ホンジュラス

ホンジュラスHIV/AIDS予防教育

AMDAホンジュラス 渡辺 咲子
AMDA Journal 2002年 12月号より掲載

1985年カリブ沿岸都市、プエルト・コルテスの同性愛者がホンジュラス最初のAIDS患者だと言われています。その後、感染は急増し、2001年8月には16,346人がAIDS患者として登録されています。しかし、この背後には5、6倍のHIV感染者(AIDSの症状がなく、感染に気が付いていない人)がいるとも言われています。

ホンジュラスのHIV感染者の特徴は母子感染と若年層の感染です。HIV感染者の6%は6歳以下の小児で、中央アメリカでは最悪の患者の増加率を示しています。 この問題の中には年々増加する農産業における児童労働があり、数年前にはコーヒー豆収穫時期に短期雇用されていましたが、現在では化学肥料を大量に使用するメロン農園、タバコ農園、海産物加工工場で働く子供が増えています。このような子供達は学校から離れるだけではなく、心身の発育を妨げる要因になります。 児童労働には売春も含まれます。子供の売春の理由は貧困だけではありません。その他にも麻薬や食べ物のため、また、家庭放棄の手段として売春を選ぶ子供もいるのです。ホンジュラスでは家庭内暴力の問題は深刻で、多くの若年売春婦のきっかけは家庭にあるのです。 家庭内で虐待された子供達は、その攻撃的な状況から売春行為のきっかけを訓練されていると言っても過言ではありません。家庭放棄の理由として、また生き延びていく為の手段としてこのような行為に及んでいくのです。

ホンジュラス保健省は母子感染を防ぐ為、2001年から妊婦に対し、無料でHIV抗体検査を施行しています。ただしこれは自主的な検査で強制ではありません。 この検査で陽性(HIV感染者)だった妊婦に対して、出産まで抗レトロウイルス薬(抗HIV薬)が無料で配給されますが、現在までに出産後、または出生児がHIV陽性の場合の処置は何も保障されていません。

昨年からホンジュラス保健省はHIV陽性者、AIDS患者に対しても抗レトロウイルス薬の配給をしていますが、この恩恵を受けるのは年間に約300人、抗レトロウイルス薬を購入することも可能ですが、一ヶ月の治療費はUS$800〜1000ドルと言われ、人口の75.8%が貧困層でそのうち54.5%が最貧困層にあるホンジュラスで、この薬を購入できる人は極僅かです。

ホンジュラスでは、AIDSが不治の病で、高額な薬を必要とし、性交感染するということは小さな子供でもよく知っています。それでも毎年感染者が増加する理由は何でしょうか? 多くの人が、私は大丈夫、私はエイズには罹らないと信じているからではないでしょうか? エイズ患者は誰も好んで感染しているのではありません。

エイズ予防教育

AMDAホンジュラスは2000年からヘルスボランティア、教師、学生を対象にエイズ予防教育を開始しました。エイズ予防教育はエイズについて学ぶと共に、エイズは特別な人だけに感染する病気ではなく、誰にでも感染の可能性があることを認識してもらいます。

学校からエイズ予防教育を依頼される機会が増えるなか、教師に対するエイズ予防教育の必要性が浮かんできました。子供達はエイズという言葉を知っています。授業の中でエイズが話題になることもあるそうですが、子供を指導する教師でさえ、エイズについて正しい知識を持つものは少ないのが現状です。 教師対象に行ったエイズ知識についてのアンケートでは、エイズ発症の原因を知らないと答えた教師は全体の47%、食器や洗面所を共有することで感染すると答えた教師が22%、動物に噛まれたり、蚊に刺されたりしても感染すると答えたものが38%、外見で感染者と分かると答えたものが25%もいるのです。 子供達も同じようにエイズについて誤解していることが多く、ワークショップでは誤解を正すと共に、視聴覚教材やゲームを通し、エイズが身近なところに存在することを理解し、パンフレットを配布し、このワークショップが自分だけの知識にとどまらず、家族や友人と共有できるように指導しています。

青少年育成プログラム

ホンジュラスのHIV感染者は性交が活発な20〜30代が最も多く、全感染者の67%を占めています。 ホンジュラスでは、18歳の女性の約45%、15歳の女性の8.5%はすでに性交経験があり、20歳の女性の50%は出産経験があることから、性交開始前の青少年へのエイズ教育が必須であると共に、自己形成の時期である彼らに、周りを取り囲む環境、家族、友人について考える機会を持ってもらう為、今年度よりエイズ教育だけではなく、自己認識を含む性教育を開始することになりました。 これを青少年育成プログラムと呼び、首都テグシガルパ市内2校の小学6年生と中学3年生154人を対象にスタートしました。プログラムの内容は、次の通りです。

  • 自己認識
  • 家族の対応
  • 将来の展望
  • 男女平等
  • 性とは
  • エイズ予防教育
  • 若年妊娠(中学3年生のみ)
  • 避妊法(中学3年生のみ)

中学3年生に若年妊娠について授業を行った時、生徒に若年妊娠をテーマに、母親の年齢と妊娠中の状態、家族と相手の反応、現在の状況について、ストーリーを書いてもらいました。このストーリーを書くことで、若年妊娠のリスクを考え、行動に移す前に何を考えなければいけないかを知ってもらうためです。 学生のすべてが実話を書いていました。中には、妹が13歳で妊娠し、死産を経験した話、既婚の男性と関係を持ち妊娠した友人の話など様々でしたが、残念なことに、ハッピーエンドはとても少なく、家族、恋人から見放された、母子家庭になったという結末がたくさんあり、スタッフの1人は涙を流しながらこのストーリーを読んでいました。

エイズについて誤解がたくさんあることを書きましたが、性についての誤解もたくさんあることが分かりました。例えば、女性も射精する、月経中は卵を食べてはいけない、男女とも声変わりをする、避妊用の注射は陰部にする、避妊薬は性交のときだけに服用するなど、まだまだたくさんあります。 子供達は両親や家族以外にこういった質問に答えてくれる人がいません。メディアや友人から得る情報は正しいものばかりではないのです。このような質問をできる機会を作るのもこのプログラムの大切な目的です。




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