ジブチ

ジブチの水
─ポール・フォール結核病院への水の供給─



AMDAジブチ 吉田 美希
AMDA Journal 2003年9月号より掲載

ジプチの夏
 気温が50度を超えることも珍しくないジプチでは、座っているだけでも汗が自然に流れてくる。毎日 意識をして水を飲まないと体力は吸い取られ、体調を崩す原因にもなる。その上、7月になってからは、 内陸からの強い風(ハムシーン)により町中が砂埃に覆われるため、外に出ると目にゴミが入り、一日 掃除していない部屋を裸足で歩くと足の裏は真っ黒になる。
 このように、決して快適とは言えない環境のせいか、この時期になるとジプチ市内の人口は激減する。 多くの人はエチオピアやソマリア、イエメンなど、少しでも涼しい所を求めて移動するらしい。公務員 が1ヶ月位休暇を取ることも稀ではない。
 この暑さと埃の中、欠かせないのが『水』である。安全な水の確保と貧困は比例していると言われて いるが、ジプチにおける生活を観察すると容易に納得できる。ジプチ市内を少し離れると所々に井戸が あり、日中でも子供や女性が水汲みをしている。帰り道、この暑さの中重い水を運ぶ姿は、たくましい と同時に生活が困難であることを想像させる。どれ位の距離を歩くのだろう、一日何回水汲みにくるの か、学校には行っているのかなど、考えずにはいられない。
 蛇口をひねればいつでも水が出てくる日本で生活していると感じないが、水は生活の生命線。飲み水 だけでなく、手洗い、シャワー、洗濯等の衛生にも欠かせない。定期的に体を洗わなければ、汗疹や皮 膚病の原因にもなることは予想できるだろう。トイレの後や食事前の手洗いにしても、水なしでは話に ならない。
 ジプチは年間降雨量が125mm以下と少なく、慢性的な水不足に悩まされている。特に夏場の水不足は深 刻で、小規模な井戸は渇いてしまうことも少なくない。また、紅海の塩水による影響も明らかである。 例えば、ジプチに到着したその日、歯磨きをしながらこう思った。「あれ?この歯磨き粉、塩入だった っけ?昨日もこんな味だったかな?」チューブにそれらしい記載はない。その時は気のせいかと感じた が、確かに蛇口の水はしょっぱい。
 そして、翌日も不思議なことが起こった。朝キッチンに入りコップを取り出すと、白い結晶のような ものが付いていた。汚れているのかと思い、洗って飲料水を飲んだが、良く見るとどのコップにも白い 粉が付いている。食器洗いの洗剤のようにも見えるが、匂いはない。恐る恐る手にとって、舌の上に乗 せてみた。思ったとおり、塩味である。
 さらに、ジプチの夏は暑いという話をしたが、この影響は水道水にも出ている。市内の水道水は太陽 の熱により温まり、今の時期はシャワーにちょうどいい温度になる。きっと40度ちかくあるだろう。温 かいのはありがたいが、やはり塩水。肌がカサカサになったり、髪の毛がバリバリになるのは避けられ ない。
 しかし、例え温塩水でも、水道水は貴重な資源。ジプチ市内でも日中は頻繁に断水になるため、各家 庭にはぺットボトルやジェリーカン(ポリタンク)が並べられている。日中の断水が続けば、子供達が 夜中ジェリーカンに水を溜めている光景を良く見かける。もし水の溜め置きがなければ、断水中はトイ レに行くのも躊躇するほど、行動が制限されてしまう。

新しい水タンク設置
新しい水タンク設置

ポール・フォールへの水の供給
 AMDAが改修工事を実施しているポール・フォール結核病院は、これまで院内への水の供給が限られて いたため、病院スタッフや患者は、水が充分にない不便な生活を強いられてきた。下水は詰りトイレは 悪臭を放ち、食器洗いや洗濯にも水を探さなくてはならず、とても治療に専念でるという環境ではなか った。
 そこでAMDAは、昨年の第一期修復工事を通じ下水管を整え、今年の第2期工事では水を供給するため のタンクやモーターの設置、配管工事を進めている。新しいトイレやシャワーも設置し、数ヵ月後には 衛生環境を大幅に改善する予定である。
 この衛生環境改善プロジェクトは、保健省の技術者と業者の話し合い別名ピピ・カカプロジェクト( ピピカカは、フランス語でおしっことうんちのこと)とも呼ばれ、これまで地下に埋められていた糞尿 を取除く作業からトイレの設置まで、ピピカカとの戦いを繰り返してきた。
 そして、この戦いは今後も続く。ポール・フォール結核病院に入院する患者の多くは、ノマッド(遊 牧民)で、トイレを使う文化がない。ラクダにテントや家財の全てを乗せて、一年中遊牧するからであ る。そのため、患者の一部は、病院裏手の人通りが少ない場所をトイレとして使う傾向が高い。

 水資源を大切に、そして有効に使うためのセミナーやポスター、IEC教材を開発し、今後はトイレの 利用や衛生管理の重要性を伝えていきたい。




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