森林環境問題に取り組む姿勢が必要であろう。
この活動は(社)国際農林業協力・交流協会のご支援を受けて行っています。
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講習を行う庄司専門家 |
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