ジブチ

NGO支援無償資金協力
ポールフォール結核病院 衛生環境改善事業
      
AMDAジブチ 吉田 美希
AMDA Journal 2004年 4月号より掲載

知合いの3歳の子供が、先日結核で亡くなった。ポール・フォールに入院していたという。

あまり裕福でないこの家族は、父親が最初に結核になり、その後母親に感染。2人は治療を 終え今は元気に生活しているが、子供が犠牲になってしまった。結核はいまだ身近な病気である。

ジプチでは結核の予防接種(BCG)を無料で受けることができるが、普及率はあまり高くな い。様々な試みが実施され改善されてはきているものの、知識がない、近くにヘルスセンタ ーやクリニックがない、フォローアップがされていない、予防接種を受けていてもワクチン の管理状態が悪く効果が得られないなどの原因により、伸び悩んでいる。

また、結核は不衛生な過密住宅等での感染率が高く、貧困との関連は否定できない。乳幼児 の栄養失調が35%以上と言われるジプチでは、子供が結核になるケースも多い。

さらには、結核患者は治療により症状がよくなっても、数ヶ月に渡り毎日薬を飲み続ける必要 がある。完治する前に薬を止めてしまうと、再発の治療は非常に難しいからだ。ところが、症 状がよくなると、元気になったから薬は要らないと思い込んでしまうのだろう。医師や看護師 、健康普及員の指示に耳をかさなくなってしまう患者も多いという。

ポール・フォール病院について

ジプチ市内の国立病院では、診察費(国立ペルティエ病院の一般診療は3000ジ ブチフラン=約1900円)や医薬品代等がかかるため、収入の少ない人々が受け られる医療は限られている。

それに比べポール・フォールの患者は恵まれており、入院患者には診察と薬が 無料で提供される。さらに、World Food Programからの食料支援により、IFTIN (現地のNGO)が1日3食調理し、入院患者に配給している。

そのため、ポール・フォール結核病院には、ジプチ国内だけでなく、周辺国から も多くの患者がやってくる。再発患者やエイズ患者が多く、裕福な人を見るのは 稀である。

ところが、こんなに恵まれた環境でありながら、治療の途中で病院を逃げ出す人 も多くいたらしい。主な原因は病院内の不衛生によるもの。

AMDAの事業開始前は病院の敷地内に、院内のトイレから流れ出た下水を貯める糞 尿タンクがあり、恐ろしいほどの悪臭がただよっていたのである。

下水溝改修
(第1期、2002年)

紅海に沿い、標高数メートルに位置するジプチでは、海面との差が少ないため、 下水処理に困る。外部へ流れる構造を造り出すため、試行錯誤を重ねた後、プロ ジェクトは無事終了した。下水管整備と同時に糞尿タンクを取除き、院内の汚臭 を取除くことができた。

衛生環境改善事業
(第2期、2003〜4年)

第2期工事では、1期に続き水道関連の工事を中心に修復を行い、病院内の衛生環 境の向上を目的とした。

主な工事内容は、次の通りである。

○給配水に必要な電気配線
○院内の配管
○トイレの修復と新設
○雨水用排水溝の新設

後半はトイレ、シャワー、洗濯場の使い方を患者に教え、習慣を浸透させることを 目的とした。国立病院のトイレを観察しても、患者が石やビニール袋、プラスチッ クの入れ物を下水に流してしまい、下水が噴き出す事件がいつも起こっている。

ジプチ市内や周辺国の都市部では、トイレが一般的に使われているものの、農村地域や 遊牧民は野外で自由にする傾向がある。シャワーも外で頭から水をかぶるくらいである 。下水管の整った都市部では、トイレとシャワーは一緒の部屋にあったとしても、下水 処理は異なるため、ポール・フォールではそれぞれの役割、使い方、しくみに加え、衛 生管理と健康をテーマに、病院スタッフや患者に情報提供をしてきた。

また、院内を患者とその家族、病院関係者のコミュニティーと位置付け、「施設管理は 病院まかせ」ではなく、患者とその家族の役割や責任も明確にするよう努めてきた。

ポール・フォールの患者は短くても数週間、長い人は半年以上もこの病院に入院する。 みんなが少しでも快適な生活ができ、治療に専念できるよう環境を整え、病院の不衛生 等から患者が逃げ出し感染が広がることのないよう貢献できればと思う。

       

ジブチの新聞「ラ・ナション」より

ポールフォール結核病院修復工事(要約)

ポール・フォール結核病院の衛生環境を改善するため、2002年、下水の配管を整備する 第1期修復工事が実現された。そして、2003年6月には、下記の内容により第2期工事が開始された。
○飲むこともできる安全な水の供給
○本棟、入院棟を含む全ての建物のトイレ、シャワー な ど水まわりの修復、新設工事

その他、ADMAは病院スタッフや入院患者に対し、衛生環境に関するワークショップやキャンペーン も開催してきた。

これまで長い間水がなかった病院内の建物全体に水が届くようになったことは、第2期工事の1番の 成果といえる。これは、保健省にとっても、病院を使う人々にとっても嬉しい知らせである。ホー マッド・アリ院長もこの成果を喜び、AMDAと外務省に感謝している。

また、保健省は新しくできた施設をきれいに使うため、利用者やスタッフにも意識向上を呼びかけている。

AMDAと保健省(プロジェクト管理ユニット) 、その他の関連機関や現地アソシエーションの強い協力関係により、プロジェクトは成功に終 わった。しかし、建物は老朽化による雨漏りや、網戸は破損などの問題をいまだ抱え、マラリアなども発生 している。是非この協力関係を続け、3期の工事に続くことを願っている。




緊急救援活動

アメリカ

アンゴラ

イラク

インドネシア

ウガンダ

カンボジア

グアテマラ

ケニア

コソボ

ザンビア

ジブチ

スーダン

スリランカ

ネパール

パキスタン

バングラデシュ

フイリピン

ベトナム

ペルー

ボリビア

ホンジュラス

ミャンマー

ルワンダ

ASMP 特集

防災訓練

スタディツアー

国際協力ひろば