ホンジュラス

ホンジュラス便り

前田あゆみ
AMDA Journal 2000年 11月号より掲載

 昨年の9月は毎日夕方になると一寸先も見えなくなるほど激しいスコール が降ったものでしたが、今年は少し様子が違います。雨が少ないのです。昨 年は頻発したテグシガルパ市内での浸水の話も聞きません。この分だと10月 に集中して降ることになりそうです。

 9月15日がホンジュラス独立記念日ということで、今月は独立記念月間で す。セントロのParque(公園)では毎日高校生による鼓笛演奏が 繰り広げられ、掲げられた国旗の下には成績優秀ということで 表彰を受けた生徒が直立不動で立ちます。また正午にはすべて のラジオ局で国歌が流れます。昨年は15日の記念パレードを街 頭まで見に行った私ですが、軍隊的なパレードに嫌気がさした ので、今年は五輪の入場行進の録画を家でみてました。

 話が飛びますが最近国会で、小中高校で始業前の聖書精読を 義務化するという法律が審議されています。ここ数年Mara(マ ラ)と呼ばれる、未成年を含んだ若者の暴力グループの動きが 活発化しており(麻薬組織とも関連があるとか)、小さいうちか らの宗教教育を通じて不良の芽をつもうという考えに基づいて います。しかし聖書を読むだけでなく貧困、家庭崩壊といった Maraを生み出す根本的な問題が解決されないと何もかわらないので はないか、と私は思います。

 さて、寄り道はこれくらいにして本題の事業報告です。

─トロヘス─

 トロヘスでの保健ボランティアに対するワークショップは当初の予定通り 8月をもって終了しました。最終回には、避妊方法と血圧測定の講習を行い ました。 

 避妊に関しては、ピル、コンドーム、注射といった方法のおさらい。こう いったテーマは世間一般にタブー視される傾向が残っていることもあり、普段人に聞くチャンスがなく疑問に思っていたことがたくさんあったようで、 色々質問がだされました。

参加者にとってはあまり触れたことのないテーマでしたが、お互いもう顔見知りということもあり、誰も躊躇することなく ざっくばらんに話し合えました。

 血圧測定はやってみれば案外簡単で、お互いの血圧を測りあう練習を繰 り返しました。講習の後には血圧測定器を11村に配布しました(AMDAが 半額、村側が半額負担)。地域の健康管理に役立ててもらえることを願います。

 セミナーの締めくくりとして、参加者全員に“Diploma(賞状)”を手渡し、 ボランティアの中のリーダーであるGuardian de Salud(ヘルス・ガー ドマン)とコミュニティドラッグストアの責任者には“これからもがんばってください”という意味を込めて、AMDA特製Tシャツをプレゼントしました。

参加者がDiplomaを受け取る際に自然と一言ずつ感想がでてきたのですが、“ワークショップに参加する機会がもてて、まずは神に、次に AMDAに感謝します”という言葉を多くの方からいただきました。また、違 う村の人と知り合えて刺激になったという声も聞かれました。

今後は自主的に11の村のメンバーで組織を作り、なに かしらの活動を行っていくと意気込んでいます。10月にはトロヘスを再度訪問し、コミュニティドラッグストア、血圧測定器の活用状況とあわせ、新しい組織のその後の様子を見てこようと思います。

─ラモン・アマヤ・アマドール─

 ラモン・アマヤ・アマドール(以下RAA)では8月に、保 健ボランティア育成セミナーの第1モジュール(全部で3モ ジュール)を実施しました。RAAと隣のモンテ・デ・ベン ディシオン(日本語に訳すと祝福(宗教的意味)の山)か ら合計14名が、下痢、呼吸器系疾患、予防接種、レファレ ンス方法等に関する4日間の日程に参加しました。

 RAAは人口約5000名、そのうち現在活動しているヘルスボラン ティアは4名のみです。保健省は各30戸にボランティア一人というのを理想 的な基準として定めていますが、RAAでは200戸に一人という割合で非常に ボランティアが少ないのです。保健ボランティアの役割は、家庭訪問(妊婦 や乳幼児のチェック)、下痢用経口食塩水・コンドーム・乳幼児に対するビタミンAの配布、レファレンス、ヘルスセンター主催の予防接種・体重測定 の補助と多岐にわたり、全くのボランティア活動です。その代わり、ボランティアIDカードを見せるとヘルスセ ンターで無料診察が受けられるという特典があります。

 第1モジュール後、早速経口食塩水・コンドーム・ビタミンAと玄関先に貼 るためのVoluntaria de Salud(ヘルスボランティア)と書いたミニパネル を各ボランティアに配布しました。中には普段働いているので家庭訪問の時 間がない、という人もいました。そういう人には、近所の子供が下痢にか かったらすぐ手当てできるように、またコミュニティ内で既に死者もでてい るHIV感染の拡大を予防するため、せめて経口食塩水やコンドームの配布だ けでも出来ないか、と頼んでいます。

