緊急救援活動

スマトラ沖地震・津波被害に対する今後の活動

AMDA代表  菅 波  茂

AMDA Journal 2005年 4月号より掲載


2004年12月。未曾有の大災害スマトラ地震・津波が発生し、多くの被災者がでました。 AMDAでは災害発生当日よりAMDA多国籍医師団を編成し、救援活動を開始し、インドネシア、スリランカ、インドの3ヶ国において 巡回診療や保健衛生教育等を行なってきました。こうした緊急救援活動が可能となった一つにはAMDAインターナショナルという 海外支部(海外28カ国支部)の存在があります。AMDAインターナショナルのメンバーとは、今日までの医療保健支援活動や人材育成支援、 マイクロクレジット等の活動により、それぞれのグループと信頼関係が醸成できていたので、 災害発生と同時に被災者救援活動を迅速に効果的に開始することができたのです。 こうした AMDA支部間のゆるぎない信頼関係が、 3ヶ国の被災国に本部と9ヶ国の支部が団結協力して百名以上を派遣した 被災者救援活動を可能にしたと確信しています。

AMDAは今回のスマトラ沖地震・津波被災者救援活動で下記の如く学んだことを災害の世紀といわれる21世紀の指針とすると共に、 医療和平の推進にも寄与したいと思っています。
1)平和の定義における家族の明日の希望は子どもである。
2)相互扶助の精神で信頼を醸成する。
3) ローカルイニシアチブにより迅速  にして効果的な救援活動を行う
 AMDA多国籍医師団構想は1993年の発足以来、12年の試行錯誤を経て、「人道援助精神は先進国の専売特許にあらず」、と共に 「意欲があり能力があり機会が与えられて自己実現する公正」の意義を実現してきた構想です。 国際社会で大切なのはメッセージを発信する行為です。「救える命があればどこへでも行く」というメッセージに加えて、 「AMDAは必ず来る」という信頼感をもたれるよう、AMDA多国籍医師団のネットワークの強化拡充に全力をあげたいと思っています。 結果として、世界平和の実現に少しでも貢献できれば望外の喜びです。

3月13日、AMDA本部において、今回のスマトラ沖地震・津波緊急救援活動に参加した9ヶ国 (インドネシア、インド、スリランカ、ネパール、バングラデシュ、カンボジア、ニュージーランド、カナダ、台湾) 各支部のメンバーと今後の活動について話し合う復興会議を行いました。
 緊急救援時におけるAMDA多国籍医師団の迅速な編成のためのシステムの充実と確認。 また、今回の緊急救援から復興支援への移行について、現地のメンバーの活動報告あるいは要望を聞くと共に、 復興支援実施に向けての具体的な話し合いを行いました。
 インドネシアにおいては、被災地バンダアチェ市内の多数の医療従事者の死亡により機能しなくなっている医療を充実させる目的で、 現地のザイナルアビディン病院とインドネシア支部長タンラ氏が教鞭をとるインドネシア・スラウェシ島マカッサルのハサヌディン大学、 そしてAMDA本部との協力体制のもとに看護師の臨床教育プログラムを開始します。 また、災害研究所をバンダアチェに設立して災害後遺症の方々の長期的なケアを含めて、地域防災教育、災害救助等々のプログラムを推進していきます。 スマトラ島を含めて過去に地震や洪水などの災害に悩まされてきたインドネシアの現地のニーズに沿うプログラムと言えるからです。

 次にスリランカでは、2年前より明石康日本政府代表(スリランカの平和構築及び復旧・復興担当)の要請を受けて 政府(シンハラ)、反政府(LTTE:タミルキイーラム 解放の虎) そしてイスラムのそれぞれの地域で医療活動を実施してきた実績と各グループとの信頼関係にもとづいた復興支援プログラムを考えています。 先進国並みの保健制度と教育制度を誇るスリランカには何故か学校保健のコンセプトがありません、 北部のLTTE地区では「すべての小学校における巡回診療と衛生教育を」という要請にもとづいたプログラムを、 南部および東部では学校や避難所での保健・衛生教育を担う人材育成プログラムを現地の公衆衛生担当官と共に実施していきます。

 インドでは長期的な支援を目的としたコミュニティーヘルスセンター設置と被災者が自立できるようになるまで、 保健医療支援のみならずマイクロクレジットを行うなど包括的なプログラムが提案されました。

復興会議に先立ち、岡山国際交流センターにおいて3月12日に開催された「国際救援シンポジウム−岡山から世界へ」に参加したAMDA海外支部のメンバーは、 緊急救援活動の内容を報告しました。また、AMDAはインドネシアのハサヌディン大学、インドのマニパール大学とそれぞれ緊急救援活動や人材育成等に関して 協力体制の構築に向けて協定を結ぶ、調印式を執り行いました。

ハサヌディン大学(インドネシア)、マニパール大学(インド)との協力関係を結ぶ調印式(2005.3.12)

2校を選んだのは、インド・オリッサ州の洪水やインド西部大地震での救援活動の際のインド支部とマニパール大学の協力体制、 インドネシア支部は国内だけでなく2003年のイランの大地震にもハサヌディン大学と連携してチームを派遣するなど、それぞれに豊富な経験をもっているからです。 さらに大学と協定を結ぶ理由は三つあります。一つ目は災害やボランティアを考える際、政府かNGO(民間)かという対立構造が生まれがちですが、 第三のポールが大学と考えられます。大学にはヒューマンリソースがあります。今回のような大災害に対しては大量の人材を送り出すことができます。 二つ目は大学には研究能力、政策能力があります。つまり何のために、何をすべきか、その必要性は何か等を分析し、研究してまとめ、発表するというアカデミズムの役割を持っています。 三つ目は今回のような大規模広範囲な活動を実施してもいつかは風化していきます。 しかし大学は教育の場ですから知恵、見識、体験等を授業をとおして次代の学生達に普遍的に伝えていくことができます。 こうした理由により、協定を結びました。

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13日のAMDA海外支部メンバーとの復興会議の後、午後からはご支援者のみなさまとAMDA海外支部のメンバーの懇親会を行いました。海外支部のメンバーにAMDAを支えてくださっている方々を紹介し、 直接お礼を言う機会を設けたかったためです。「AMDA多国籍医師団とご支援者の集い」と題したこの会では、海外支部のメンバーが今回の緊急救援活動の報告をし、 活動をサポートしてくださった方々にお礼を述べると共に、復興支援へのさらなるご支援をお願いしました。 また、ご支援者の方々からも、活動に対する質問や、今後の協力体制についての提案やお申し出がありました。

ハサヌディン大学と国連NGO・AMDAは世界平和の実現に向けて相互扶助の精神で下記の内容について協力することを確認する。 なお、平和の定義は「今日の家族の生活と明日の家族の希望を実現できる状況」とし、これを妨げる要因が戦争、災害、そして貧困であるとする。
1.AMDA多国籍医師団への参加
2.医学交流および研究の推進

附則:上記の項目の実施に必要な内容については更なる詳細な協議をする

マニパール大学と国連NGO・AMDAは世界平和の実現に向けて相互扶助の精神で下記の内容について協力することを確認する。 なお、平和の定義は「今日の家族の生活と明日の家族の希望を実現できる状況」とし、これを妨げる要因が戦争、災害、そして貧困であるとする。
1.AMDA多国籍医師団への参加
2.アユルベーダ医学の発展への相互協力
3.医学交流および研究の推進

附則:上記の項目の実施に必要な内容については更なる詳細な協議をする




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