22,000人以上のソマリア・エチオピア難民が暮らすジプチの難民キャンプで、AMDAは人々の健康管理を
支えてきた。
ジプチの場合、各地域の最大都市（ジプチ市、アリ・サビエ、ディキル、タジューラ、オボック）に
は病院、医師、そしてある程度の医薬品も揃っているが、それ以外の医療施設には医薬品や人材もほと
んどいないという悲惨な状況にある。
難民キャンプの位置するアリアデやホルホルも例外ではなく、街中の診療所で受けられる治療には限
りがあるため、難民だけでなく地域のジプチ人も AMDAクリニックへ足を運ぶ。人道的援助を実施する
という理念のもと、 AMDAクリニックでは下記のプログラムを通じ、クリニックを訪れる全員に保健・医
療サービスを提供している。
外来診察
2002年度には計77,977件の外来診察があり、単純計算すると、毎日約300人近くの患者がクリニックを
訪れたことになる。しかし、キャンプ内には電気がなく、提供できる医療活動には限界があるため、重
症患者や手術を必要とする患者は、アリ・サビエやジプチ市内の病院へと移送する。
その他の診療活動
○小外科手術
ジプチ市内の病院に勤務するエジプト人医師の協力により、今年3月から5月まで、毎週1回、キャンプ内
での小手術を行った。外科診察の需要は高く、第1回目には70人あまりの診察希望者が集まった。
○アイ・キャンプ アドバンティスト
教会医療センターとの連携により、定期的に眼科医師をキャンプにて受け入れている。老眼鏡の需要が
高いが提供できる数に限りがあり、多くの人が眼鏡の配給を待っている。
出産、母子保健
毎月約20名の新生児がキャンプ内で産声を上げる。2500g未満の新生児は数パーセントであるが、5歳
以下の乳幼児はGMP（Growth Monitoring Program）を通じ、発育状況を確認している。発育状態が通常
の70％以下の乳幼児は、治療的栄養プログラムにて野菜や魚を使った料理を毎日提供。また、75〜85％
の栄養失調児には、CSB、脂や砂糖を入れた栄養ドリンクを配給。後者の補助的栄養プログラムには、妊
娠中、もしくは出産後や結核等により栄養補給を必要とする患者も含まれる。
予防接種プログラム
BCG、DPT（ジフテリア、百日咳、破傷風の混合）、OPV（ポリオ）、麻疹の予防接種に加えビタミンA
等を配給した。CHW（コミュニティー・ヘルス・ワーカー）は一日の大半をコミュニティーで過ごし、人
々の健康状態をモニターする役割を担うとともに、予防接種を広く促進している。今年は国際ボランテ
ィア貯金の援助を受け、予防接種と「母子手帳」配布を組み合わせ、子供の成長記録と一緒に予防接種
の計画及び実績を明記できるようになった。
医療スタッフの教育プログラム
難民スタッフやボランティアがより高い知識と技術を身に付け患者の診療にあたれるよう、 AMDAジプ
チでは継続的に教育プログラムを開催している。これまでは、2名の医師が中心となり、クリニック内の
スタッフとボランティアを育成してきたが、今年7月からは、これまで受講生だったスタッフが講義を担
当し、CHW（communitu health workers, 健康普及員）やSanitarian（衛生管理員）の教育に当たって
いる。
Food for Work Program（難民対象）
World Food Program (WFP)との合意のもと、今年3月から新たに導入されたFood For Work (FFW) Program
を通じ、計53人のボランティアスタッフがAMDAクリニックで活躍している。当プログラムの参加者は、
ボランティア活動の報酬として、1ヶ月につき小麦粉50キロと調理油5リットルをもらう。また、今年７
月に開始された教育プログラムを受講し、皆熱心に勉強中。
今後の課題
キャンプ内でのHIV/AIDS患者数が近年増加傾向にあるため、予防と治療の両面から対応することが求
められている。予防の側面に関しては、セミナーやエイズ予防キャンペーンを通じ、情報の共有に努め
てきた。今年６月には、スタッフやボランティアがホルホル難民数百人の前で歌やドラマを披露し、そ
の様子はジプチ国営テレビのニュースでも取り上げられた。しかし、治療の側面では、キャンプ内でプ
ライバシーを確保することは難しく、またカウンセラーの人材育成も必要だと感じる。
ソマリア、エチオピアへの帰還が難航する中、クリニックの機能を充実させ、難民の健康管理を促進す
る他、スタッフやボランティア、コミュニティーの保健衛生知識を広め、意識の向上を図りたい。
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