 第1モジュールを終了して1ヶ月以上たちます。少しずつボランティアの 家庭訪問をして様子をみていますが、やはり無償ということでやる気のうす れている人もいるようです。負担に感じないように、出来る範囲で、ということを強調して、また彼女・彼たちの役割が非常にコミュニティーには重要 だとやる気をおこさせるようにしていかなくてはいけません。第2モジュールは11月の初めに、リプロダクティブヘルスについて行う予定です。

 保健ボランティア育成の活動と並行して、AMDA鎌倉クラブを初めとし た、皆様の寄付金によりセメントを購入、RAAの一部で排水溝の建設も始め ました。皆様のご支援に心より御礼申し上げます。

 RAAはテグシガルパを囲む丘陵地帯の1画を占め、最初に移住(不法占 拠でしたが、現在この問題は解決しつつあります)が始まってから7年の歴 史を持っています。当初は数軒しかなかった家が徐々に増え、現在は800戸 以上、今でも日に日にスラム周辺に家の数が増えていっています。初期から 住んでいる住民は少しずつ蓄財して、木材とトタン屋根の家から、ブロック の家を建設し始めていますが、引越してきて間もない住民(ハリケーンミッ チにより家を失いRAAに移ってきた人もいます)も含めてほとんどの住民 は、バラックに住んでいます。電気は通っていますが、水道はなく給水車で 運ばれてくる水を購入し炊事、洗濯等に利用しています。電話はごく最近コミュニティにひとつでき ました。保健関連施設ではスペインからの支援により運営され ているプライベートのクリニックがひとつあります。

 雨期が本格的に始まり、スラムのあちこちで雨水がたまり蚊 が大量発生しています。AMDAホンジュラスローカルスタッフ もRAAで保健ボランティア対象にセミナーを開催している際 に蚊にさされ、デング熱にかかり1週間寝込んだほどです(私 はRAAでは幸い“のみ”の被害にしかあっていません)。また、 たまった雨水で手を洗う子供、裸足で歩きまわる子供がいるな ど、スラム内の衛生意識は非常に低いと言わざるをえません。 AMDAホンジュラスは99年11月からRAAに関わり始め、住民とミー ティングを重ねるうちに、排水溝の建設がスラムの生活改善、衛生改善に欠 かせないという意見が住民の中でコンセンサスとなっていきました。あるブ ロックでは排水溝の必要性をひしひしと感じている住民自身が組織化を始 め、国際NGOや宗教団体をあたって建設資金を探し始めました。
 今回、多くの方々からご寄付をいただき、スラムの一部分で排水溝の建設 が開始できることになりました。対象ブロック(この件に関し住民内でのオーガナイズが一番進んでいるブロック42)の住民とミーティングを持ち、 いよいよ本格的に始動開始です。ブロック42には24戸の家があります。

地域住民が溝を掘り、セメントで固める等の作業を受け持ちます。測量士に対する謝礼(一軒当たり300Lps)と、セメント一袋も住民側が負担します。衛生問題以外に、豪雨により道がでこぼこになり給水車が通るブロックの中央の道が通れなくなるのも住民にとっては大問題であるとのことで、即建設作 業に入ります。

 限られた時間内のミーティングで、少し身の上話を聞いた人の中には二人 の子供をかかえた20代後半とおぼしき若いシングルマザーがいました。彼 女はコーヒー豆加工工場で清掃員をしており、朝7時から夕方4時まで勤務のため、朝の5時にはスラムを出て行きます。

残された子供たち(10歳と6歳)が自分達で身の回りのことをするそうです。週末はたまった洗濯物を貯水池まで行って洗います。彼女は女手一つで溝を掘ることが出来ないので、人を雇って掘ってもらったそうで、かなりの金銭的負担であることは容易に想像できます。このように、それぞれの人がブロックの環境向上のために努力をしています。

 ブロック42の住民が対象のミーティングでしたが、どこから聞きつけたのか42の下のブロック60に住む住民も集まりました。残念ながら現在の時点では予算不足でブロック60にまでは排水溝を広げることはできません。スラム全体など、なおさら無理です。今後も寄付を募って少しずつですが、スラムの生活改善を支援していけたら、と思っています。

 10月現在、排水溝のできる道路脇はもう雨水・汚水がたまることがなくなり(裏表紙参照)、衛生状況が改善されますが、コミュニティ全体となるとま だまだ予算が足りないのが現実です。

 みなさんからのご協力を改めてお願いいたします。



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