ホンジュラス

ホンジュラス便り

前田あゆみ
AMDA Journal 2000年 4月号より掲載

 最近は店先に小さな青マンゴーが出回るようになり、季節の変化を感じさせます。1〜2ヶ月後には熟した大きなマンゴーの旬がやってくると共に一年で最も暑い季節が巡ってきます。

 さて、ホンジュラスでの活動ですが、巡回診療中心だったプロジェクトを病気予防・衛生教育、人材育成中心にシフトしていくため、プロジェクトサイト住民や関連機関とのミーティングを重ねています。今まではセイバ、トロヘス、アルバレン等国内各地で巡回診療を行ってきましたが、今後は首都テグシガルパのスラム、ラモン·アマヤ·アマドールとニカラグア国境の農村、トロヘス2ヶ所に絞って、より地域に密着した活動を実施していく計画です。


 〜ラモン·アマヤ·アマドール〜

 ラモン·アマヤ·アマドール(以下ラモン·アマヤ)は有名なホンジュラス人作家にちなんで名づけられたスラムで、最初に人が住み始めてから8年しかたっていない比較的新しいスラムです。5000人(周辺スラムを含めると1万5000人)ほどの住民はいわゆる不法占拠者ですが、現在自分が地主だと名乗る4人が土地の所有権をめぐり法廷で争っている最中で、それが解決したら地主に土地代を支払い晴れて合法的に住むことになります。周辺スラムの一つモゴテには一昨年ホンジュラスを襲ったハリケーンミッチの被災者が集住しています。住民の大部分が低所得者層で、8畳程度の掘っ建て小屋に大家族で住んでおり、いまだに水道、下水路のない不衛生な生活を送っています。

 昨年11月に初めて現地入りした私たちは、まずスラムの現状を知ってニーズを探ろうと、スラム内各地区で住民とミーティングを繰り返しています。ミーティングでは地域や個人の問題を無記名であげてもらい、解決策をみんなで考えます。これとは別に保健衛生状況を細かく知るためのミーティングも行っています。自治会代表グループとミーティングをした際、一番大きな問題は上水道と排水設備のないことであると参加者の意見が一致しました。その他には、ごみ処理、緊急患者の運搬、子供の栄養失調、青少年の性等が問題としてあげられました。

 上水道に関しては、週に2回給水車がやってきて、バケツ1杯当たり1ドル弱で販売しています(土地が合法化されていないので、市の水道局に水道設置を申請しても受け入れてもらえません)。バケツ1杯1ドル弱の水代は、日々の食費にも困っている住民には大きな出費です。また、給水車の通れない、山の斜面に住んでいる住民には水が十分に行き渡りません。

加えて、購入した水で洗濯をしたり、シャワーを浴びる必要があるため、料理の際に食べ物をよく洗わないなど、水不足は衛生問題にも関わってきます。インタビューした母親の一人は子供の手足を洗うだけで精一杯とのこと。使った水は垂れ流しで、スラムのあちこちでたまった汚水から蚊が発生してマラリアの原因となったり、下痢の原因になっています。

 汚水に関して、自治会代表グループとのミーティングで、各自が家の周りに排水溝を作ったらどうかという案が提案されました。ただ溝を掘っただけでは、雨期の大雨で土が流出してしまうので、セメントで作るのがベストです。しかし、父親の月給が75ドル程度、それも安定した職業についていない家庭に一袋5ドルするセメントを5袋も買う余裕はありません。ラモン·アマヤのどの地区で問題認識の話し合いを持っても、排水問題があがっており、排水路設置は衛生状況改善のための重要な課題であることは間違いありません。そこで、現在セメント用資金(800世帯、総額160万円程度)を探しています。AMDAがセメントを提供する変わりにスラム住民が砂、石、労働力を提供するという仕組みで、住民がある程度負担することで、設置後の維持管理に住民が責任を持てるように計画しています。

 驚いたことに、私が日本へ一時帰国している間に、とりあえずは溝を掘ろうということで、作業を開始していました(私達がセメント用資金を探していることは内緒にしてあります)。

 この他に、ラモン·アマヤと近隣スラムの保健ボランティアの活性化をはかるため、コミュニティー救急箱の普及と、絶対数の少ない保健ボランティアを増加するために保健ボランティアの育成も行っていく予定です。(ラモン·アマヤは800世帯に対しボランティアは4人しかいません。また地域にヘルスセンターがなく、病気の際に遠くのヘルスセンターにわざわざは出かけない人も多く存在します)近い将来には、保健ボランティアが病気予防、衛生改善等について家庭訪問・ワークショップなどを通じ直接スラム住民に働きかけができるような環境を作っていこうと思っています。

