ジブチ

MY LADY OF SOMALIA
―朗読詩によるHIV/AIDSプロジェクトの試み―


AMDAジブチ 鈴木やよい
AMDA Journal 2002年 12月号より掲載

2002年、ジブチ難民キャンプにおけるHIV/AIDSプログラムに対して、国連高等難民弁務官事務所(UNHCR)とAMDAジブチは望みを高くかかげました。難民キャンプにおけるエイズ検査室の建築というものでした。ソレハ無理、と現実の壁。キャンプには水も電気も自己供給できないのです。 それではAMDAジブチ事務所兼薬局のあるアリサビエ市の病院の検査室を改修しエイズ検査の呼びかけや個人情報の保護やポストカウンセリングを行い、難民のみでなく一般市民を含めたプログラムにしよう、と息を吹き返したのが6月。 ソレハ駄目、とジブチ保健省から注文がつき、私たちはほとんど方向を失いつつありました。

6月、ジブチは灼熱の季節に近づく。しかしAMDAジブチは挫けませんでした。挫けるわけにはいかないのです。ジブチ自体、国民の20%とも予想される感染者数を前に5年がかりのエイズ戦略を立てている最中です。 また、ジブチの保護下で生活を営むソマリア難民を主流とする人々の祖国帰還はソマリア北西部のみであり、中部南部は未だに戦闘が絶えず、国として成立していない状況。ソマリア難民はジブチにおける難民生活以上の衣食住が得られるとは約束されていません。 だから、できる場所でできうる限りのことをし、彼らの将来に役立とう、という私たちの望みは正しいのでしょう。

ジブチ保健省とWHOが主催したアトリエと称する会議にAMDAジブチ職員は交代で出席し続けましたが、毎日が討論というより口論に終わる内容でした。貧困の問題と医療施設の問題と将来の見えないエイズ対策の有効性を巡るドウドウ巡りの口論で閉会しました。 ジブチでは本年9月に発表されるはずであった統計も10月現在まだ出ていません。

難民の受入国であるジブチ自身がまだ混迷の最中にあります。私たちは足元を固め、自分たちの言葉をもって難民社会に向き合うことから始めることにしました。第一段階として、AMDA医療従事職員、事務職員自身(難民労働者がその3分の2を占めます)が詩、散文の形で"人とHIV/AIDSの関係"を語ること、書くこと。 フランス語、英語を使用する私たち職員の半数以上がソマリア語で話すことができますが、ソマリア語で書ける職員は数人しかいません。またソマリア難民の幾人がジブチの共通語であるフランス語とアラビア語を理解できるかというと殆ど皆無なのです。むしろ英語やイタリア語の方が難民には理解されます。 なぜなら難民キャンプの学校では英語を学び、またソマリアは過去イタリアの植民地であったからです。

アフリカの角の一角にあるジブチという土地がもつ地理的文化的な特殊性の中で、ある意味では他のソマリア難民キャンプに比べて、ジブチのソマリア難民は精神的な余裕を享受しています。 ジブチ人とソマリア人との異なりは主に部族の異なり、居住地域の異なりに過ぎず、他のアファ−ル人、エチオピア人、イエメン系アラブ人を除いてジブチ国民の60%はソマリア人なのですから。しかも、そのジブチのAMDA職員が共通に語れる言葉としてのソマリア語はあくまで話すための言語なのです。 自分たちの足元を見、自分たちの考え感じていることを難民と共有しようという発想が、どこまで現実的な効果を持つかはわからないけれど、技術に走る前に私たちは書き、討論し、朗読しはじめました。

タイトル:My Lady of Somalia

テーマ:AIDS
作詩:Yayoi Suzuki
You, my lady of Somalia
Carrying five children under the sun
You are dying in this tent

I know the day you were so beautiful under the tree
You are dying while you worry about your small boy
Your small boy is dying of your blood
AIDS just swallows you and your son

(ソマリア語訳)

Maruladayda somaaliyeedey
Shan carruura sidatee ee cadeeddu dhibaysay
Ee kuhoos dhimanaysa shiraacay

Waxaanigadahsoonayn ayaantaadqurux badnaydee aad
geedka hoos soogtay
Waxaad dhimanaysaa adigoo u walwalaya inankaago yar
Inhankaaga yori wuxxuu u dhimanayaa dhiigaagaweeyaan
Adiga iyo ilmahaagaba sawka SIDA gu liqaaya

