ホンジュラス

ホンジュラス農林業支援プロジェクト


野菜栽培専門家 瀧本 里子
AMDA Journal 2003年12月号より掲載


プロジェクトの概要

AMDAでは、昨年に引き続き国際農林業協力協会(AICAF)のご支援のもと、ホンジュラスのトロヘスにおいて、地域農林業振興と栄養改善を目指したコミュニティ開発プロジェクトを実施している。

住民への野菜栽培を指導する筆者
住民への野菜栽培を指導する筆者

昨年度は、AMDAのコミュニティ薬局がある16の村落を対象に森林科学の専門家が、森林、農業、栄養状態および生活状況について調査を実施した。その結果、薪用や農地化のための森林伐採、農林業についての知識および技術の不足、農作物の種類が少ない、子どもの栄養状態が悪い、といった問題が確認された。また、農林業を促進し、生活状況を向上させたいという住民の意欲も明らかになった。今年度は、この調査結果に基づいて、子どもの栄養状態が悪く、また、住民の同事業に対する参加意欲が強い2つの村落(エスパニョールとグアニト)において、野菜栽培と植林の技術移転を行うため、それぞれの専門家が派遣された。

8月から10月にかけて実施された専門家の活動は、村落の資源を活用・保全し、持続可能な農業法を住民と探り、確立するというものである。具体的には、堆肥作りなど地元の材料を使用しての土壌改良や、自然農薬作り、混作、輪作、を通じて積極的に持続可能な農業を進めていく。

活動時期が雨季であったこともあり、多発する病害や虫害などを生きた材料としながら、簡単な診断もできるよう農薬の正しい使用方法と組み合わせて勉強会を実地した。現地では野菜の消費量がとても少なく、バリエーションも少ない。現地に豊富にある果物、野菜の栄養価を再認識し、また新しい野菜の導入なども視野に入れた栄養講座、野菜の調理・試食なども実施した。

今後は、地元の農業機関がフォローアップを行い、家庭菜園を普及させ、家庭の自給率を上げ、栄養改善と健康管理を促進していく。


感想

活動もあと一週間で、各コミュニティへ最後の訪問を残すのみとなった。現地に着いてからは毎日夕方には土砂降りの雨が降り、日本では主にハウス栽培に関わり、ボリビアでは乾燥地帯での野菜栽培に携わった私はこんな雨降りでは、病気がいっぱい出るだろうな…と心配していたが実際その通りになった。とにかく短期間なので、いかに現地で活動している農業機関から情報を引き出し、結果が出ている技術を移転するかがポイントになると思い繁盛に足を運び、情報交換に力を入れた。また、実践技術の元にある理論的な「なぜ、そうするのか」という基本的な概念を知ってもらい、たとえデモストレーションで結果が出なくても意欲を喪失することなく応用できるようにしたいと考えた。予想していた通り、又はボリビアの経験からも、理論的な説明はなかなか難しく、識字率も低い事から絵や写真やパワーポイント、ホワイトボードなど視覚教材を使用して行った。

やはり興味を示すのは、自然農薬や堆肥づくりなど実践トレーニングでみんな興味津々だった。自然農薬は、農薬と同じ効果を期待していたのでは「効かない」という印象を持たれてしまうので、農薬と組み合わせて使うように指導したが、農薬も買えないという人が多かった。現地の主要生産物のとうもろこし、フリフォール(赤豆)には殆どの農民が除草剤、化学肥料を使用しており、適切な農薬利用方法が分からずに農薬の多量利用と多回数散布による出費に悩む農家が多い。また、現地で一番悩まされている虫害は、私も初めて出会った「葉切り蟻」だった。ぎょっとするくらい大きな蟻で、ペンチのような歯を持っていて、噛み付かれたら肉も食いちぎられそうである。一夜の内に野菜などは茎だけを残して葉っぱを全て巣に運び去ってしまい、果物の苗木、成木、殆どの木の葉っぱを食いつくしてしまう。

野菜栽培に参加する住民
野菜栽培に参加する住民

植林の活動で、地元の学校や森林開発公社から寄贈していただいた材木用の苗木、事業で購入した果樹の苗木をコミュニティに引き渡す際、この葉切り蟻対策には力を入れた。「ソンポポ(葉切り蟻)にやられた」という話しはこの辺りでは常識化している。しかし、効果的な農薬はあり、必要な手入れを怠った為というのが最大の原因なので、地元で効果的な対策法を確認し、オレンジととうもろこしの生地と農薬で作る毒餌も作るなどして、苗木を守った。今の所被害はとても少ないが、幼苗、成木に関わらず被害は出るので引き続き手入れをすることが必要である。

栄養価の高い野菜の導入ということでビタミンCを多く含むブロッコリー、カリフラワーの栽培の導入を試みた。収穫まで2ヶ月以上かかるため、栄養講座を企画し、その後ブロッコリー、カリフラワーの調理、試食も行った。その際、女性の日頃の仕事を再認識してもらうために、男性が調理実習をするという試みも行った。彼らの伝統的な習慣に新しい野菜を導入する時はやはり「この野菜、美味しいじゃないか!」→「なんていう名前?」→「栄養もあるの?」→「作り方は?」という風に栽培意欲をかきたてるために、とにかく「食べる」ことから始めた。これはなかなか効果的だったように思う。

自分が食べた事もないものは栽培しないし、地元で食べる習慣もないのに売れるわけはない。先ずは家庭内で色々な食べ方を模索し、嗜好にあわせた食べ方が定着し徐々に広がっていく。新しい野菜が普及するときというのは、こういうプロセスもあると思う。彼らが、栄養を考えて食べるということはないと言っている通り、その方面からのアプローチは難しいだろうと思う。しかし、食べているものにどんな栄養があり、それを評価した上で野菜とのコーディネートを指導する事が肝心かと思う。食べ方については現地で大量に使われているバターや、豚脂、香辛料なども使いつつ、美味しい野菜の調理法をフォローしたいと思う。特に女性については、野菜の調理に興味を持っている。

私自身もコミュニティに滞在中は村の伝統料理を教えていただき、夜は教会の集いに参加する中で住民の暮らしのペースというのを体で感じる事ができた。滞在したからこそ味わえた経験であった。

長い歳月をかけて作られて来た伝統的な生活、農業法というのは一つ一つに意味があり、それを他の国から来て短期間で何か結果を残そうと言う事は押し付け的になる可能性もあり、ともすると彼らを振り回すだけという結果にもなりかねない。もちろん、彼らが求める必要な技術の移転という大きな仕事もあるがそれを実現する上でも、もっと人間的に成長する必要があると感じている。自分がどんな農法を目指すかと言うことも含めてこれからの自分への課題である。フィールドに出る度に色々収穫ががあるので、それを今後に繋げていきたい。

また、ホンジュラスの植林事業には必要性を感じる。トロヘスの山は、はげ山になっており、大雨が降ると川は増水し、コミュニティへの道路は通行不能になり、崖崩れが起こり、土壌浸食も進む。洪水の危険性もある。私自身今回の活動を通して、今後も植林に関わっていきたいと思う。




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