緊急救援活動

メッティーラ大規模水害とAMDAによる緊急救援活動について

駐在代表 小林哲也
AMDA Journal 2001年 8月号より掲載

5月末から断続的に降り始めた大雨により、AMDAインターナショナルミャンマープロジェクト(以下AMDAミャンマー)がプロジェクトを実施しているメッティーラ県では、6月の初めに、この75年間で初めてという大規模水害が発生しました。 多くの犠牲者と被害を出したこの自然災害に対し、AMDAミャンマーは緊急救援活動を開始。生活物資の供給や仮設トイレの建設など数多くの活動を行っています。 今回は、現場の状況とこうしたAMDAの活動について報告させて頂きます。

水害発生の経緯

大規模水害の原因となった雨は、5月29日頃からメッティーラ県全域で降り始め、翌30日には、かなりの雨量に達していました。 そのため30日のAMDA巡回診療先であるアレイワ村へは、川が増水していて近づくことが出来ませんでした。 その後雨は一旦弱まり、31日や6月1日の昼頃までは特に何事もなかったのですが、1日の夜頃から再び雨が強まり、2日、3日の両日中も激しく降り続きました。 そのため川の水量が前回以上に大幅に増加し、大量の砂を含んだ水によってメッティーラ市やウィンドゥイン市郊外に位置する川沿いの村々が冠水し、一部の村が流失したのです。 また、流れ込んだ大水によってメッティーラ湖も溢れ、湖周辺の家々が冠水しました。

大雨は4日になってようやく止まりましたが、水が完全に引いたのは、その後更に2〜3日を経過した後でした。尚、年間降水量がメッティーラの3倍以上あるヤンゴンでは、この間殆ど雨は降っていません。 また同じ中部乾燥地域でも、バガン遺跡のあるニャンウーなどでは大雨は降らなかったので、被害はいわゆる局地的な集中豪雨によるものと見られています。

被害状況と被災者の現状

情報が極めて限られているため、被害状況の全容を正確に把握することは非常に困難ですが、関係者の話を総合すると、被害が最も大きかったのがメッティーラ、ウンドゥイン両市であることは間違い有りません。

犠牲者数については、最も被害が大きかったメッティーラ市、ウンドゥイン市合わせて50人程度と公式には発表されていますが、関係者の間では、少なくともその10倍程度ではないかと見られています。 しかし雨が止んでから10日経った時点でも、車でアクセス出来ない村が多数あり、実際の数字は未だに不明です。 6月12日時点で把握されている被災者数は、メッティ ーラ市で家屋を流失されたのが43家族の243人、ウンドゥイン市では463家族の約3300人。家屋が浸水して避難されている方々はメッティーラ市で約13,000人、ウンドゥイン市で約8,000人となっています。

洪水によって流された橋

メッティーラ市の被災者は、家の近くの高台などに、屋根だけの簡素な家を設けて避難したり、近くのお寺などに避難したりしています。 ウンドゥイン市では、メッティーラと同じように仮設のキャンプに避難しているケースと、市内のお寺や市民ホールに避難しているケースがあります。尚、メッティーラ湖周辺では、土地が低い西側の家屋が冠水し、一時は1階部分が完全に水に浸かりました。 そのため家財道具の損害は発生したものの、人命に関する被害はなく、避難していた住民も全て家に戻っています。

その他道路や橋などの被害については、道路の陥没や橋の流失・損壊が多数発生しました。そのため通行止めの場所が多く、この地域を通るヤンゴン─マンダレー間の長距離バスは1週間近く運休しました。 現在、主要な幹線道路は殆ど全て復旧していますが、村落部の村道などは、依然として寸断されたままの個所も少なくありません。

ミャンマー政府の対応

被害の大きかったメッティーラ県では、大雨の後、すぐに軍が出動して道路や橋の復旧工事に取り掛かっています。これはマンダレー管区行政当局の方針により、道路や橋など物流機能の確保が最優先課題とされたことによるものです。

被災者への対応としては、食料や衣類、食器などの配給が軍によって行われています。また家屋を失った被災者用の仮設住宅463軒の建設が進められており、ウンドゥイン市では、被害発生の10日後には、既に100軒近い仮設住宅が市内の空き地に建てられていました。 メッティーラ市では、村が 砂で覆われてしまい、再建不能となったテードーリー村の住民に対し、政府が近くの村の土地を提供して43軒分の仮設住宅の建設を始めています。

AMDAの活動

AMDAミャンマーでは、水害発生後、直ちにまずウンドゥイン市における被害状況と緊急支援ニーズの調査を開始しました。そして県知事や市長、県保健局とも連絡を取り合い、まずは、1.緊急生活物資の支給、2.衛生管理の部分で活動を行うことを決定しました。

