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ロールプレイを用いたワークショップ(右が筆者) |
ワークショップは、お互いのことを知り合うところから始まる |
AMDAホンジュラスでは、1998年のハリケーンミッチ被災者への緊急医療救援より引き続いて、長期的な保健衛生活動を行っています。
ホンジュラスという国は、まだまだ日本では馴染みのない国だと思います。ハリケーンミッチの時には、初の自衛隊の緊急援助が行われ、日本のメディアを騒がせました。このとき、自衛隊派遣には、日本だけに留まらず、世界が目を向けていたことを思い出します。しかし、6年目を迎えた今、この中米の小さな国の名前さえ過去のものになってしまったのではないでしょうか?ホンジュラスは1人当たりのGNPが927ドル、日本の30分の1という貧しい国です。
1日1ドル以下で生活している貧困者が国民の70%を占め、その50%は最貧困層と言われています。日本のマスコミで取り上げることが少ない、この小さな国で、今何が起こっているのでしょうか?
1985年、プエルトコルテスという港町でホンジュラス最初のエイズ患者が登録されました。たった一人のエイズ患者が、今では約60,000人のHIV感染者に増えてしまったのです。この感染者数は、中米一となり、同地域の60%を占めます。
60,000人という数は、15歳以上のホンジュラス国民の1.2 %を占めています。1年間で、600から1,200人の新しい感染者が増えています。感染者の50%は15歳から24歳の間で感染しているということも忘れてはいけないと思います。この年齢で感染するということは、彼らが次の世代で親になった時に子どもに感染する、さらに彼らが亡くなった時には、子どもがエイズ孤児になることが予想されます。
このようなことから、2000年よりAMDAでは、エイズ予防教育を開始しました。エイズ予防教育を学校やコミュニティで行っていますが、彼らの知識の低さや、エイズについて、間違った知識を持っている人がたくさんいることに驚かされるとともに、エイズの知識を与えることだけでは予防に繋がるものではないことを実感しました。
HIV感染経路のほとんどは性交渉によるものです。20歳までの女性の出産率が50%ということからも、性交渉の
開始年齢が日本に比べとても早く、コンドームの普及率も低いうえ、女性たちは、妊娠しないためだけに、手軽な避妊法として、ピル(経口避妊薬)を使用することから、性感染症、HIVから身を守ることができない状況なのです。
そこで、エイズ教育の場を、コミュニティから学校へ移し、思春期の若者が、自分のセクシュアリティー(性)を理解し、自己尊重、コミュニケーション、将来の展望を明確にできるように、青少年育成というプログラムを作成しました。この青少年プログラムは、ホンジュラス保健省の教材に、AMDA独自の参加型手法を組み合わせ行っており、学校での活動は今年で3年目になりました。生徒たちからも、「この授業があるからそれを楽しみに来た」、「学校の先生や、親からは聞けないことを聞くことができる」という反応があり、授業をする私たちにもやる気を起こさせてくれます。最初の年にこのプログラムを受けた生徒は、中学を卒業し、高校2年生になりました。高校生になった生徒たちは、母校を訪れ、私たちに声をかけてくれたり、後輩に、私たちの話をよく聞くように促してくれます。 3年前小学6年生で、クラスで一番小さかった男子生徒は、教師たちから、横着で扱いにくく、とても卒業できないだろうといわれ、学校が終わると、市内の繁華街で、物乞いをし、自分のお小遣いにしていましたが、3年後に出会ったその少年は、きちんと中学に進級し、いまも勉強を続けています。
私たちの活動地域は、貧困層の居住地区で、生徒たちの中には、学校に来る前に、新聞や主食のトルティージャを売ってから、学校に来る生徒もいます。中には、物乞いをする生徒もいます。しかし、少ない収入でも、子供たちが簡単にそれを手に入れることは、学業を挫折させる要因にもなりかねません。そんな彼らに、将来の希望を持たせ、勉強を続ける意味を理解できるようなお手伝いができたらと、考えています。
この活動は、国際ボランティア貯金、フェシリモ地球村の基金、AMDA 鎌倉クラブのご支援を受けて行っています。
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ワークショップに参加した生徒たち |
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