Chanson ― SIDA

On peut I'attrapera aussi facilement
Surtout a la personne qui multiplie les demarchs
Mefie-vous des guet -a- pens
Soyez pas atteint d'une facon legere

Nous ne pas comparer le vrai et le faux
Pour etre proteger
Pensez toujours a la face version positive
L'abstinence
(作詩:現地スタッフ)

(本部担当者注…さらに難民キャンプに暮らす現地ボランティアスタッフは次のように作詩しました。これまで難民キャンプでは地域特有の文化習慣の壁もあり、HIV/AIDSや性についてはタブーとされ、正面からこれらのプログラムに取組むことができませんでした。 取組むことはあっても、外部の人間が語っていたにすぎませんでした。そこで当事者である難民キャンプの住民がHIV/AIDSについてどう思っているのかを詩にしてもらい、そのまま拾いあげることにしました。 エイズに対する関心は高まってきているようですが、素直に語られた言葉の中には、エイズと共に生きるという目標を達成するには、まだまだこれからさらに意識を高める必要があることもわかりました)

エイズはとっても危ない
とっても とっても
簡単に捉ってしまうんだ
とくに 沢山の恋人を持つ人は
罠にかからないように 気をつけよう
軽々しく 振舞わない事さ

ホントかうそかと較べるよりも
自分を守るには
いつもきちんと考えて
節制しよう

AMDAジブチは2002年12月の私たちの記録としてこうした対語訳付きの詩集を発行します。

これらはHIV/AIDSプロジェクトに関わる動機を明らかにするひとつの方法としての取り組みですが、勿論、詩を歌っているだけではありません(難民デーの日、私たちはUNHCRの職員を含めぼっと見つめる難民達の前で詩の朗読を行いました)。 週に一回、難民キャンプクリニックで行っている保健スタッフ育成プログラムは12月末まで性感染症及びエイズを中心とした内容にしました。エイズ予防キャンペーンを担う核となる人材の育成が2002年の基本目標です。

また、2002年の基本的なターゲットは難民クリニックに通ってくる女性層、産前産後の母親や栄養補給プログラム、家族計画のカウンセリングを受けに来る女性層としました。エイズの一般知識や予防知識とともに、

  1. エイズと共に生きる
  2. 女はNOと宣言することができるのだ!

の二つのテーマに関する会話、対話を構成することを現在試みています。

モザイクのように敷き詰められた言葉、文化、部族、氏族、準氏族を背景に、難民キャンプで成長した少年たちは青年となり、隣国エチオピアの中学校に行く財力のない層は、なすすべもなく難民キャンプ唯一の人の溜まり場、外国人医師のいる難民クリニックに来て暇をつぶします。 この追い詰められた層を吸収する文化的な活動、スポーツ等は盛んではありません。UNHCRはそうした活動を応援しようとしますが、お金やユニフォームをくれなければ参加なぞしないよ、というセリフが青年たちから返ってきます。 性的にも活発な世代であり問題を起こすことがあります。彼らへの働きかけは訓練されたスタッフとイスラム教の指導者が共同で行う方向を現在模索しています。 数ヶ月前に起きた暴行事件の折もこの層との対応の難しさが明らかになりましたが、慌てず、焦らず、諦めずに効果的なエイズ予防キャンペーンの方向性を私たちは模索しています。

"イスラム教が浸透している難民キャンプ"という限定された状況下で、性的感染症に関する知識や予防に関して大声で語れるのはエライ人や外国人組織だけ、という現実を打ち破るには、語る側が本気になること、本気になったAMDAの難民現地スタッフが来年を目標にさらに詳細なプログラムを組むことです。

一方でソマリランドへの帰還プログラムが始まり、都市部等に散っていたソマリア難民達の一部がキャンプに戻る現象もあり、この10年程キャンプ数の減少を図りながら一種の落ち着きをもっていたジブチの難民キャンプは、現実表面的には大差がありませんが、人々の生活と心の状態は決して昨年と同じではありません。 帰還プログラムに応募し、一端出国した人々の中ですぐに戻ってくる者もあり、これまで以上に人の流れが激しくなっています。

それでも、ジブチでできることはやった方が良い。ジブチのスタッフを中心に素朴な取り組みを開始したAMDAジブチのHIV/AIDSプロジェクト、来年の展開を請うご期待。




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