ホンジュラス

AMDAホンジュラス活動報告

ホンジュラスプロジェクト事務所
駐在代表 渡辺咲子
AMDA Journal 2002年 9月号より掲載

トロヘスコミュニティー薬局


 昨年スタートしたトロヘスコミュニティー薬局は、今年6月までにトロヘス市内29のコミュニティーで住民2,813名に利用されました。 コミュニティー薬局開始以来、毎月報告会を行い、運営状況を聞いていましたが、どのコミュニティーも上手くいっている、問題はないという答えでした。 これを信じていた私に大きな問題がはね返ってきたのは、今年の2月上旬のことです。

コミュニティー薬局支援プロジェクト
コミュニティー薬局支援プロジェクト
 コミュニティー薬局は、ヘルスボランティアが医薬品の販売、運営管理を行っているため、その地域を管轄している保健省地域課に運営報告の義務があります。 その報告書の準備に取りかかったとき、ボランティアの書いた報告書が読めない、または記入されていない事実を発見したのです。 報告書は2枚からなり、1枚目は薬品を販売した際に記入する日誌、2枚目は1ヶ月の薬品販売状況をまとめたものですが、2名のボランティアを除き、あとは全滅状態でした。 主な問題点は、日誌の記入をしないため、販売額より購入額の方が多くなっている、つまり赤字を出している、在庫薬品の量が不明、抗生剤の使用量が守られていない、成人に小児用薬品を販売しているなどでした。 運営管理、薬品処方の安全性に大きな不安を持った私は、すぐにトロヘスへ連絡をし、ボランティアへの薬品販売を中止しました。 AMDAスタッフは各ボランティアの報告書に細かく目を通して問題点を書き出すことにしました。

 2月のミーティングでは、ボランティアから要請のあった外傷の応急処置についてワークショップを行う予定でいましたが、報告書のあまりのひどさに落ち込んでしまった私は、ボランティアの前で大爆発する羽目になったのです。 書き出した問題点をボランティアたちに見てもらい、どう対処するか話し合うことにしました。 しかし、日誌の記入は忙しい最中にこられると、処方だけして記入するのを忘れてしまうことがある、抗生剤の処方量が守られないのは、患者が経済的な問題で治療量を購入することができない、薬嫌いの患者に対し、シロップなら飲み易いので処方した、と言い訳が絶えず、対処法が出てきません。

 ここでボランティア達に考えてもらったことは、コミュニティー薬局の目的です。コミュニティー薬局は地域住民の健康サービス、医薬品使用の安全性、有効性、品質、低価格を保証しなければならないのです。 薬品の販売・購入量だけでは、このコミュニティー薬局が成功しているとは言えません。抗生剤を1人の患者に2錠売っても、その薬剤の有効性は全くなく、抗生剤の乱用は薬品に対する抗体を作ることから、安全性にも欠けてしまいます。 小児用を成人に処方しても小児と同じ分量では効果はありません。問題の重要性を理解し解決法を見つけるためボランティアを3グループに分けることにしました。各グループで私の書いた問題点を読み上げ、解決策を考えてもらいました。

 どのコミュニティーも記入漏れが多く、疾病が明確にされていないことに関しては、コミュニティー薬局の所有者が日中畑仕事をしているため、患者の対応をその家族が行うことがあり、報告書の記入をしないため忘れてしまう、または、あとでまとめて書こうと思っていたが、忘れてしまったなどの理由が挙げられました。 この件に対し全員一致で、日誌は患者対応時に薬品を手渡す前に報告用紙に記入する、抗生剤の処方について、薬品の有効性を説明し、治療に必要な量を購入できない場合、販売を避ける、もしくはヘルスセンターへ紹介するなど、ボランティアから積極的な発言がありました。

コミュニティーから供与された薬棚に並ぶAMDAの医薬品
コミュニティーから供与された薬棚に並ぶAMDAの医薬品
私からはコミュニティーの在庫管理のため、AMDAの薬品販売は月例のミーティング時に行い、それ以外の販売は行わないことに決めました。 また、毎月、報告書に目を通し、疾患、薬品販売の統計を出すことにしました。この結果はボランティアに手渡しています。 あるボランティアは自分の書いた報告書がコンピュータ化されていると喜んでいました。

 このミーティングの後、ボランティアの報告書は見違えるように良くなり、2月には3週間かけて出したデータも、6月には4日間で片付くようになったのです。 ボランティアのなかには数字の書き方、コンマの打ち方から教えなくてはならない人もいました。 それでもここまで努力したのはボランティア自身であって、その貢献に大拍手を送りたいです。

 2月のミーティングのあと、私に変なあだ名がつきました。SAKIはユカだというのです。 YUCAとは長芋のような形をした、とても硬い食べ物です。(頭が固い奴、という意味です。)