 上下水道、ヘルスセンターなど基礎的社会インフラの未充実もさることながら、ホンジュラスは中南米の中ではブラジルに次ぎHIV感染者の多い国です。人口600万人の小さな国が人口1億人のブラジルの次ということから、人口対比HIV感染者率はホンジュラスが一番高いかと思われます。

特に集中しているのはテグシガルパ、サンペドロスーラといった都市で、低所得者層に蔓延しています。危機感が足りないのか、貧しいためか国をあげての取り組みは充分でなく(エイズはもともとアメリカ軍により持ち込まれたといわれており、そのせいかUSAIDがコンドームを熱心に配っているとのこと)、これ以上感染を広げないためにも、草の根レベルで感染予防活動をすることが大切です。実際ラモン·アマヤにも数人のHIV感染者、エイズ患者が存在します。検査を受けておらず、感染を認識していない者が何人いるかはわかりません。さらなる感染を防ぐためAMDAでは青少年層を対象にしたジェンダー・エイズ予防のワークショップを、教師を中心としたボランティアグループと計画していく予定です。


〜トロヘス〜

 トロヘスは今までも巡回診療で幾度か訪れている農村です。2月末には、トロヘスの中でもアクセスが困難で、保健医療事情が深刻な(トイレがない、遠すぎてヘルスセンタースタッフが予防接種に出かけられない等)12村の保健ボランティア、保健委員会メンバー69名と共に、保健ボランティアトレーニングプロジェクトの最初のミーティングを実施しました。1日のミーティングのために参加者達は車を乗り継ぎ4〜5時間かけてはるばるやってきました。地域の保健向上にかける意識の高さの証明です。

 まずは村の保健状況を認識するために、各村に分かれて、村で多い病気は何か、どうやって治療しているか、予防は行っているか等を話し合いました。続いて保健ボランティアの実状を知るために、実際の活動内容、苦労する点、必要な支援についてをざっくばらんに話し合いました。午後には、午前中の話し合いに基づいて、今後のワークショップのテーマを参加者に決めてもらいました。

 今後毎月1回のワークショップを通じて、保健ボランティア自身が不足していると感じている知識を補うと共に(医療知識のみでなく、他の村人へのメッセージ伝達法も)、基礎的な救急・医薬品セットを供与し、各村の保健委員会で管理してもらうことにより、村の中での保健状況の改善を図っていく計画です。第1回目のワークショップは子供、大人すべてに多く見られる下痢の予防をテーマに3月下旬に2日間にわたって実施する予定です。また時機を見計らって12村すべてを訪問しようとも思っています。

 このように、保健衛生教育、人材育成を中心とした新しい活動が始動開始したところです。現在トロヘスでの活動は在ホンジュラス日本大使館の草の根援助で、都市スラムでの活動はAMDA資金で実施していますが、今年8月以降のトロヘスでの活動と、都市スラムでの活動のうち特にハード部分について、資金を探しているところです。生活を改善していこうとするスラム住民や保健ボランティアの意志、やる気を生かすため、日本の皆さんからも活動を支援していただけたら、小規模ながらも貧困層の生活向上に貢献できるかと思います。


<ホンジュラス料理の紹介>

 ホンジュラスの人が何を食べているか、興味はありませんか?トロヘスで行った1日ミーティングの際のメニューを紹介します。(食事は一皿25レンピーラ=1.7ドル)セミナー時に食事と間食を出すのがホンジュラスのならわしです。

・前の晩の夕食〜トルティージャ(とうもろこしの粉を薄く円形にのばして焼いたもの)、
 白チーズ、フリホーレス(豆を煮たもの)、アボガド、焼き牛肉、コーヒー
・朝食〜トルティージャ、白チーズ、フリホーレス、揚げたまご
  (目玉焼きですが、油で揚げます)、コーヒー
・間食〜ゆでキャッサバ芋の千切りキャベツ・ミートソースかけ、
 オルチャータ(オートミールジュース)
・昼食〜トルティージャ、焼き牛肉、焼き飯、
 キャベツとトマトの生野菜サラダ
・間食〜クッキー、コーヒー、コーラ
 (傾向として若い人はコーラ、年配の人はコーヒー)
・夕食〜トルティージャ、白チーズ、
 マンテキージャ(クリームチーズのようなもの)、
 フリホーレス、アボガド、コーヒー

 毎食同じようなものばかりで、バラエティに富んだものを食べるのに慣れた私にはちょっと苦しいメニュー。 トルティージャ、フリホーレスが日本でいうご飯と味噌汁のようなもので 貧しい人もトルティージャとフリホーレスは欠かしません。 上記のほかに、食用バナナを輪切りにして揚げたものもよく食べます。




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