緊急救援活動

洪水の村 ガザリア
AMDAバングラデシュ洪水救援活動



地域保健専門家 添川 詠子 (2003.7.31)
AMDA Journal 2003年9月号より掲載

AMDAバングラデシュの活動地域であるガザリアは現在深刻な洪水の被害を受けている。川幅は乾期の3倍 以上に広がり、村の主要な交通路のほとんどが水に沈んでしまい、船がなければ移動することは難しい 状況である。いつも人でにぎわっているマーケットからは客足が遠のき、水をかき分けて歩く男性が何 人かいる程度だ。村の1割以上の家屋は床上浸水しており、それらの家では床上1メートルほどのところ に竹で仮の床を作り、家具をそこに持ち上げて水が引くのを待っている。一日20センチほどの勢いで上昇 していた水位は7月末より小康状態であるが、まだ予断は許されない状況だ。村人の予想では今後2週間 ほど緩やかに水位が上昇し、以後水が引き始めるだろうということである。完全に水が引くのは9月の終 わり頃であり、村人は約3ヶ月間不便な生活に耐えなければならない。

洪水と村人の生活
 ガザリアでは雨期と乾期では全くと言っていいほど地形が変わる。乾期には私たちの活動地域を分断 する川は2カ所のみであり、ほとんどの村へは徒歩で訪問できるが、雨期には増水によりほとんどの村 は川の中州のようになってしまう。村間の交通は船に頼るしかなく、隣の村に行くだけでも大変な時間 を要する。村人たちはこの大きく移り変わる自然の流れと共生している。
 洪水時はみなそれぞれ協力し合って窮地をしのいでいる。通りかかりの船に声をかければたいていの 人が受け入れてくれ、隣の集落まで運んでくれる。家畜の世話も協力して行われ、数件の家畜をひとま とめに高台に集め、交代で番をしている。ありがとうもお願いしますもなく、ただみんな当たり前のよ うに助け合って生活している。

洪水の被害
 この洪水により多くの農作物が被害を受け、農民たちは経済的打撃を受けている。農民の収入減は購 買力低下を引き起こし、村の商業にも影響を与えている。洪水による交通障害も多くの場所で弊害を及 ぼしている。行商人は商売の場所を失い、病人は病院に行くことが困難になった。また、多くの学校は 通学が困難なことを理由に休校となってしまった。通常授業を行っている学校でも、教師が来たり来な かったりといった毎日である。
 生活環境も悪化している。ほとんどの村人の家には台所はなく家の裏庭に泥で釜戸を作りそこで火を たいて料理を作っているのだが、洪水でそれらの釜戸は水に沈み料理をする場所を失ってしまった。現 在は仮に作った竹の床の上でランプなどを使用して調理している。飲料水確保も大きな問題のひとつで ある。AMDAの活動地域の村々の2割程度の人が川の水を飲料水として利用している。しかし川の水は増水 によりいくつもの開放式トイレ(タンクのないトイレ)を飲み込み、非常に汚染されている。その汚染 された水により、コレラや赤痢などの伝染病が蔓延する可能性が高い。伝染病に限らずとも、重篤な下 痢疾患の患者が急増することが予想される。また、その汚染された水により多くの皮膚病患者が発生す ることも考えられる。
 最大の被害は水が引き始めたときに起こる。水の引きと共に大規模な土壌の浸食が起こるのである。 村の家屋の土台は泥を乾かして作ったものであり、水が停滞することによって浸食が起こり、水のひき と共に土台が崩れてしまう。98年の洪水時にもガザリアだけで500件余りの家屋が崩壊した。今年の洪水 でもすでに一部の地域では土台がゆるみ半壊している家屋が数軒みられる。

AMDAバングラデシュの支援活動
 ガザリアにあるAMDAバングラデシュの職業訓練所は洪水時の避難場所としての指定も受けている。収 容所に収容できる人数は約200人。非常食やランプなどの必要物品を準備して避難民を迎えられるように しているが、まだ訓練所に避難民の姿はない。この近辺の村人は洪水時でも家を離れることは少なく、 どこかに避難するのは家が天井まで水につかったときか、流されてしまったときだけである。家を空け ることにより、家財や家屋の装飾品を盗まれたりするため、ぎりぎりまでは家を守っていたいというの が村人の気持ちである。
 村人の生活は困窮しており、すでに備蓄してある食料が底をつき生活に困っている人もでてきている。 私たちはそれらの人々に対する食料・衣料品支援を開始することにした。AMDA本部からの支援を受け50 00キロの米と200キロの豆、200人分の衣料品を救援物資として準備した。被害地域全域に行き渡るには とうてい足りないが、今の私たちにできる精一杯の援助である。現在地元政府と協力して被害者登録を 行い、援助物資を配る準備を進めているところである。
 また、船による移動診療所の計画も進行中である。AMDAバングラデシュではすでに雨期に入ってから ボートによる移動診療を始めている。増水により診療所まで来ることが困難になってしまった地域へボ ートで出向き、小学校などの一室を診療所として使わせてもらい、治療をおこなっている。この移動診 療の回数を増やし、洪水が健康へ及ぼす被害を最小限に抑えたいと私たちは考えている。村人からも自 分たちの村まで来てほしいと多くの要請があり、この移動診療活動の回数を増やしていきたいのだが、 実際のところ村人全員のニーズを満たすのは難しい状況である。医師はひとりしかおらず、診療所を閉 めるわけにもいかないため、この活動をどのように充実していけるか現在検討中である。
 私たちはまた、土壌の浸食による家屋損傷に対する援助活動についても対策を練っている。土壌の浸 食は今後深刻な状態になることが予想され、家屋崩壊は、特に貧困層の家において、今後増加すると考 えられる。それらの人々に対して無利子の小規模貸し付けなどを対応策として考えている。現在その資 金を作るためにAMDAバングラデシュ職員は奔走しているところだ。

この救援活動に対する私たちの目標は、洪水により起こる健康被害を最小限に抑えること、また、洪水 による経済的打撃から一日も早く立ち直ることができるよう支援していくことである。そしてまた、私 たちAMDAバングラデシュ職員の地域に対する気持ちをこの活動を通して伝えることができたら、と考え ている。増水のピークは8月半ばである。今後もスタッフ一同力を合わせてがんばっていきたい。




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