ホンジュラス

ホンジュラス便り
ホンジュラス事務所駐在代表 前田あゆみ
AMDA Journal 2001年 5月号より掲載

 今は淡紫の花、ジャカランダの季節。オフィスのテラスから手の届きそうなところに大木があり、見るたびに心が和みます。景色の中でもう一つ目に付くようになったのは、橋の建設。2年半前のハリケーンミッチの際に破損したチレ橋の建設が日本政府の援助によって進行中です。

 今回は3月にペルー支部とボリビア支部のメンバーを講師として招いて開催したワークショップについて報告します。


ペルー支部編

 3月3日から8日までペルー支部の Dr. ヨシ(日系3世)、心理学者ナディアがファシリテーターとなってエイズワークショップを実施しました。AMDAペルーでは3年前から青少年対象のエイズ予防教育プロジェクトに取り組んでおり、今回のホンジュラス訪問は経験をシェアするためです。ヘルスボランティアを対象とした1日ワークショップ、ヘルスセンタースタッフ(看護婦、ソーシャルワーカー)、高校教師を対象とした2日間ワークショップには合計130名以上の参加者がありました。


〜ワークショップの流れ〜

 自己紹介の後、早速体を動かします。

 まずは“タイタニック“。これは日本でもお馴染みのグループ分けゲームです。沈没しかけたタイタニック号の中を皆でさ迷いながら、ファシリテーターの拍手を合図に3人組み、5人組みなどを形成、余った人は外れます。余った人に対して“Que pena!(残念でした)”とみなで大合唱し、開始早々盛り上がります。


 “点火”。全員が背中合わせに輪になり目をつぶります。輪の中にいるファシリテーターが誰にも気づかれないように一人の肩をたたき、その人がHIV感染者になります。目を開け輪を崩してみな握手を交わし始めます。この時感染者は指で相手の手のひらをこすります。これで相手も感染したということになります。新たな感染者が次の握手から手のひらをこすっていくと、30秒程度で半数以上の人が感染する結果になります。

 その後、それぞれどう感じたかをシェアします。(最初の感染者に対し)肩をたたかれた時どう感じたか。握手する時どう思ったか、怖かったか。感染した時どう反応したか。感染したグループに対して何ができると思うか、何をしてあげるべきか。感染した人によっては感染後誰とも握手しないようにした人もいれば、もっと感染させようとかたっぱしから握手した人もいました。シミュレーションとはいえども、かなりリアルな体験となりました。


 フルーツバスケット、じゃんけんゲームなど数々のレクリエーションをした後、エイズ関連のビデオを見ます。女子高生がその場の勢いで関係を持ちエイズに感染するというドラマ仕立てになっており、ビデオを見た後の話し合いが重要、とヨシとナディアは強調します。


 締めくくりは連帯感を高めるために、手をつなぎ人間の鎖をつくりながら一人ずつ感想を述べます。感動のあまり思わず涙ぐんでしまう人もいました。いつも家事だけで一日を過ごすので笑うことがなかったけど、今日は久しぶりに思い切り笑った、とあるボランティアの感想にみんな大きくうなずきます。こういうタイプのワークショップに参加したのは初めて、目から鱗だったといった感想が多く聞かれ、楽しみながらエイズ、性について意識を高める、というワークショップの意図するところが参加者に伝わったと思います。

 次のステップは、今後のコミュニティレベルでの活動に参加型手法(それも理論でなく、体験でつかんだ参加型。体験型とでも表現できるでしょうか)を取りいれていくことです。

 ボランティアの中から地域の若者を集めて同じようなワークショップをしていこうというイニシアティブがうまれています。例えばビヤヌエバでは不良少年グループの闘争、レイプ、麻薬取引が深刻化しています。その中でグループと長年にわたって働いてきて、不良少年には母のように慕われているヘルスボランティアがいます。早速彼女(イサベル)は近所の少年・少女を自宅に招き、ワークショップを開きました。

 ボランティアもヘルススタッフも青少年を対象に活動したいとは思っていても、どういう手法を用いたらいいかわからなかった、そんな時にこのワークショップが開催でき、いい取っ掛かりになったと思います。ヘルスセンターが地域の高校でワークショップを企画したりと、まさに地域と、ボランティア、ヘルスセンターが一体となってエイズ教育に取り組む体制ができつつあることは非常にうれしいものです。今後フォローしていきたいと思います。

ボリビア支部編

 ボリビア支部からは超多忙にもかかわらずDr.フォイアニーニ、Dr.ウスタレスが3月25日から31日まで救急救命セミナーのためホンジュラスを訪問してくださいました。AMDAボリビアでは数年前から医師を対象にATLS、PHTLS(後述)のコースを実施しています。今回は初日から3日までは赤十字、緑十字、消防隊の救急隊員とヘルススタッフを対象、最終日には医者を対象とした研修を実施しました。


研修内容
●BLS (Basic Life Support〜基礎救命)

 気道確保と人工呼吸、体内に入った異物の除去などについて、アメリカ赤十字社のビデオ教材を使用した講義と、成人・小児・乳児のマネキン等を使用した実技を実施。2日目には1日目に講習を受けた救急隊員がヘルスセンタースタッフに対して指導。


●PHTLS (PreHospital Trauma Life Support〜病院搬送前救急救命):裏表紙参照 

 災害現場から病院に搬送するまでの応急措置(患者の評価、気道確保、人工呼吸、外傷物理など)


●TEAM (Trauma Evaluation and Management〜外傷評価・処置研修)

 外傷物理、外傷評価・再評価、身体チェック(頭部、胸部、筋肉、骨、神経系等)、出血コントロール、搬入前・病院内準備など


●ATLS
 (Advanced Trauma Life Support〜上級救急救命研修)

 外傷の評価と応急処置、気道確保と人工呼吸、ショック、胸部・腹部・頭部外傷、小児外傷、妊婦外傷、熱傷など


 Dr.フォイアニーニはホンジュラス救急隊員のレベルの高さに感心していました。テクニックもしかりですが、規律の良さに驚きです。ホンジュラスで参加者が時間通りに集まったのは今回の救急隊員対象セミナーが初めてでした。非常に熱心に講義に耳を傾ける若者たちを見て、ホンジュラスの未来も明るいなと、感じました。

 救急隊員によると、事故現場での応急措置はしっかりしていても、病院の緊急ユニットにいるのが医学生のみである場合も多々あり、それが患者の運・不運を左右するという話。また医師の対応も満足できるものではないとのことでした。今後は医者レベルのトレーニングが重要であるといえます。今回のTEAM講習会には準看のストライキ中であるのにもかかわらず国立エスエラ病院、私立ビエラ病院、ヘルスセンターなどから医者32名の参加があり、非常にいいスタートとなりました。上記の研修のうちATLS/PHTLSについては今回はコース紹介のみでしたが、今後医療関係者を対象に実施していく計画です。長い間赤十字のボランティア育成に関わっているDr.オレヤノスという熱心な先生にも出会えたので、心強い限りです。熱心といえばDr.フォイアニーニのバイタリティにも感心してしまいます。若さを保つ秘訣を聞いたら“常に情熱を持ちつづけること”だそうです。





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