 コマヤグエラ市ラモン アマヤ アマドール(以下RAA)でもコミュニティー薬局セミナーを昨年12月に開催。 セミナーを行ったマルガリータ医師からは、ここのボランティアにはまだまだ勉強をしてもらいたいという評価をもらい、ボランティア達は再試験に向け、マニュアルを読み返し勉強していました。 6月にRAAの隣のコミュニティー、モンテ デ ベンディシオンのボランティアが無事再試験をパス、7月にRAAも合格し、コミュニティー薬局設置に至りました。

青少年育成、エイズ予防教育プロジェクト


 AMDAホンジュラスでは2000年よりエイズ予防教育を、ヘルスボランティア、教師、生徒、地域住民対象に行ってきました。

 小中学校からエイズ予防教育の依頼もあり、小学校低学年からすでにエイズについて教育をしています。 この活動で最も印象深かったのは、エイズの予防法について生徒に質問をした時のことです。 私たちはワークショップをはじめる前、受講者の予備知識を知るため、エイズについて質問をします。
 AMDA支援者の方々はエイズ感染予防法をご存知ですか? 「コンドーム」と真っ先に頭に浮かんだ方はどの位いらっしゃるでしょうか? ホンジュラスの子供達に同じ質問をすると、一斉に手が挙がり、「コンドームを使う」と返ってくるのです。 確かに安全な性行為を行うにはコンドームの使用は必需品です。

 多くの学校から生徒にコンドームの使用法を教えてほしいと言われることがあります。 しかし、「性とは」、「性交とは」もまだ理解できない時期の子供にコンドームの話をするのはどうでしょうか? 私たちは生徒に安全な性行為の仕方を教えるより、性交開始年齢を遅らすことを勧めています。

 ホンジュラスでは性交の活発な年代である20〜30代の感染者は全感染者数の67%以上を占め、18歳の女性の約45%、15歳でも8.5%がすでに性交経験があり、20歳の女性の50%は出産経験があります。 このことから、性交開始前の青少年へのエイズ予防教育が重要です。 その他にも、青少年期には犯罪、アルコール、タバコ、ドラッグの使用、望まない妊娠、性感染症(STI、HIV/AIDS)、家族のコミュニケーション不足、親近者による性的嫌がらせ、暴力などさまざまな問題に直面する時期でもあり、こうした問題にどう対処できるかで、その子供の将来が変わってきます。 対処法とは、適切な判断ができるということです。

 AMDAホンジュラスで7月から始まった青少年育成プログラムは、子供達に思春期の身体的・精神的変化、コミュニケーション、自己認識を考えていくプログラムで、一方的に講義するのではなく、生徒達が共に考え、その結果を共有していくものです。

 テグシガルパ市内2校で小学6年生、中学3年生の合計150名を対象に進めていきます。すでに2校で第一回目のワークショップを終えました。 第一回目のテーマは「私の誕生日」と題し、生徒間のコミュニケーションを広げるものです。 生徒達の反応は、いつもの授業とは違い、皆の前で発言する時、恥ずかしく感じなかった、同じクラスの友達のことをもっと知る機会になったなどの反応がありました。

エル・サルバドル、ホンジュラスでデング(出血)熱蔓延


 今年6月上旬、エル・サルバドルでデング出血熱患者による死亡が報告されました。 デング熱はウィルスを持った蚊に刺されることによって感染し、頭痛、関節痛、5日以上続く高熱が主な疾病で、時に出血傾向(デング出血熱)となり、重症化します。 ウィルスを持つ蚊は清潔な水を好むため、都市での感染が多く見られます。 従来ホンジュラスでは雨季の終わりに近い9月から11月に発生することが多いため、エル・サルバドルで報告された時にはそれほど重視されませんでした。 その一週間後、テグシガルパで最初のデング出血熱による犠牲者が報告され、ヘルスセンター、公立病院は瞬く間にデング患者で溢れるようになりました。 6月末までにホンジュラスにおけるデング熱患者は6,262名、デング出血熱疑い473名、そのうち242名がデング出血熱と診断され、すでに8名の死亡者(すべてが15歳以下の子供)が報告されています。

 ホンジュラス保健省は住民参加による蚊の増殖防止計画を立てました。 これはヘルスセンターを中心として、管轄地域の住民による蚊の増殖場所の発見、清掃指導、デング出血熱予防の啓蒙活動です。 さらに7月にはテグシガルパ市特別条例が出され、蚊の増殖場所の所有者が、何の対応もしない場合、罰金を課すというものです。 つまり不清潔な者には罰を下すと言うのです。

トヘロスのコミュニティー薬局のヘルスボランティア
トヘロスのコミュニティー薬局のヘルスボランティア
 ヘルスセンターは休日返上で患者の対応にあたり、コミュニティーリーダー、ヘルスボランティアは住民の衛生指導活動を行っています。 しかし、AMDAの活動場所であるサン・ミゲールヘルスセンターにデング熱患者に使用する解熱剤がなく、患者の対応ができないとの連絡がありました。 保健省から医薬品が届くのに一週間かかるため、AMDAではその間の患者対応用とし、解熱剤4,000錠とデング熱予防パンフレットをヘルスセンターに供与することになりました。



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