緊急救援活動

リファラルチームの活動を通して

AMDA登録看護師 佐々木 久栄
AMDA Journal 2002年 11月号より掲載

パキスタンのラティファバドキャンプでは、毎日200人前後の診療がなされています。このキャンプで私は、毎日多くの難民の方々と出会っています。初めは表情一つ変わらなかった人が、日々会う度、笑顔を見せてくれるようになると、本当に嬉しくなります。そして、何よりも元気になっていかれる姿を見るのが私の楽しみとなっています。

パキスタンでのAMDAのアフガン難民支援活動では、このラティファバドキャンプの診療だけでなく、もう一つ重要となっている活動があります。それは、救急患者をキャンプの仮診療所から高次医療施設に移送し、治療を支援するシステム、つまりリファラルシステムの運営です。 これは、医師と看護師、地域アシスタントの5人で形成されたリファラルチームが中心となって活動しています。キャンプでは治療の難しい重症なケースと判断された難民の方々は、救急車でクエッタ市内の病院へ搬送されます。 受け入れ先の各病院で入院手続がとられると、このリファラルチームが入院中の患者さんの状態を毎日観察し、チェックすると共に、入院費や検査や薬などにかかる治療費を手渡し、治療が滞りなく受けられるように支援しています。

ここパキスタンでは、医師が指示した薬やそれに必要とされる点滴セットや注射器などは全て患者が準備しなくてはなりません。患者が準備して初めて治療がなされるのです。そこでこのリファラルチームが日々の回診で、患者さんの状態と共に治療法に変更がないかをチェックし、必要な薬があれば買いに行きます。 その他、生活費や退院時の移送費なども全て援助し、患者さんが安心して入院生活を送れるようフォローしています。もちろん、退院後も治療が必要な方はキャンプで診療する医師がフォローし指示を出し、リファラルチームがクエッタ市内で薬を購入しています。このように退院しても継続した治療が受けられるようなシステムになっています。 全ての費用は日本政府とUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)から支援をいただいています。

キャンプからの救急患者を受け入れている主な病院は、総合病院BMC、結核療養所、小児専門病院CHQの3ヶ所です。いずれもクェッタ市内にあります。病院へ搬送された方はAMDAの活動するラティファバドからの患者さんだけでなく、パキスタン政府や他のNGOが活動しているキャンプからの患者さんもいますが、全てAMDAがお世話しています。 毎月、結核や外傷、感染症、低栄養状態の子供など5つのキャンプを合わせて、100名前後の患者さんが送られています。

搬送した病院にて(左端筆者)
搬送した病院にて(左端筆者)

私もキャンプでの活動日以外は、リファラルチームの一員としてクエッタ市内の病院を廻ります。キャンプで苦しそうにぐったりしていた難民の方が、病院で適切な治療を受け、元気になっている姿を見るとほっとします。そしてリファラルの重要性を感じます。しかし、私はいつもキャンプで、本当にリファラルの必要性があるのかを見極めるのは難しいなぁと感じています。

キャンプという限られた診療材料の中で、予測される状態を考え、リファラル搬送するかどうかを決定しなくてはなりません。ナースとして今までの知識と経験がものをいう時です。生死の決まる瞬間がここにもあるのかと思うと、ナースとして発する自分の言葉に重みを感じます。しかし、そんな大事な時に携われる事をとても光栄に思っています。

私は難民の方々がよくなって1日も早くキャンプへ戻って来られる日を、日々楽しみに待っています。そしていつの日か難民の方々が生まれ育った国、アフガニスタンへ帰り、不平等でなく彼等が幸せと感じられる日が来る事を心から願っています。私の派遣期間は後1ヶ月ですが、いつも難民の方々に元気と笑顔を与え続けられる存在であるよう努力していきたいと思います。




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