1についてはまず、着の身着のままで避難してきた住民にとって最も緊急度の高い、毛布と衣類の支給をウンドゥイン市で行いました。 メッティーラ市内の衣料品店は勿論、郊外の縫製工場まで回って1700着の子供服、425着の大人用衣類、1000枚の毛布を調達し、水害後2日目の6月5日に、これらの支援物資を届けることが出来ました。 現場には社会福祉省の副大臣も駆けつけており、「一番必要な時に支援物資を届けて頂き、非常に助かる。大変感謝している」との謝辞を頂きました。支援はその後メッティーラ市でも行い、1000枚の毛布を6月11日に支給しました。


その後、被害調査を進めるにつれて支援のニーズがより明確になり、特に食料支援の必要性が明らかになりました。そこで両市当局からの要請を受け、1家族(約5〜8人)の約1週間分の食料となる米4kg、豆1kg、塩1kg、魚の塩漬け300g、油500mlをセットにして支給することを決定。 メッティーラ市1,194家族(約8,000人)分、ウンドゥイン市463家族(約3,300人)分の食料をスタッフ総出で準備し、6月11〜13日にかけて、メッティーラの18村、ウンドゥインの3避難所と6村を回って支給を行いました。

前述したように仏教国ミャンマーでは、個人からの食料の寄付も少なくありません。 しかし残念ながら米なら米、油なら油と、大抵は1つの物資を配給することが多く、それらの物資を上手く調整することが現場で出来ていないため、ある村には米ばかり届き、他の村には油ばかり届くといった事態が発生してしまっています。 そのため、そのまますぐ食事が出来るAMDAの食料セットはとても有効であり、こちらの予想以上に被災者から 感謝されました。

2については、メッティーラ市から要望のあった仮設トイレの建設に着手しました。これは村全体が流失してしまい、最も大きな被害を受けたテードーリー村の避難キャンプに設置したもので、男性用2ヶ所、女性用2ヶ所が 6月11日に完成しました。 それまでトイレがなく、あちこちで用を足していたためか、下痢が多くなっているとの報告が村の助産婦から寄せられていたが、トイレの完成後は、そうした患者が大きく減ったとの報告が届いています。

今後の活動予定と日本政府による支援

緊急生活物資の支給を終え、今後は衛生管理や被災者の健康維持だけでなく、メッティーラ、ウンドゥイン両市における、被災地域のコミュニティ復興を支援していく予定です。 具体的には、被害が最も大きかった地域に特に重点を当て、保健衛生については医薬品の配布、井戸と給水タンクの建設、地域保健センターの修復、仮設住宅用トイレの建設等を行います。 またコミュニティの復興については、公立学校の再建を行う予定です。ミャンマーの学校は6月から新年度が始まっているため、一日も早く学校を再建し、子供たちが安心して学べる環境を整えたいと考えています。 尚、これらの活動については、国連機関や赤十字、他のNGOによる活動との重複を避け、支援の効率性を最大限に高められるよう互いに連携しながら行っています。

尚、これらの活動については、在ミャンマー日本大使館を通じて、日本政府からも草の根無償資金援助による協力を得られることになり、また多くの方から貴重な寄付も預かりました。

今後の課題

県や市などの現場レベルの行政当局は、こうした外からの支援を高く評価しており、地域住民のために積極的に活用しようとしています、 しかしそれがマンダレー管区レベルの当局になると、「地域住民はもっと自立すべき」ということを理由に、支援を受けることに若干消極的であり、それが現場の行政責任者を戸惑わせ、対応を遅らせているようです。

誇り高いミャンマー人の気質から考えますと、援助に対して躊躇する気持ちは十分理解出来ますが、実際に被害を受けているのは家を失い、財産を失った被災者の方々です。 自然災害は時と場所を選ばずに発生する不可避のものであり、その被害を受けた住民が、一日も早く元の安定した生活に戻れるように支援することは、決してミャンマー人の誇りを汚すものではありません。

我々日本人も例えば阪神淡路大震災の時、世界中の国から暖かい支援を受けており、その有難さは筆舌に尽くし難いものであることを肌身に感じています。またこうした「助け合い・相互扶助」の精神は、AMDAの理念の一つでもあります。 従って今後は、行政当局の関係者との円滑なコミュニケーションを図り、「援助を受ける側のプライド」に配慮しながら、復興に向けて出来る限り多くの支援を行っていくことが大切だと思われます。

最後になりましたが、今回の救援活動に対し、AMDA会員の皆様を始めとして数多くの方々から暖かい励ましのお言葉や募金を頂戴しました。この場をお借りして心より御礼申し上げます。 被災地の復興にはまだ暫く時間がかかりますので、引き続き今後もご支援、ご指導を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。




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